ボーイ・ジョージ

 某演歌系の事務所の事務員をしてるモモ(仮名)ちゃんは、外タレが大好きな女の子です。ここの事務所、何故かパンチ・パーマの人が多かったのだそうです。しかし、それでもモモちゃんは普通のOL。パンチ・パーマなんかじゃありません。彼女の田舎の実家の話を聞いた事がありますが、かなりのお嬢様らしいんです。

 そんなモモちゃん、仕事中に平気で事務所の電話を使って友達に電話をします。当時はまだ携帯電話がポピュラーではありませんでした。私などは、「おいおい、大丈夫かよ。専務とか社長とかに怒られないか?」と心配しますが、モモちゃんは「ぜ〜〜んぜん、平気よ」と言います。

 今日も専務さん(仮名)の目を盗んでお友達に電話を掛けるところです。専務さんは机の上に足を乗せ、なにやら新聞の記事を夢中になって観ていて、こちらの様子は目に入らない様です。モモちゃんは当時大人気だったボーイ・ジョージの情報を友達と交換し始めてました。「もしもし、あ、お友達(仮名)ですか?ねえねえ、もうボーイ・ジョージ買った?」、「ボーイ・ジョージが来るのよぉ」、「ボーイ・ジョージいいわよね」などと、小声で電話口に話してました。当然専務さんはこちらの様子など気にしてないかと思ってましたら、地獄耳だったのかいきなり専務さんが「ナニぃ!!?ボーイ・ジョージだとぉ?!!」と言いました。モモちゃんは「まずい!聞えてたのかぁ〜!」と思いました。すると専務がすかさず「おい、モモコ!それ、いったい何枠だぁ〜!?」と言うのでした。どうやら怒ってないみたいですが、専務さんの持ってる新聞を見ると、それは競馬新聞だったのでした。「専務、ボーイ・ジョージは馬の名前じゃありませーん!歌を歌うニュー・ハーフ(?)の名前です!!!」な〜んて、モモちゃんが言ったかどうかは判りませんが……。

 もうひとつおまけです。

 その専務さん、あるフュージョン・バンドの話をしてたことがあるのです。専務さんは、その名前を自分が知ってると言う事を事務所の女の子達に自慢したかったらしく、一生懸命説明するのですが、事務所の女の子達はその専務さんの言うフュージョン・バンドの名前を知ってる子はひとりもいません。専務さんは大きな声で、「お前ら、それでよくギューカイ務まるなぁ!このバンドを知らないなんて勉強不足も甚だしいぞ!」……叱っておられました。「モモコ、お前なら○○知ってるだろ?」、モモちゃんは勘が鋭く、ここでもちょっと頭を一ひねり、よく考えてみました。「専務、それはひょっとしてシャカタクの事ですか?“ヒシャカク”じゃありませんよ」。“飛車角”なら、皆知らないはずだ………。


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