十二月です。町には、ジングルベルがながれています。
 クリスマスを待つ人たちが、クリスマスツリーの準備に忙しそうです。

 おや、他にも忙しいところがありました。地球から遠く離れたサンタさんの星です。
 十二月二十四日に配るプレゼントの準備をしたり、クリスマスの日に乗るソリをひくトナカイの機嫌をとっているようです。
 
 そして、それらと同じくらいに大切なことがもう一つあります。
 あまり知られてはいませんが、サンタさんの星には十二月二十三日にクリスマスツリー・コンテストが行われているのです。

 その準備もしなくてはならないのです。
 サンタさんの星では、一年で一番のコンテストなので、どのサンタさんも真剣です。

 コンテストに優勝しても何かもらえるわけではありません。
 ただ、コンテストの優勝は、サンタさんたちにとって何よりの自慢になるのです。

 サンタさんの家の前には、必ずモミの木があります。どのモミの木も、もうずいぶん飾り付けがすすんでいるようです。どれも、きらきら光ってきれいです。

 そんな中、まだ何も飾られていないモミの木だけが一本だけありました。
 そのモミの木の前には、一人のサンタさんが腕組みをして、悩んでいます。

 「うーん。今年はどうしようか」

 このサンタさんの飾り付けるツリーは、優勝どころか、だれかに誉められたことさえありませんでした。
 それが悔しくて、「今年こそは!」と思っているのですが、なかなかいいアイデアが浮かびません。

 サンタさんは、去年の優勝したサンタさんが言っていたことを思い出していました。

『人間の飾ったクリスマス・ツリーを参考にしたんだよ』

 また少しモミの木の前でぼんやりと考えました。

「ここで悩んでもうまくいかない!」
 
 サンタさんは、決心して地球に人間が飾るツリーを見にいくことにしました。
 他のサンタさんもみんな、クリスマスの日以外は、あまり地球にはいきません。

 なぜなら、人間に正体がばれてしまうと大問題になるからです。
 けれど、どうしてもクリスマスツリー・コンテストで優勝したいこのサンタさんは、地球に行くことを決めました。

 サンタさんはもうクリスマスプレゼントの準備など、やらなきゃいけないことはすべてもう片付けていたので、なんの心配もせずに、行くことができました。

 人間の町にもたくさんのクリスマスツリーがありました。
 しかし、大きさの違いはありましたが、飾りはどれもあまりかわりませんでした。
 たくさんの電球がつけられて、雲のような綿がまきつけられていて、てっぺんに星がついていました。
 これらと同じようなものを作ったのでは、とても優勝などできません。

 それでも、サンタさんは、いろいろな町を歩いて、クリスマスツリーを見て回りました。

 しばらくすると、サンタさんは、どのクリスマスツリーにもそれを見上げている子供がいることに気が付きました。
 どの子供もとても幸せそうな顔をしています。

 クリスマスツリーを撮るために持ってきたカメラで、サンタさんは子供たちの写真を撮りました。
 サンタさんは、子供たちの笑顔が何よりも好きだったからです。

 結局、日が暮れてサンタさんの星に帰るまでに、クリスマスツリーの写真は一枚も撮らずに、子供の写真ばかりを撮っていました。

 サンタさんは、参考になるクリスマスツリーを見つけられませんでした。しかし、サンタさんは、満足な顔をしていました。子供たちの笑顔をたくさん見ることができたからです。

 サンタさんは写真を見ているうちに、その写真をクリスマスツリーに飾りたくなりました。できあがったツリーに並んだ子供たちの笑顔は、どの電飾よりも輝いて見えました。

 サンタさんは、他のサンタさんにもこのたくさんの写真を見せてあげたいな、と思いました。
 こうして、このツリーをコンテストに出すことにしました。

 結果がでるのは、もう少し先のお話しです。
 けれど、たとえ優勝はできなくても、きっとたくさんのサンタさんにほめられることでしょう。
 だって、子供の笑顔が嫌いなサンタさんはひとりもいないのですからね。
                                                       おわり

サンタさんのクリスマスツリーコンテスト
作/イラスト:さわね たかひろ