しあわせのかたち
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人 物
吉田 猛(26)会社員
吉田恵子(26)その妻
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○ 大きな一軒家の縁側(夕)
縁側で、庭を向いて並んで座っている吉田猛(26)と吉田恵子(26)。
庭には紐に繋がれた白い子犬が走り回っている。
吉田「結婚したら、一生懸命働いて庭のある家を買おうな」
恵子「白い子犬を飼おうね」
吉田「そのためには、がんがん働かなきゃな」
恵子「わたしも働くわよ。でも、ちゃんと家事もやるから安心してね」
吉田「…うん。ありがとう。がんばろうな」
二人は焦点の合わない視線で穴を掘り始めた子犬を眺めている。
吉田「…こんな会話をしたのが、ほんの半年前なんて」
恵子「全部、そろっているね。家も庭も白い子犬も」
家を振り返って、見上げる二人。
吉田「すごく、幸せなはずなのに」
恵子「…ごめんなさい」
恵子が両手で顔を覆う。
吉田がそっと恵子の肩に手を回す。
吉田「謝ることじゃない。君は何も悪くない」
恵子「…二人で初めて行った銭湯の帰り道にたった一枚だけふざけて買っただけなのに」
吉田は、恵子を引き寄せ、強く抱きしめる。
恵子「…別れましょう。たぶん、いろんなことが終わってしまったの」
吉田「そうかもしれない…でも…」
吉田の胸の中、無言で首を横に振る恵子。
深くうなだれる吉田。
END