「侵略」

 

 小学校低学年の頃、僕の人生最大の喜びは、近所の田んぼや水路に行って、フナやザリガニを捕まえることだった。
大きなアミと青いバケツの装備が僕の小さな自慢だった。


 ある日のこと。


 いつものようにテリトリーである田んぼに行くと、その一画の前に、杭が何本か立てられ、それらがロープで繋がれていた。


 そして、ロープには「立ち入り禁止!」と黒の太マジックで書かれたダンボール板が貼り付けられていた。


 それを見た僕は、「なんだこれは?」と思いながらも、他の田んぼでフナやらドジョウやらを探した。


 数日後、その一画に行くと、そこはすでに田んぼではなくなっていた。
 小さな丘だった。
 黄土色の土が盛られて、その土の上には一台のブルドーザーが置かれていた。


 ブルドーザーを見ていると、涙が出てきた。
それでも、僕はブルドーザーをいつまでも睨み続けていた。
 そのとてつもなく大きなブルドーザーを僕は憎んだ。

 
 時間が流れ、僕は気が付いたら、フナやザリガニを追いかけることをしなくなっていた。
 それでも、あの時に感じた思いは、今も残り続けている。
 僕はやはりブルドーザーが嫌いだ。


                                      おわり