甲本ヒロトとのエトセトラ2
浩人さんはいちおう、法政大学経済学部2年に在籍してはいた。しかしながら、教科書というものを開いていた記憶がほとんどない。試験の直前にちっと大学に足を運んでいた程度。
ほとんどレコードを聞いたり、バンド仲間らしき人とわいわい騒いでいた。
夜には六本木のディスコでバイト。フロアのドリンクコーナーでカクテルを作っていたらしい。
オレの部屋にたまに遊びに来て、そこで覚えたカクテルをご披露してくれた。
今、思い出せるのは
カリメロ
というへんてこなカクテル。メロンリキュールとカルピス、あとなんか入っている。頭文字をとってカリメロ。
味は良く思い出せない。
当時はお互い貧乏のどん底でありながら、良く酒は飲んだ。俺の部屋で飲んだり、浩人さんの部屋で飲んだり。大体、浩人さんの部屋で飲むときは音楽の話題、オレの部屋で飲むときはプロレスの話題が中心だったかね。
浩人さんの部屋にはレコードプレーヤーがあったので、良くLPレコードを録音してもらった。当時はレコードレンタルがスタートしたばかりで、どこのレンタルレコード店のメンバーになるかで借りれるレコードの種類、数量が決まった。
浩人さんは新宿西口の小さなビルの3Fにある、怪しそうなレンタルレコード店からパンクロック系のレコードを借りてきては、自分の部屋で聞いていた。
当然その音はオレの部屋に漏れてくるが...
ちなみに、オレもいつのまにかそのレコード店に入会していた。
浩人さんにこういう質問をしたことがある。
「浩人さんはロックやってるんですか?」
返答はこう。
「ロックじゃなくてロックンロール!」
私は未だに意味がわからない。
六本木のディスコでバイトしていた浩人さんは、他にもいろんなバイトをしていた。一番なじみがあったのは、幡ヶ谷からアパートに帰る途中にある、Dairyストアのレジ係り。夕方から夜の時間帯のレジを担当してたと思う。ゆえに、私が帰宅時には店の前を通るのでつい立ち寄ってしまう。
店に入ると
「おーーい。今帰ってきたかー?」
と、接客中にも関わらず声をかけてくれた。日頃のぷらぷらしている浩人さんからは、感じることの出来ないまじめな姿をみて多少、見直した。
しかし、このDairyストアを根底から覆す事件を浩人さんはやってしまったのだ。
自称ロックンローラーの浩人さんは、日頃から服装には気をつかっていた。原宿のDeptという古着屋から調達たして服で、アパートの周りをうろうろしていた。髪というと、それこそ世良正則風の普通の頭。多少、中心部がたっていた。
ある日、何を思ったか?いきなり
モヒカン刈り
にした。話を聞くと自分で剃ったらしい。気合の入ったモヒカン刈りであった。まさに、
ウルトラセブンのアイスラッガー
私は、あまりのおもしろさにモヒカン頭の頭皮の部分にセロテープでいろんなもの(マッチ、オモチャ、などなど)を貼り付けて遊んだ。
ん!でも待てよ。この頭でまさか?
Dairyストアのレジやってるんじゃないだろね?
そう、思ってDairyストアにいってみた。
そしたら
「おーーーい!」
の決まり文句。
がーん!
気合の入ったモヒカン野郎がレジしてる!
数日後、浩人さんの姿はDairyストアにはなかった。解雇されたか、自分でやめたかはさだかでない。
甲本ヒロトとのエトセトラはまだ続く。