甲本ヒロトとのエトセトラ 外伝


ーお手入れー

アイスラッガーモヒカンは私だけでなく、他の部屋の住人からも興味の的となった。
浩人さんに会うたびに、目線がどうしてもモヒカンにロックオンしてします。(当たり前だ!)

銭湯で洗髪する際には、無茶苦茶楽そうだ。

しかし、ここで一つの疑問が生じる。モヒカンを維持するには、地肌の部分のお手入れをしなければ
ならないはず。さて、どーする?毎日カミソリで剃っているのか?

ある日の午前中、浩人さんの部屋に入っていったら電気シェーバーでジーコジーコひげを剃っていた。

そしたら
「これなぁ、おもろいんよ。こーヒゲ剃ってるやろ?そしたらなぁ、このまま上にもってくるんよ!」

と、今までアゴの部分を左右に移動していた手が、こめかみを経由していきなり頭皮部分にスムーズ
に移動した。なんとそのまま頭を電気シェーバーでジーコジーコし始めた。

「おもろいやろ?」

だと。あんた、


ミュージシャンなんだから自分の頭で人笑わせてどーする?


ちなみに頭皮部分はヒゲの面積より当然広いわけで時間がかかる。腕を上げている時間が当然長くなる
わけで、見ていて疲れる仕事だなぁと朝から思った。

実は、当初はカミソリでお手入れしていたらしい。しかし、慣れないのか、はたまた頭が凹凸なのかは
しらないが、頭が一時
血だらけになったらしい。その教訓で電気シェーバーに変更したみたい。

ちなみにお手入れしないと当然髪が伸びてくるわけで、2日もすれば甲子園球児の頭のようになる。
その状態になると、肌触りがジャリジャリしててなんとも言えない具合になる。

浩人さんは進んで私に「触ってみい!」といって触らせてくれました。

ジャリジャリジャリ!

「どうだ!気持ちええやろ?」

だと。あんた、

モヒカンになった理由はなんなんだ?




ー巨人戦ー

月15000円の四畳半のぼろアパートには当然風呂などなく、身を清めるためには銭湯にいかなければ
ならない。しかし、貧乏なんで毎日なんか行けるわけなどない。当然2日に1回の割合で近所の銭湯にいく。
田舎なら銭湯なんで、あんまり人がいないもんだが、都会では風呂なしのアパートなんてごろごろ。という
ことで、結構繁盛するものである。

浩人さんとはよくその銭湯に行ったものである。2人で洗濯物をでかい紙袋にいれて、まずはコインランドリー
の100円洗濯機に洗濯物を入れ、洗剤を入れて稼動!

しかーし、やはり都会。100円洗濯機が全部ふさがっていることもしばしばあった。そのときは、しぶしぶ
ちと大型の200円洗濯機を使用した。

約30分で洗濯は終了するので、その間は風呂に入る。

だいたい浩人さんは風呂に行くときは、灰色のスウェットパンツをはいていた。夏のときは、上はTシャツ一枚、
(真っ白か、白と黒のストライプ)。冬は、青系のジャンパー。(アメフトの応援団が着るようなやつ)

ちなみに、
パンツはグレーと白のしましま系が多かった気がする。

ボディーラインは痩せている。無駄な脂肪がない。しかも、筋肉もあまりない。色も白い。
ひょろっとした感じでいかにも不健康そうに見える。
やたらと肉体派の私からすれば、「けんかしても絶対勝てる!」感じをうける体格であった。
しかしながら、しゃべることはやたらと元気で面白かったので服を着ている普段はそうゆうふうには思わなかった。

ちなみに、最近スカパーでハイロウズをちらっと見た。今の浩人さんは、当時よりも更に不健康そうに見えた。
率直にこんな体で、ライブなんてやって大丈夫かいな?と思った。

都会の風呂屋は、繁盛しているもので洗い場なんか結構あるにもかかわらず、全部ふさがっていることもめずらしくない。

特に巨人戦の中継が終わった土、日曜日の9時過ぎ。なぜか洗い場が満員である。あるとき浩人さんと一緒に
この時間帯に風呂屋に行ってしまった。

「しまった!」

気が付くのが遅すぎた。洗い場が全部ふさがっている。

しょうがないので、洗い場の後ろあたりでウロウロ、きょろきょろ。偶然私の近くが一つ空いた。ラッキー!

まだ、座れない人には悪いがさっさと頭を洗い始める。

頭を洗い終えたときにふと後ろを見ると、

いまだ体を洗えないでいる痩せたフリチ○の浩人さんがまだウロウロしていた。

ちとかわいそう。

ライブで群集を動かしているであろう浩人さんは、銭湯の洗い場の群集には歯が立たなかった。



ーセックスピストルズー

浩人さんはこのバンドのアルバムはよく聞いていたようだ。

私からすれば、俗に言うただやかましいだけのバンド。

このやかましい音楽が、隣の部屋からガンガン聞こえてくる。この音を

聞くことで浩人さんが、元気で隣で暮らしているという一種のシグナルと
なっていた。

そのなかの「God Save The Queen」の曲について、私に熱く語ってくれたのは記憶に残っている。

「この曲はすごいよ。日本でいうと「天皇万歳!」みたいなもんやろ。
そーゆータイトルで女王はアホだクソだ!と歌っているんだぜ。
日本でいうと「君が代」というタイトルで天皇批判しているような
感じやでー。そーゆー曲をこいつら歌っているんやで。すげーよ!」


ってな感じで教えてくれてました。

私はブルハもハイロウズも、すいませんがちっとも聞いてませんが、こんな歌詞の歌を
歌っているのであれば、それはセックスピストルズの影響かもしれません。


ーエイジアー
わたしが大学時代もっとも聞いた洋物バンドは「エイジア」であった。

もと、UK、Yes、ELPのメンバーで構成されたそのドラマチックなサウンドは私にとって衝撃的だった。

ということで、当然レンタルレコード店で借りてきたレコードを録音する機会が増えてくる。

場所は当然浩人さんの部屋。プレーヤーがあったからね。いつでも浩人さんは

「よっしゃ!」と言って気前よく録音してくれた。

当然いろいろ解説してくれる分けで

「ドラムはカールパーマーやろ!あいつ
走るんだよなー

ん?走るって?ちっとも意味がわからなかった。

エイジアの1stアルバムの「Heat of the Moment」を再生している。

「ほれ、この辺。走っているやろ」

「Heat of the Moment」のラストのサビの部分。

「ほれ、絶対走っている。走ってる。うひゃひゃひゃ」

と楽しそうにしゃべっている。その時私は始めて、ドラムのスピードが通常スピードより
速くなることを「走る」と表現することを覚えた。また、一つおりこうになった。




ー挨拶ー
はきはきとはっきり自分の意志を伝えるひとであった。

東北は秋田からでてきた田舎モンの私には、浩人さんのはきはきとした喋りが新鮮に思えた。

特に他人だろうが、初対面だろうがはっきり挨拶はする人だった。

「おはよー!」

「サンキュー!」

「おやすみー」

「さよならー」

先日の成人式であほ騒ぎしている奴等を見て、

「浩人さんもアホだったけど(ごめん)、基本的なとこはしっかりしてたな」

と思った。私は

ライブにきてる奴らは、どんなやつらなんだろー?

と率直に思った。


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