ふなっきーサンタがやってきた!




この歳にもなってなんだが、私はサンタクロースはいると思っている。たとえピザーラの配達人がサンタの格好をしていようと、ケンタのバイトがサンタの格好をしていようと、Docomoの販売員がサンタの格好をしていようと




サンタクロースは絶対いるのだ!





サンタを初めて見たのは、秋田の実家で幼稚園にも上がっていないときのころだったと思う。非常におぼろげな記憶だが我が家でクリスマスの祝い(ただ単にケーキを食っていただけかも知れないが…)をやっていたとき。玄関から赤い服を着たサンタクロースが、「わー!」っと家に入ってきた。



その人は
「いわや」のとうさんだった。



*注意 「いわや」…秋田市土崎地区では当時有名だったお菓子屋さん。雑誌、おもちゃなども売っていて、子供たちの溜まり場となっていた店である。ちなみに「ちびまる子ちゃん」の
「みまつや」に相当するが、規模はもっとでかい。

幼稚園にもあがっていないこの私が、一発で「いわや」のとうさんと解るくらいの変装であった。しかしながら、サンタが別人で夢が打ち砕かれることもなく、「いわや」のとうさんサンタに、うっとりしていたのを覚えている。

不思議なもので、今になって当時のクリスマスの料理が何だったのか?とーさん、かーさん、にーさんがどんな感じでいたのか?ちっとも記憶がないのに



「いわや」のとーさんサンタだけは、幼児体験で鮮明に覚えているのである。



それほど子供にとっては
サンタクロースというのは、強烈なキャラクターなのである。




2004年12月になってすぐ、かみさんがこんなことを言ってきた。

「ねぇ。今度幼稚園でクリスマス会があるんだけど、幼稚園の先生が”ふなきさんのおとーさん、やってくれないかなぁー”って言ってるんだけど…」







「やる!」





0.79秒で決定した!完全無欠の体育会B型人間は即決した!別に若い先生達となかよくなろうなんて下心もなく!!!(5%くらいはあるかも…)

段取りも何にも聞いていないが、





ふなっきーサンタがこの世に初登場することが速攻で決まった!




41年生きてきたが、生まれて初めてサンタクロースになることが決定した。ここで一つ疑問が生じた。普通にやったら絶対下の娘(年長さん)にバレてしまう!バレないように、なりきるしかない。ウルトラマン、仮面ライダー世代の変身好きの私にとって、なんだかウキウキしてくるイベントになってきた。顔の変身は、うちにかみさんあるいは幼稚園の先生に任せておけばいい。




問題は声である!




普通の声でやったらバレるのは当たり前。ここは全然別人になりきらなければならない。さて、どう変えたらいいものやら。体育会B型オヤジがおじいさん的な声を出し続けるのも、なんかボロがでそうで危険である。どうしよう。



そのとき私の脳の中のテレビ番組アーカイブス領域が反応した。



外国人になりきろう。思いっきり外国なまりの日本語を喋る外国人。サンタさんなのでターゲットは北欧の人だ!その語りの見本となる人物は




カーロスリベラ!




「あしたのジョー2」でドヤ街の子供たちにサンタの格好してプレゼントを渡していた、あのシーンが超能力捜査官の透視の如く蘇ってきた。

「メリークリスマァース!ハッハー!おおーユキ ネ!南米ベネズゼーラでは、ユキ降らなぁーい!」

これだ。このしゃべりなら下の娘にもわからないであろう。

ふなっきーサンタの青写真は出来上がった。作戦決行前日の夜。子供が寝たのを見計らって、幼稚園から借りてきたサンタ衣装を試着してみる。着れた。ちょっと貫禄がないか?当日下にトレーナーでも着て、少し重量感をだそう!袖がちょっと短いな。白い手袋をするが途中手首が見えて、肌色が見えたら東洋人だと思われるので手首に少しパウダーでもして白人のようにしようか?(←幼稚園児を相手に結構真面目になってきた)

とりあえず試着はOK。当日服でトラブルことはないであろう。明日は9時40分に幼稚園に集合。会社を一時外出して対応するしかない。あーーー忙しい。

翌日、下の娘に「いってきまぁーす」と言って少し早目に会社に出社。この娘、今日幼稚園で見るサンタが、まさかおとうさんだとは思うまい!くっくっく…。会社ではなんかウキウキして仕事していた。実験室の実験に没頭してたら9時20分。やばい!。即会社で一時外出申請をして、いざ幼稚園へ。幼稚園の近くに来たら、数百メートル離れている別棟の幼稚園の園児がワサワサ歩いて、サンタさんがやってくるメインの幼稚園を目指していた。

うわぁ、結構人がいるな・・・。

じゃりんこの集団とは言え、結構な人数が列を成して歩いていた。各クラス別に訪問してプレゼント渡せばいいと思っていたのだが、状況が変わりつつある感じがしてきた。

じゃりんこが園内に全部入ったのを確認して、幼稚園に入っていく。早速2階の控室に案内されお着替え。赤いズホンはいて、トレーナー着てサンタジャケットを着て。ここで初めて長靴を履く。




き、きつい!




26cmじゃねーかぁ!


27cmの私の足からすればキツイ。しまった。靴まで試着するの忘れた。まあいい。がまんしよう。

アゴ髭をつける。いーじゃなぁーーい!

変装しながら体育会系B型オヤジは、自分自身でだんだん盛り上がってきた。ふなきさんは一人でニタニタ、ふなっきーサンタへの変身を楽しんでいた。この時点でうちのかみさんと司会進行の先生たちが部屋に入ってきた。

先生「(私を見て)ふぁーー!今日はありがとうございます。」

ふなっきーサンタ
「ハァーイ。コンニーチワ。わたっしーサンタクロースでぇーす。フィンランドからやってきまぁーしたぁ!」

先生「ギャハハハ。いーですねー!なりきってますね。」


つかみはOK。


カーロスよありがとう!あなたがいなければ、ふなっきーサンタは完成してなかったよ。

先生「今子供たちは、お誕生会をやっているのでその後クリスマスの歌を歌います。歌が終ったあとで、鈴の音を鳴らしますので、そのときに入ってきてください。」

隣のホールでまずはお誕生会をやっているらしい。歌がこっちにもガンガン聞えてくる。歌の音量からして結構な人数が集結している模様。しかも話によると父兄もいるみたいだ!総勢200人は絶対いる。そんな中に
「ハァーイ!わたっしーサンタクロースでぇーす!」とアホな言い回しで入っていこうとしている自分を考えたら、なんか多少弱気になってきた。しかし、いまさら引き返すことはできない!まずは変装、変装。

さあ、眉毛をつけよう。眉毛はなんと両面テープでつけるだけ。一抹の不安は残る。帽子をつけて完成!さっそく鏡を見る。目元、地肌が露出していると娘に見破られる。できるだけ眉毛で目元を隠し、帽子を深くかぶって目元、地肌を隠した。

おっけー!いいんじゃない?

でも、黒い髪の毛が帽子の下からチラチラ見える。これはイカン!
早速ピン止めで前髪を止めて、帽子からはみ出ないようにする。

よっしゃー!あとはプレゼントの袋を持ってできあがりぃー!

おおおっけぇーーー!完璧だぁ!

袋を持って「メェーリークリスマース!」と先生たちに言ってたら、

眉毛がズル!

動いているうちに両面テープで接着の眉毛がずり落ちてしまう。直前になって一大事!もーしょうがないんで眉毛なし。そのぶんさらに深く帽子をかぶる。

視界が半分に落ちた。足元しか見えん。でも、これでやるしかない!

先生「中に入ったら、園児が3人サンタクロースさんに質問をします。質問の回答例は昨日おくさんに渡しておきましたけども、アドリブでもかまいませんので....」

ふなき
「アドリブでやるよ!」

こーゆーときは、難しいセリフを覚えるよりアドリブでガンガンやったほうがテンションが高まって盛り上がるのだ。大失敗するときもあるが…。先生達もホールの方に行ってしまい、控え室にはわたしのみ。何もすることがなくウロウロ歩き回っていた。歩いたとき長靴の音がコツコツとなり、隣のホールからは園児の歌が聞えていた。まだ、クリスマス系の歌ではないので出番はまだだ。

一人案内役の先生がやってきた。

先生「あのー、これ飲んでください」

缶のお茶。





おみゃー!なんで髭つける前にもってこないんだぁー!






全身スタンバイしている状態なので、当然飲めるわけなくやることやってからゆっくり飲むこととした。

ホールからの演奏と歌がやたらとにぎやかになってきた。

始まった!お楽しみ会の時間。つまり、
クリスマスの会。やばい!とうとうその時間が近ずいてきた。案内の先生が

先生「もうすぐですからねぇー」





と、
更に緊張感を与えてくれるお言葉。あーーーどうしよう。やばい!








おしっこしたくなってきた…。








そーいえば、会社にいたときからトイレに一度も行ってなかったっけ。まずい!








下半身も緊張してきた!







その時先生が鈴の音を鳴らし始めた。






鳴った!吉良家討ち入りの陣太鼓!


いざ討ち入りの時!


全身緊張しているけどやるしかない!

(この状態で「えい!くそ!やるだけやってやれ!」と開き直りができるのは、自慢ではないが私の精神力の強さだと思っている…愛読書「1,2の三四郎」 第1巻よりアントニオ猪木の名セリフを引用)





ホールの後ろから鈴の音と共に入っていった。




ふなっきーサンタ
「(大声で)ホーーーホッホーー!メェリークリスマァース!」

全幼稚園児が一斉にこちらを振り向いた。200人以上×2の瞳と、父兄+先生約20名×2の瞳とデジタルビデオカメラ約10台くらいのレンズが一斉に私にロックオンした!





園児
「あぁーーー!!!!きゃぁーーー!!!!わーーーー!!!!」






圧倒された。人生の中で、かつてこんなに注目されたことはあったであろうか?せいぜい、中学校の卒業式のときにステージに上がって卒業証書をもらう際、全校生徒が私に一瞬注目したのが過去最大であったろうか?

きっと猪木さんがリングに入場するときは、こんな感じなんだろう!

恐ろしいばかりである。私は
「メェリークリスマァース!みなさぁーん!」とホール全体に聞えるように大声を上げて、ホールの後から前へと歩いていった。幼稚園児の目線は私から離れることはなかった。ホールに入る前は結構緊張してしまったが、始まったら緊張している暇もなし。すっかり洋風サンタになりきっていた。幸い帽子を深くかぶっていたため、視界の半分が見えないので、全員を見渡すことができなかったのは逆に緊張緩和となった。

視界の下半分で見える園児の眼差しは、まさにサンタクロースが目の前にいるうれしさで満ち溢れているのがひしひしと伝わってきた。

ステージの前についた。園児たちはまだ興奮さめない模様。ザワザワ状態。やがて、先生がマイクを持って近ずいてきた。

先生「えー、じゃサンタさんに自己紹介してもらいましょう!」

ふなっきーサンタ
「メェリークリスマァース!ワタッシー、サンタクロゥースでぇース。ヨーロッパのさむーイ国、フィンランドからトナカイに乗ってやってキマシタァー!」



アドリブとは言え、おれは純真な幼稚園児に対しスゴーイ詐欺行為をしているのでは?




ふなっきーサンタ
「しかし、前橋には雪ナーイデース。もう少しで東京まで行ってしまうところデシタァ。でも、みんなの元気な声が聞えてきたので、ここの幼稚園がわかりましたヨ。メリークリスマァース!」

園児はザワザワしながらも、視界の半分から見える園児は不思議そうにふなっきーサンタを見つめていた。

先生「では、3人のおともだちがサンタさんに質問があるのです。」

3人の園児が前にでてきた。3人のうちの園児Aが先生のマイクを使って質問した。

園児A 「サンタさんは将来何になりたいですか?」

本来であれば
「特捜戦隊デカレンジャー!」というのだが、完全に夢をぶち壊すことになるので、ここは自粛し




ふなっきーサンタ「はぁーい!サンタクロゥースは、将来子供たちだけでなく大人の人みーんなにプレゼントを渡してみたいんだよー!」

なんか質問の趣旨からずれていたのを途中から悟った。

園児B 「サンタさんはどうして12月にくるんですか?」

本来であれば「クリスマスが12月だからじゃ!」というのだが、ここは自粛し

ふなっきーサンタ「12月はジーザスクライスト、
イエスキリストの誕生日なんだ。クリスマスはキリストのお祝いのお祭りなので12月にくるんだー。それにもし、2月に来てしまったらみんなが手に豆を持って”鬼はー外、福はーウチ!”と豆をぶつけてきそうだから他の月にはこれないんだー!」

フィンランド人なのに日本の行事を良く知っているサンタである。この時点で英語なまりのメッキが、剥げてきた。喋りが多くなって英語なまりをする中枢が対応しきれなくなってきたためである。

園児C 「トナカイさんはどうして空をとべるんですか?」





こーゆー質問を待っていた!さぁーてアドリブサンタが突っ走る!




ふなっきーサンタ
「ハァーイ!それはサンタクロースがマホォーーウを使っているからデーーース!」

いきなり英語なまり復活。

ふなっきーサンタ
「デーワ、みなサーンにそのマホォーーウを見せてあげましょーー!どなたか鈴を持ってきてくれマスカ?」

先生の一人がホールの後から、サンタ入場の時に使用した鈴を持ってきてくれた。

ふなっきーサンタ
「デーワ、これからマホーーウをカケタァーイと思いマース!ワターシの横にいる(司会の)センセーイにマホーーーウをカケマーーース!」

私は司会のおねーーーさまにターゲットを絞った。この手の質問のときは、このおねーさまに手伝ってもらおう!と企んでいた。しかーし、このことを本人に知らせることもなく
いきなり本人に予告もマホーーーウをかけるので、はたしてついてきてくれるだろうーか?




ふなっきーサンタ
「センセーーイ!アナーーータはこれから、ムショーーーーにフラダァーンスを踊りたくナァール!ホーーーーッホッホォーーー!」




鈴を先生の方に向けてシャン シャン シャン





先生は、おもむろにフラダンスをくねくね踊りはじめた。





すばらしいマホーーーウだ!
子供だちには大受けだぁ。




次ハー 盆オドーリ! 次は サンバ! とやる予定だったが、だんだん俗っぽいサンタになる危険があったので、ここで止めた。




アドリブに付き合ってくれた先生にただただ感謝。




先生「はーい。すばらしい魔法でしたね。さあ、ここでみんなで歌を歌いましょう!」

園児全員は「あわてんぼうのサンタクロース」を歌いはじめた。ここで私は打ち合わせどうり、園児の中へと入っていった。「未知との遭遇」で宇宙人の中に一人で歩いていく、地球人のように。但し、娘がいる窓際後方にはできるだけ近寄らないようにして。

園児たちは、歌いながら物珍しいそうにサンタクロースの服を触っていた。視界の下半分から見える子供たちは男の子も女の子も目をキラキラさせてサンタクロースを覗き込んでいた。その目は明らかに、サンタクロースそのものを見つめる眼差しであった。

歌が終るころ、私は園児の中からホールの前の方へとでてきた。司会の先生から、園児達はもう1曲歌ってくれるという。




「赤い鼻のトナカイ」




歌が始まった。また園児の中に入っていくのもワンパターンだし、ボケーっと立っているのもなんだしここは






踊ろう!







ふなっきーサンタは、「赤い鼻のトナカイ」のリズムにのってステップを踏んで、手を上げたり、下げたり。踊るというよりは、
お遊戯。上手い下手は別にして、200人以上の園児と下手なお遊戯のふなっきーサンタは「赤い鼻のトナカイ」で、楽しいひと時を送った。

「赤い鼻のトナカイ」の歌が終わり、下手のお遊戯も終わったーーー!ひとだんらく。 

先生は打合せどうり

先生「おやおやー何か聞こえてきたかなー?」と言った。

ふなっきーサンタ
「オオーー!ミナサーーン。ザンネンデース。他のお友達が私を呼ぶ声がキコエマース!サンタクロース、これから隣の埼玉のお友達に行かなければナリマセーン。」



日本の地理に詳しいサンタである。





園児一同 
「えええええーーーー?」






ふなっきーサンタ
「ミナサーんとはこれでお別れデース!サヨウナラー。お元気デーーー!メリークリスマーーース!!ホーーッホッ−ホーー」

私はプレゼントの入った袋を背負ってホールの前から、ホール後方のドアへ歩き始めた。園児たちは大きな声で




園児
「バイバーイ!またねー!」「バーーーイバーーーーイ!」






みんなが私に手を振ってくれた。






園児
「バ−−−−イバー−−−イ!!また来てねーーーー」





みんなが私に近ずいてきた。ならんでいる列を乱して、みんなが私に近ずいてきた。握手した。できるだけ握手した。みんなが近ずいて、サンタの服を触っていた。







本当にサンタクロースとの別れを惜しんでいるように見えてならなかった。







ふなっきーサンタ
「サヨウナラー!メリークリスマーーース!」






園児
「バ−−−−イバー−−−イ!!バーイバーーイ!バイバーーーイ!」




後方のドアに来た。私は振り返り子供の方を見た。サンタに近ずこうとして子供たちの列はバラバラだ。でも、みんなこっちを振り返りバイバーーーイ!大きな声を出して手をふり続けていた。

子供たちの目は最後まで私をサンタクロースとして見続けていた。ドアを開けて私は、控え室へ直行し速攻で着替えた。着替えながら自分自身、良い経験をしたと思って満足していた。

大人の人にはどう写ったかは知らないが、園児たちにはその日はるばるフィンランドからやってきた英語なまりの外人さんで、魔法を使い、「赤い鼻のトナカイ」でダンスをしたサンタさんがしっかりと心の中に刻まれた。





仕事を一時外出してやってきた体育会系B型人間の親父は、200人以上の園児にすばらしい夢をプレゼントしたのであった。





2004年12月、自分自身が真っ赤かのサンタの格好をしたとしても私はやっぱり信じ続ける。







サンタクロースは絶対いるのだ!






姿こそは変れど、昔「いわや」のとーさんだったサンタは、時間を超えて「ふなっきーサンタ」として、そして今度は200人以上の幼稚園児の心の中で生き続けることでしょう。園児の心の中のサンタは、みんなが大きくなったらまた次ぎの世代へと受け継がれていく。







サンタクロースはみんなの心の中にいるのだ。





サンタクロースを信じ続ける限り!



(マホォーーウにかかった先生と決め!)






2005年がいい年でありますように…。











2005年こそは、怪我が無い1年でありますように…。

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