現地採取の種子吹きつけの試み

世知原町の町道の拡幅工事(1日20台程度の交通量)のために、絶滅危惧植物のヒメヒゴタイ(国VU・県VU)・オカオグルマ(県VU)・ヒメシオン(県VU)や草原の遷移進行等で急速に減少しているオミナエシ・ノヒメユリ・カワラナデシコの生育する草原が大きく削られることが分かりました。

町に問い合わせたところ、削った後に種子吹き付けを行うとの返事。計画では外来種のイネ科植物・イタドリ・アメリカコマツナギ・メドハギなどが候補に上がっていました。それでは地域の生態系を著しく損なうために、現地の表土と植生を一時保留させ、その後に法面に戻す事を提案しました。


町と話し合いの結果表土を残し、工事の後に表土を戻すのは傾斜がきつく工法的に無理と言うことになりました。そこで種子の吹きつけの際に現地の種子を混ぜて貰うことにしました。


出来るだけ早期に周囲の在来種の種子がいり込み、持ち込んだ植物がいち早く消えてしまうように、吹きつけはノシバだけを用いるように要望しました。しかし、法面保護上無理だと言う事になり、ヨモギ・ノシバ・ススキ(いずれも岐阜県産)の3種とし、私たちが採取したススキ・トダシバ・メガルカヤ・ヒヨドリバナ・オミナエシ・シバハギ・ヒメヒゴタイ・ヤナギアザミ・ノヒメユリの9種を混ぜて貰いました。

岐阜県産の種子を吹き付けるのは遺伝子レベルから考えると問題がありますが、外国産の種子を吹き付けるより良いのではないかとの判断をしました{特に自然地域では、外国産植物(1年草)の方が遺伝子の交雑がないので、良いとの意見もあります}。

吹きつけ工事は予算の関係から2回に分割されました。最初の吹きつけに私たちが集めた種子を混ぜて貰いました。
このほど、結果が現れましたので紹介します。

私たちの採取した種子を混ぜていない場所はヨモギ・ノシバ・ススキの他にオオマツヨイグサやオオキンケイギクなどの帰化植物が生えているだけですが、採取した種子を混ぜた場所ではススキ・メガルカヤ・ヒヨドリバナ・オミナエシ・シバハギ・ヒメヒゴタイ・ヤナギアザミが生えています。トダシバとノヒメユリが確認出来ていません。

残念ながら、採取した種ごとに種子(正確に言うと果実の採取)の量を把握していないので定量的な判断は出来ません。しかし、適正な時期に果実を採取し、乾燥保存をすれば地域の植物で緑化が出来ることが分かりました。特に希少野生植物の保全には役に立つものと思います。

専門家のご意見を伺いたいところです。

私たちが採取した種子を混ぜた場所      ヨモギ・ノシバ・ススキだけを吹き付けた場所


私たちが採取し、吹きつけに混ぜた種子が生長。

  

メガルカヤ                       シバハギ                     ヒメヒゴタイ

  

ヒヨドリバナ                      オミナエシ                     ヒメヒゴタイ

*シバハギ・オミナエシ・ヒメヒゴタイが多く生長しています。

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