記憶の断片(4)
                                         written byジン



第4章〜覚醒〜

 意識が飛んだ・・・瞬間、
自分の中に別の意識があった。
意識が飛んだことを客観的に見ている自分がいた。
 どうして今まで不思議に思わなかったのだろう。
いつもいつも異常な世界の中で、別の意識が、この今の自分の意識が
その現実とかけ離れた世界を見ていた。
人格が人格の中に入っているような・・・。
 まるで映画でも見ているような感覚にいつも襲われていた。
周りは相変わらずの闇。まだあの世界が続いていた。

「・・・!はや・・!!!」

遠くから声が聞こえる。聞き取れない。
闇のずっと奥。辿り着けないような奥からの声だった。
”ぼやけた”という表現がよいのかもしれない。
そんな声だった。
 わけもわからないままその声に反応し、意識に力をこめた。

「クラン・・・・・脳・・異・・が下が・まし・・・!」

 またあの質感のない声が聞こえる。
 そのときだった。
考えている事がすべて飛び、何もなくなった。
 周りの闇が閃光へと変わった。


 
 雨が降っていた。
寂しく、孤独な音をたて、窓を叩いていた。
 身体・・・身体の実感が湧いてくるように思える。
自然と目が開いた。
 眩しい・・・。
目に強烈な光が進入し、角膜をかきまわし、戻っていった。
瞬きを何度もするのに疲れ、目を閉じる。
「先生!クランケの意識が戻りました!!」
 あの声だった。
あの、遠い声。
闇の中で聞いたあの声だった。

 目の前に眩しい光を放つ根源があるようだった。
瞼を透かし、光がもれてくる。
無意識に手を伸ばした。

「君!まだ動いちゃ駄目だ!」
”あの声”が叫んだ。

今度ははっきりと聞える。
 
 すぐに感づいた。
人を観察している感じがない。遠くから見つめている感じがしないのである。
 自分・・・か?
ここは・・自分の世界なのか─────────?

 もう一度目を開けると、さっきのような眩しさはなくなっており、
閃光が視界の邪魔ではなくなっていた。 

 天窓が見え、その奥に黒い空があり、星が瞬いていた。
視界の片隅に、2人の人間がいるのがわかった。
顔の位置を動かし、はっきり見てみる。
 白衣の男が2人、不安にまみれた顔でこちらを見ていた。




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