神子桜7


泰光は少し訝しく思い、もう一度声をかけた。
「父上?」
やはり、返事はない。泰光は泰明の肩に手をかけた。
「!?」
泰明は微笑んだまま静かにその生を閉じていた。作られたものとして塵になることもなく、ひとりの人間として…
「父上…父上っ」
泰光の声があたりにこだました。

そして、桜に寄り添ったまま眠る泰明の上にいつまでもいつまでも桜の花びらが降り注いでいた。

−完−
戻る