迷い犬

 

JONJONの写真を見て、「あれっ?」と思われた皆さまもいらっしゃるのでは

ないでしょうか。そうです。JONJONの子犬の時の写真がまったくないのです。

なぜか?…それは出会った時のJONJONは迷い犬であったからです。

JONJONと私の出会いは…どちらかと言えば最悪に近いものでありました…

 

「ママ、門のところに犬がいる!!!」

朝、出掛けようとした私の目に飛び込んで来たのは一匹の茶色い犬。

その犬は門の隙間越しにジッとこちらを見ていたのであります。

私の叫びに対して母は

「その犬、さっきゴミを出しに行った時、着いて来たのよ。『早くお家にお帰り。』

 と言ったんだけどね。」

涼しい顔でのたまわったのでありました。

 

でも、私にしてみればそれどころじゃない!

当時の私はバリバリの犬恐怖症。犬がいたので、避けようとして、とっさに車道に

飛び出したこともあるし、100mぐらい先に犬がいたので、道を変えたことも何

度かあるほど…

私はまったく覚えていないのですが、何でも私がまだ小さいころ、犬が飼いたいと

言った私に母が

「あの犬の頭を撫でて来たら飼ってあげる」

と近所の家の犬を指差しながら言ったそうな。まさか本当に行かないだろうと思っ

ていたら、トコトコトコとその犬のそばに行って、頭を撫でようとしてカプッとや

られたらしいのです。それが潜在意識にあって犬恐怖症になったとか…

その後も鎖を噛み千切って来た猛犬が目の前で子どもに噛み付いたのを目撃するな

ど、犬恐怖症が増す出来事ばかり…

 

そんな私の目の前に今、犬が立ちはだかっているのです。

いったいここをどう突破して、行けと?

そして、結局この年になって、駅まで母に送ってもらうことになったのでありまし

た。

 

帰り、念のため家に電話をすると犬の姿は見えないと言うこと。それなら大丈夫か

といそいそと家に帰ろうとして、家のそばの道を曲がったら…遥か前方、ちょうど

うちの前ぐらいのところにい…いるじゃない!! しっかりと!!

そして、駅まで引き返し、また電話をして、母に迎えに来てもらったのです。

 

次の日もやはり家の前を行き来していたので、前日同様、母に駅まで送り迎えして

もらうことに…

何でも近所の人が食べ物をあげようとしたら噛み付こうとしたとっても凶暴な犬ら

しい。そんな犬がうろうろしていたら、外出なんて出来ないじゃない〜〜〜

私の平安が〜〜〜〜〜 いっそ保健所に電話でもするか!?

 

そんなこんなでその犬は家にも帰らず、そのまた次の日もうちのへんを徘徊してお

りました。

 

そして、最初に見かけてから3日目のこと、帰りに家に電話をすると何でも犬を向

いの家のおばさんとうちの母とで掴まえて首輪をして、紐をつけたとか??

何でもうちの裏の家の人が小学生の子どもが二人いるので、犬がうろついていると

危ないので、保健所に電話して来てもらうと言ったので、向かいのおじさんが急い

で首輪と紐を飼って来て、うちの母と一緒にフライドチキンで釣りながら、保護し

たらしい。

私が帰った時は、その犬は向かいの家の玄関前につながれておりました。

それで、私は安心して家に帰ることができたのですが、何だかだんだん雲行きが怪

しい方向に…

 

私はてっきりすでに犬を1匹飼っていて、家族中が犬好きの向かいの家の人が飼う

とばかり思っていたけれど、2匹一緒に飼うことはできないので、うちで飼っても

らえないか…ということに話が進んでいるらしい。

冗談じゃない!! 犬なんかと同居できるわけないよ。

それにうちにはすでに猫がいるじゃない!

でも、どういうわけか、うちの母は飼う気満々。私が

「もし、どうしても飼いたいなら子犬を買って来て、子犬から飼おうよ。」

と言っても母は

「どうしてもこの子がいい!!」

という始末。うちで一番発言権が強いのは父でも私でもなく、母。

そして、とうとうその犬を取りあえず我が家で預かることになったのです。

 

名前がないと不便だと言うことで、和名、洋名、いろいろな名で母が呼んでみたの

だそうですが、唯一その犬が反応したのが“ジョン”という名前だったということ…

当時私はばりばりのBONJOVIファンだったので、そのボーカルのJONから

取った名前…もちろん私は大反対しました。

「(BONJOVIの)JONと犬が同じ名前なんて嫌〜ッ」と。

でも、犬自身がその名前をとっても気に入っていることもあり、何度呼んでも

「ジョン」という名前だけ反応するので、とうとう私の意志にかかわらず、犬の名

は“ジョン”に決定したのでありました。

 

その次に、取りあえず居場所をと母がへそくりで赤い屋根の犬小屋を買って来て、

そこで飼うことに…

で…でも、何か悲しげな瞳で家の中をいつもジッと見ているのよね…

そう思っていたら、ある日、とうとうテラスのサッシが少し開いている時にそこか

ら見事に家の中にジャンプして入ってしまったのです!

降ろしても降ろしても入りたがるので、とうとう根負けして、家の中で飼うことに…

あ〜あ、何で何で家の中になんて上げるのよ〜〜〜

ある日帰って来た私の悲痛な叫びでありました。でも、そんな叫びなど多数決の前

には完全無視…(-o-)

 

うちで飼い始めてもやはり食べ物が目の前にある時などすぐに噛もうとする怖〜い

犬なので、犬に自由に家の中を徘徊されると本当に困ってしまう〜 当然私は犬の

いるところには一歩たりとも近づけないから…。

それはそれで困るということで、しばらくの間はテーブルの足にS字状のものをつ

けて、それに紐をつけて自由に徘徊できないようにしていたのであります。

でも、家の中に入れたことに満足したのか、当時はジョンは全く不満を言いません

でした…

今思い返すと、短い紐でつながれて、かなりかわいそうな状況だったんだけどね…

 

戻る