新しい時を迎え、月日は流れてゆく。 ただ、何もなかったのように・・・。 初夏の静かな小さな森に、一人の男が木にもたれて、 月を眺めていた。 少し霞がかった朧月夜。 淡く優しい月の光りに、男の姿が照らされている。 照らし出された姿は、まるで幻のように何故か儚く、 幻想的に見える。 「神子・・・・。」 そっとオッドアイの双眸を閉じて、愛しい者の名を呼ぶ。 本当の名ではない、愛しい者の総称。 それでも男は、月光に照らされながら、 幸せそうな微笑を浮かべる。 「神子・・・私は・・・。」 伝えられない想い。伝えてはいけない想い。 この気持ちを愛しいものに気付かれないよう、 冷静を保つために、この森に一人やってくる。 溢れる想いに、森の木々たちがざわめく。 愛しさと切なさと・・・・そして強い想いに。 気付いているかもしれない。気付いていないかもしれない。 愛しい者の重荷になるくらいなら、 この気持ちを押し殺して、彼の者の為に戦い続けよう。 脳裏に浮かぶ夢ににも似た、愛しい者の姿を思い出す。 「お前の為なら・・・。」 閉じられたままのオッドアイ。 男が見ているのは、ただ一人の少女。 眼を閉じても消えない姿・・・鮮やかに甦る笑顔。 それだけで前に進める。 そう、少女だけが男の光りだったからだ。 ふと、男の双眸が開き、月を見上げた。 「私は、お前の為だけに在ろう・・・。」 まるで少女に想いを告げるように、 男を照らし続ける月に向かって、切なく優しげな声で囁いた。 「愛しい・・・私の神子・・・。」 男が告げた刹那、森の木々がざわめく。 男の強い想いに、答えているように・・・。
沙桐姫様『遥かネット 〜沙桐姫のお部屋〜』 http://www.galstown.com./6/comicjungle_game/harukanetto/
[涙のひと言]
この作品も当サイトの10000HITのお祝いとして、
沙桐姫様が贈ってくださった作品です。
神子のことをとってもとっても愛しているのに重荷になら
ないよう、その思いを必死に抑えようとする泰継さん。
でも、溢れ出す思いは北山の木々にも伝わって…
あなたの思いは言葉に出さなくてもきっと神子に届いてる
よ、泰継さん! だって神子もまたあなたのことを心から
愛しているから…
沙桐姫様、切なくて、それでいて泰継さんの強い神子への
愛と思いが伝わって来る作品をありがとうございました!
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