トラブルの事例・原因・対処方法

(ここに書かれた内容は管理人がA-cars 2003年12月号のアストロ泡沫記用に寄稿した原稿です

車は機械ものであり使用状態やメンテナンス状況などによって故障が発生することがある
トラブルの中で定番と言えるほど頻度の多い故障を原因例とともに挙げてみた
一つ言えることはアメ車だから故障が多いわけではなく定期的なメンテナンスを行えば
発生しないということがほとんどだそこで報告の多い故障の事例と対応策を列記してみた

ご注意!!
事例はほんの一部であり、列記した症状や原因が全てではありませんので故障の際には
修理工場等で点検の上で的確な診断と修理を行うことをお勧めいたします

ご質問/お急ぎの方はトラブル・メンテナンス掲示板の方へどうぞ


代表的なトラブルについての原因と対処ヒントです。 項目をクリックすると目的の内容が表示されます

SESランプ点灯 EGRバルブ故障 触媒の詰まり
ミスファイヤ 変速ショック ミッションの滑り
コンポーネントスリップ パワーウインド不動 エンジン不始動
10 オルタネータ故障 11 アイドラアームのガタ 12 ワイパーが動かない
13 オーバーヒート
オーバークール
14 エアコン不調 15 96年型初期のVCM

















SESランプの点灯

SES(Service Engine Soon)(※1):車の各部に設置されたセンサーが異常を感知したときにコンピュータ(VCM:Vehicle Control Module)が
メーターパネル内にあるSESランプを点灯または点滅させて運転者に異常を知らせる。

点灯は瞬間的または時々起こる異常があったときに「速やかに点検を受けてくれ」という意味になる。
点滅は異常が進行中という知らせで「これ以上車を動かすな!」という警告の意味も含んでいる。SESの点灯や点滅の原因には数多くのもの
があり、テック2(※2)というスキャナを使用することにより内容が判る仕組みになっている。
逆に言うとスキャナで点検しないと原因が判らない、つまり修理が出来ないということになる。

一部のショップによっては「誤動作ですよ」と言うところもあるようだが誤動作ということはあり得ない。
誤動作と言ってバッテリーを外してリセットしてしまうことがあるが論外な行為である。
バッテリーを外してリセットしてしまうと、せっかくVCMが記憶していた過去のトラブルの内容を全て消し去って「記憶喪失」にさせてしまい、
適切な処置を行えなくしてしまう愚かな行為である。仮に誤動作としてもそれは誤動作させる故障があるということである。

(※1:SESランプはカナダ仕様車と正規輸入車ではエンジンの形をしたマークになります)

(※2:95年車以前はスキャナを使わなくてもトラブルコードを読み出すことができます)


ページTOPへ戻る


EGRバルブ故障

【症状】
信号待ちやアイドリング時にエンストしてしまう。

【原因】
不完全燃焼で発生したカーボンによりEGRバルブの動きが悪くなったり固着したりする。
EGRバルブの故障は95年車に最も多く見られる故障であるが他の年式でも発生する。
EGRバルブは不完全燃焼した排気ガスをインテークに戻して再度燃焼させるシステムの一部であり、根本原因としては不完全燃焼にある。
不完全燃焼の発生要因として最も多いものは点火系パーツの劣化がある。

【対処】
EGRバルブは電子機器であり基本的には洗浄不可であるためEGRバルブを交換する必要がある。
根本原因である点火系パーツも併せて交換しないと再発することが多い。
また症状が進行するとインテーク内にもカーボンが堆積していることも多く、その場合はインテーク内部の洗浄も必要となる。


ページTOPへ戻る


触媒の詰まり

症状】
エンジンが吹けない・アイドリングが不安定・エンジンが掛からないなどがある。またマフラーからガラガラと音が出ることもある。

【原因】
不完全燃焼で発生したカーボンが触媒の中に詰まり排気がうまく出来ないために発生する。
また詰まったカーボンが触媒の中で燃えて車両火災の原因ともなることがある。
根本原因としてはEGRバルブと同じく点火系パーツの劣化によるところが大きい。

【対処】
触媒を交換する。根本原因である点火系パーツの交換も必須である。


ページTOPへ戻る


ミスファイヤ

症状】
アイドリング不安定など

【原因】
点火系パーツの劣化によるものと点火系パーツの劣化によって発生したカーボンがインジェクターに付着し動作不良になる場合がある。
また一部では粗悪ガソリンによる影響もあるようだ。

【対処】
症状が軽ければGMからインフォメーションとともに専用のインッジェクタークリーナが発売されているので、これをガソリンタンク内に投入
することにより改善されることがある。
インジェクターが完全に固着している場合にはインジェクターを交換しなければならない。
点火系パーツの交換を2万キロ以上行っていなければ点火系パーツの交換も必須となる。


ページTOPへ戻る


変速ショック

【症状】
変速時に後ろから蹴飛ばされたようなショックが出る。PやNレンジからDやRレンジに入れたときにゴンという音とともにショックが出る。

【原因】
変速時に出るショックはATFのメンテナンス不足によるところが多い。
ATFの劣化や漏れによる油圧不足・バルブへのスラッジ混入などが主な原因である。
PやNレンジからDやRレンジに入れたときに出るショックはエンジンマウントやミッションマウントの切れや劣化・ユニバーサルジョイントのガタ
によるものが多い。

【対処】
ミッションは非常にデリケートな部品であり専門家に判断を委ねて適切な処置をしないと症状が改善されないばかりか更に症状が進行して
しまうことがある。
最悪の場合はミッションの交換が必要となる。
ATF交換の際は最低でもオイルパンの中にあるATフィルター交換は必須、上抜きだけでATF交換するのは論外である。
修理費用を安く上げたければATFのメンテナンスと症状が軽いうちに適切な処置をすることが肝心。


ページTOPへ戻る


ミッションの滑り

【症状】
変速時に一瞬、エンジン回転が空転したように上がって変速する。

【原因】
変速ショックと同じくATFのメンテナンス不足によるところが大きい。
その他にATF内にクーラントが浸入してくることによりクラッチがボロボロになって滑ることもある。

【対処】
やはり専門家による判断のもとに処置を行う必要がある。
ATFをゲージでチェックする度に量が増えてくるときにはクーラントの混入を疑った方が良い。
これはラジエターの中にあるATFクーラーの破損でありATFクーラーの交換が必要となる。


ページTOPへ戻る


コンポーネントスリップ

【症状】
聞き慣れない故障だが高速道路を走行しているときにてSESが点灯し料金所で止まって発進したら1速から2速への変速の際に、ものすごい
ショックが出る。一度エンジンを切ると症状が出なくなる。

【原因】
ミッションのパーツの一部に磨耗が発生したときにオーバードライブで、ある一定以上の距離を走行時に油圧の低下とクラッチの滑りをVCMが
感知し油圧を上げる指示をミッションに対して出す。
エンジンを切ると指示がリセットされるが料金所ではエンジンを切らないので油圧は高い指示のままとなっており、トルクが高い1速から2速への
変速の際にいきなりクラッチがつながって大きなショックとなる。

【対処】
エンジンを切ると症状がなくなるために放置してしまうことが多いが、これも専門家による判断のもとに対処したい。
最悪の場合はミッションの交換が必要となる。


ページTOPへ戻る


パワーウインド不動

【症状】
窓が開かない・閉まらない・最初は動くが途中で止まり時間を置くと動かすことができる

【原因】
スイッチの故障もあるが、ほとんどはモーターの故障による場合が多い。
最初は動くが途中で止まり時間を置くと再び動かすことができるときにはモーターの故障である。
01年からはモーターの力を強化した対策部品が発売されている。
その他にレギュレータの動きが悪くてモーターに負荷をかけ過ぎてしまっていることもある。

【対処】
モーターを交換することで直るが、本当にモーターの故障であるか点検を行ってから行いたい。
レギュレータの動きも併せて点検し動きが固いようであれば注油、症状が改善されなければレギュレータの交換も必要となる。


ページTOPへ戻る


エンジン不始動

【症状】
スタータモーターが回らない・スタータモーターは回るがエンジンが掛からない

【原因】
症状により原因は多岐に渡るが代表的なものとして、スタータモーターが回らない場合は単純にバッテリの劣化を疑う必要がある。
バッテリが弱ってくるとラジオ程度であれば動かすことが出来てもスタータモーターのように瞬間的に大電流を必要とする場合はバッテリの能力
が追いつかなくなることがある。
また、バッテリ端子が腐食していると必要な大電流を引き出すことができなくなり同じような症状となる。
スタータモーターそのものの故障ということもある。
スタータモーターは勢いよく回るがエンジンが掛からないというときには点火系の故障もしくはフューエルポンプの故障が疑われる。
キーをONしてジーというフューエルポンプの音がしなければフューエルポンプの故障の可能性が大きい。
音が出ていても必要な燃圧を出すことが出来なければエンジンがかからないのでフューエルポンプの交換が必要なこともある。
フューエルフィルターが詰まって必要な燃圧を引き出せないこともある。
燃圧は正常なのにエンジンがかからないときには点火系パーツの故障という可能性が大きい。
フューエルポンプ故障の原因として多いのはガス欠もしくはガソリンタンクの中にガソリンがほとんど残っていないときにフューエルポンプが空転
することによって加熱し故障につながることがある。
フューエルポンプの冷却はガソリンに浸かっていることにより行われるのでガス欠には要注意である。

【対処】
原因が多岐に渡るのできちんとした診断の元に対処したい。
闇雲に部品交換しても無駄になることが多い。
フューエルポンプはガソリンタンク内にあるため交換するときにはガソリンタンクを下ろして作業しなければならない。
また96年車まではポンプ単体で部品供給があるが97年車以降はセンダーユニットと一体になっているためにパーツは非常に高価になっている。
フューエルポンプに余計な負荷をかけないためにもフューエルフィルターも定期的に交換しなければならない。


ページTOPへ戻る


オルタネータ故障

【症状】
メーターパネル内の電圧計が異常に低い・エンジンがかからないなど

【原因】
オルタネータが故障というよりも正確にはオルタネータの中にあるICレギュレータの故障である。
アイドリング状態でラジオ・ライト・エアコン・ブレーキランプ・・・・と徐々に電気の使用量を増やしたときに電圧計が徐々に下がってくるようであれば
オルタネータが故障している疑いがある。
例えばライトを点けたときに一瞬電圧が下がるがすぐに復帰する場合は正常で、電圧が下がったまま上がってこないなどが故障の典型的な
初期症状となる。
オルタネータが故障するとバッテリに蓄えられた電気で動くがバッテリの電気を消費し尽くしてしまうとエンストやエンジンがかからなくなる。

【対処】
メーター内の電圧計は誤差が大きくて必ずしも正確な電圧を指しているとは限らないので、何かいつもと違うなと思ったら電装屋などで発電量を
点検してもらうと良い。
故障と判断されたときにはオルタネータの交換が必要となる。
オルタネータの故障はバッテリを定期的に交換することで、ある程度は防ぐことができる。
バッテリが弱ってくると、それを補うためにオルタネータが常に最大能力の状態で働き続けることになり「過労」となって最後には「過労死」して
しまうためだ。


ページTOPへ戻る


アイドラアームのガタ

【症状】
走行中にブレーキをかけるとハンドルが小刻みにぶれる・直進時にフラフラする・ステアリングを切ったときに異音がするなど

【原因】
アイドラアームにガタ(磨耗)が発生することにより発生する。
その他にもタイロッドのボールジョイントやアッパーアーム・ロアアームボールジョイント等のステアリング系のパーツにガタが発生することで同様の
現象となることがある。

【対処】
ガタが発生したらそのパーツは交換するしかない。
ガタの発生原因はグリス切れによるものである。定期的なグリスアップを行えば防ぐことができる。
ステアリング系パーツには14ヶ所もグリスアップしなければならない箇所がある。
国産車では大型トラックなどを除いてグリスは封入式になっていてメンテナンスフリーだがアメ車ではグリスアップするのが一般的だ。
グリスアップであれば費用はわずかだがグリスアップを怠ることで多大な費用が発生してしまうことになる。
ローダウン車は足回りへの負担が大きいので特に注意したい。


ページTOPへ戻る


ワイパーが動かない

【症状】
ワイパーがたまに止まる・動かない・ワイパーモーターあたりを叩くと動くなどすると動く

【原因】
ワイパーモーターそのものの故障やスイッチの故障もあるが、ほとんどの場合はワイパーモジュールというワイパーの動きを制御する基板の
ハンダ付け部分にクラックが入ることによって接触不良になり発生する。
車の振動とワイパーの動きによる振動に対してハンダ強度が不足していると思われ、同じコントロール基板を使っているブレーザーなどでも
同様の故障が発生している。遅きに失した感はあるが、やっと最近(10月17日)になって国土交通省へリコールの届けが出された。

【対処】
リコール対象車については対策基板へ交換することにより改善される。
ただ残念ながらリコール対象は正規輸入車のみであり並行輸入車については対象外となるため自費で修理しなければならない。
ハンダを行うことができるオーナーであれば自分でも修理は可能だ。
ワイパーモジュール基板を外してハンダ部分をよく見るとクラックが確認できるので、その部分に再ハンダを行ってやれば良い。
ただし、基板に付いている接点がすり減っている場合にはワイパーモジュール基板を交換してやる必要がある。


ページTOPへ戻る


オーバーヒート・オーバークール

【症状】
水温計の針が赤い部分を指すことがある・水温がいつまでたっても上がらないなど

【原因】
オーバークールの場合はサーモスタットが開きっぱなしということで発生することが多い。
オーバーヒートはその逆にサーモスタットが開かない・ラジエターフィンにゴミが詰まっている・ラジエター内部の水路やエンジン内部の水路が
錆などで塞がっている・ファンカップリングが故障しているなどで発生する。

【対処】
サーモスタットが故障している場合にはサーモスタットを交換してやれば直る。
オーバーヒートするからといってローテンプサーモスタットに交換しても意味はない。
水路への錆詰まりなどはラジエターやエンジンの水路をフラッシングしてやることで直るが、状態が酷い場合にはラジエターを交換しなけれ
ばならない。
基本的にはクーラントを定期的に交換することによって防げる内容である。
注意点はクーラントを抜くときにはラジエターのドレンからだけでなくエンジンブロック左右のドレンボルトからも抜かないと意味がないということだ。
エンジンブロックのドレンボルトから抜かないとエンジン内部のクーラントはほとんど抜けない。
また96年車以降はGM純正のデキシクールという赤いクーラントを使用しなければならない。
それ以外を使うと防錆剤の関係でエンジン内部に錆が発生することがある。
ファンカップリングが故障して風量が不足している場合にはファンクカップリングを交換しなければならない。
エンジンが熱いときにファンを手で回して軽く回るようであればファンカップリングの故障が疑わしい。


ページTOPへ戻る


エアコン不調

【症状】
エアコンが効かない・吹き出し口の切り替えが出来ない・風量を最大にしないと風が出てこないなど

【原因】
単純にガスが抜けている場合はどこから抜けているのか点検修理してからガスを充填する。
スローリークといって何ヶ月もかけてガスが抜ける場合には漏れているところが判らない場合が多いので、その場合にはガスにブラックライトに
反応する着色剤を入れて漏れ箇所を点検する方法もある。
その他にコンプレッサー内部で削られたの鉄粉がオリフィスに詰まっていることもある。
この場合にはオリフィスを交換する。症状が酷い場合にはコンプレッサーをはじめとしてエアコンパーツを全て交換しなければならないこともある。
エアコンの吹き出し口の切り替えが出来ない(デフロスターにしか風が出ない)時には負圧パイプの破損が考えられる。
エアコンの吹き出し口の切り替えやヒーターと冷風の切り替えにはエンジンの負圧を利用していてエンジンから負圧タンクを経由してエアコン
コントロールパネルへとつながっている。
エンジンルーム内部の負圧パイプはプスチック製のパイプが使われており経年変化によってプラスチックが脆くなって穴が開いたり、どこかに
擦れて穴が開く場合がある。この場合はパイプを交換することで直る。
風量切り替えを最大にしないと風が出てこない場合にはレジスターの故障が考えられレジスターを交換すると直る。


ページTOPへ戻る


96年初期のVCM

【症状】
体感できる初期症状はない。症状が進むと変速ショックが出始める。

【原因】
数年前にGMからインフォメーションが出されているが、あまり知られていない内容で96年車の初期モデルでVCM内部の問題でアース不良
になるものがある。
アース不良になるとスロットルポジションセンサー(TPS)の値が異常になり変速時にショックが出るようになる。
対象となるのは96年車でVCMに貼ってあるラベルのサービスナンバーが16208546のものだ。対策されたVCMはナンバーが16244210となっている。

【対処】
対象のナンバーのVCMに対策ハーネスを取り付ければ良い。
ただし、既にTPSの値が異常を示している場合にはVCMそのものを対策品に交換しなければならない。
変速ショックまで出始めている場合、最悪はミッションまで交換しなければならないことがある。


ページTOPへ戻る