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帰ってきた空飛び猫 講談社文庫
 (訳:村上春樹)
メルヘン 世間には「いろんな人間」がいる度 ★
翼の生えた猫たちの冒険を描くシリーズ第2弾。S.D.シンドラーのイラストに惹かれてしまいました。田舎の農園で幸せに暮らす空飛び猫の4兄弟。ある日、お母さんに会いたくなった年下の猫たちは、彼らが生まれた都会のゴミ捨て場を目指しての旅に出ました。はたして、彼らは無事にお母さんに会えるのか?
羽根のある猫という変わった姿ながら、好奇心いっぱいに頼もしく生きる猫たちが愛らしいです。こういうファンタジィは幸せな気持ちになりますね。旅立ちがあって、冒険があって、ちゃんと最後に着地する。王道パターンと言われればそうですが、王道パターンというものは案外ばかにしたものではないのです。安心して心から楽しんで読めるのです。それって素敵なことだと思います。(それに王道パターンすら、ちゃんとこなせない作品だってたくさんあります)話がそれました。村上春樹さんが「あとがき」でファンタジィについて語ってます。最近、あまりファンタジィが楽しめなくなっていたので、この「あとがき」はちょっと嬉しかったです。
                                                    2002.12.01

 

+ アガサ・クリスティー +
ねじれた家 ハヤカワ文庫
 (訳:田村隆一)
ミステリィ ねじれた結末度 ★
ねじれた家で心のねじれた老人が殺された。根性の曲がったたくさんの家族と巨額の財産を残して。『そして誰もいなくなった』と同じく童謡殺人と呼ばれる作品。マザーグースの唄を彷彿させる設定を背景に、残された家族の心模様と現実がさらけだされていく。果たして、ねじれた男は誰に殺されたのか?
『そして誰もいなくなった』に並んで好きな作品。作中人物はかなり根性曲がりですが、金持ちの邸宅でおこった殺人事件の犯人を警察が推理するという単純な筋立が好ましかったです。最後が多少、お涙頂戴的な悲劇仕立てですが…。個人的にはジョセフィンがけっこう好きでした。小生意気で妙に思わせぶり。側にいたら憎らしいタイプだけど、この作品の登場人物としてはかなり魅力的でした。
                                                      2003.3.8
そして誰もいなくなった ハヤカワ文庫
 (訳:清水俊ニ)
ミステリィ 初心者歓迎度 ★★★
見知らぬ10人の男女がインディアン島という孤島に招待された。ところが島に到着してみれば、彼等を招待した島の主の姿はない。そして、突然に行われる過去の罪の告発。やがて、古い童謡にどおりに1人、また1人と不可解な事件がおこっていく。
言わずと知れた有名作品。初めて読んだミステリィでした。文章が平易ですっきりしてますので、小学生高学年辺りから読めます。謎解きを意図してないので、細部にこだわらなくても大丈夫です。最後に解決編というおまけ(?)がついてますが、そこを読むまで真実は謎のままでした。しかし、最後の場面(解決編の前)では謎のままで十分に満足できてしまいます。それがこの作品の1番すごい所かもしれません。

 

+ アリス・ホフマン +
恋におちた人魚 アーティストハウス
 (訳:野口百合子)
メルヘン ちょっと思い出しメルヘン ★★
クレアとヘイリーにとって今年の夏は最悪だった。夏が終わるとクレアは遠くへ引っ越すことが決まっていたし、2人がいつも遊んだビーチ・クラブまで取り壊されることになってしまった。夏が終わらなければよいと願う2人の前に嵐に流された人魚が現れる。ビーチ・クラブの少年に恋をしたという人魚。果たして、2人は人魚を助けられるのか?
久しぶりに児童文学を読みました。どうにもならないこと(引越しや取り壊し)を知っていながら、人魚の恋を助けようとがんばる主人公の2人がいじらしいかったです。ちょっとだけ明るい気分になれます。大人も楽しめるメルヘンチックな物語でした。
                                                     2003.5.21

 

+ ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア +
たったひとつの冴えたやりかた 早川文庫
 (訳:浅倉久志)
SF ザ・コンタクト度 ★★
銀河系の辺境にある「リフト」という場所を舞台にした3話の物語。図書館のレファレンスが、銀河系の歴史フィクションを学生に紹介するという形式で物語は進む。このレファレンスが優秀なお陰で、第1話から第3話までが大変読みやすい順序で並んでいる。SF小説に慣れなくていなくても、あまり抵抗なく読めた。
「たったひとつの冴えたやりかた」…誕生日にもらったスペースクーペを改造し、1人宇宙の旅へでた少女は未知の生物に出遭う。お互いに心を通わせた両者だったが、2人を待ちうける運命は残酷なものだった。3編中1番の秀作。
「グットナイト・スイーツハーツ」…サルベージ船の船長が昔の恋人を助けるため、宇宙船を襲撃した奴隷商人と戦う冒険。あまりパッとしない洋画を連想する中身だった。本で読む分にはそこそこ。
「衝突」…リフトの対岸の宇宙圏とのファースト・コンタクトにまつわる物語。いつ、全面戦争が始ってしまうのかとハラハラし通しだった。宇宙人サイドから書いてある部分もあって面白い。
                                                     2003.1.21

 

+ J・R・R・トルーキン +
指輪物語1 旅の仲間<上1> 評論社 ファンタジィ 本物ファンタジー度 ★★★
「指輪」を巡る壮大な冒険物語。2002年に3部作の第1部が映画公開されました。
最初の100ページほど(ボビットという種族の歴史や習性などについて書かれている歴史資料みたいな部分?)を読み終わるまでがなかなか辛かったです。そこを通り越すぎると、とたんに勢いよく読み出せます。文庫本の第1巻は主人公のフロドがボビットの住む「ボビット庄」を旅立つまで。まだ序章なのですが、ここまで読んですでに1つ冒険を終えたような気分です。主人公フロドの思慮深さや従者のサムの意外な決意、ピピンほか友人一同の隠れた洞察力等、ボビット達がみせる見かけとは違った意外な一面が新鮮で面白いです。

 

+ J.K・ローリング +
ハリー・ポッターと炎のゴブレット 静山社 ファンタジィ 実は序章度 ★★★
夏休みのある日、ハリーは夢をみた。かしずくワームテールと大蛇。そしてソファに座った謎の影。夢から覚めたハリーは、ヴォルテモード卿につけられた額の傷が酷く痛む。その後、グゥイニッチのワールド・カップや3大魔法学校対抗試合など、次々に行われるイベントの中で、密やかに、ハリーや魔法界を脅かすような事態が進んでいく。そして、ついに来るべき時がやってくる・・・。
ハリー・ポッターシリーズ4巻。だんだん、ストーリーがシリアスへと突入してきました。下巻の最後1/3…暗いです。今回のメインは3大魔法学校対抗試合。ハリーが、がんばってハーマイオニーばりに呪文を覚えてます。試合の第1の課題辺りから、読書スピードもどんどんアップ。下巻は一気に読みました。登場人物が増えてくるのでちょっと消化不良を起こしかけています。たまに名前を忘れます。そういえば、4年生って14歳だったのですね。(小学校4年だと思ってました)日本だと中学生くらいか?まだまだ、ズッコケることも多いですが、ハリーが大分かっこよく成長してきました。がんばれ!
                                                    2002.12.10

 

+ モーリス・ルブラン +
怪盗紳士ルパン
 -怪盗ルパン-
春陽堂くれよん文庫
 (訳:榊原晃三)
ミステリィ 怪盗紳士度 ★★★
かの有名な怪盗「アヌセーヌ・ルパン」の活躍を描いたシリーズ第1作。子供向け文庫なので平易な訳になってますが、夢中で読んでしまった。面白かったです。ちなみに…私はホームズよりルパンのが好きです。
第1話「ルパンつかまる!」…いきなり捕まってどうするという感じですが、捕まってしまいました。この話、シリーズの第1作目だったそうです。この話でルパンが思わぬ人気となり、以下「獄中」、「脱獄」、「旅」へと続いたそうな。たしかに第1話の彼は4編の中でも1番好い男です。
第2話「獄中のアヌセーヌ・ルパン」…獄中にいるルパンがいかにして難攻不落の 城から宝を盗んだのか。種を明かされれば「そうだったのか!」と納得すること間違いなし。まぁ、テレビや新聞の発達した現代だと無理ですけど…。
第3話「アヌセーヌ・ルパンの脱獄」…タイトル通り、ルパンが脱獄します。それにしても彼の部下というのはどういう組織になっているのでしょう。ルパンというと1人物というイメージなのですが、しっかり部下がお仕事してます。謎です。
第4話「なぞの旅行者」…なぞの旅行者とはどちらのことなのか?もちろん、ルパンに決まってます。今回も小気味好くスリリングに読者を楽しませてくれてます。
                                                     2003.11.3

 

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