+ 案内 + + 伝言 +
+ 乙一 +
死にぞこないの青 講談社文庫 現実感ひしひし度 ★
人よりも少し臆病で反応が遅い僕。学校の生物係を決める時にずるをしたと誤解された僕は、やがて先生に疎まれ始めクラスで最下層の存在となっていく。そんな僕の前に青い顔をした不気味な少年が現れる。少年は一体何者なのか?
作者名を間違えて読んでました。正しくは「オツイチ」なのですね。変わった名前です。知人にオススメ頂いた本ですが、学校と言う場所のせいか人事ではすまなくて恐かったです。 ありえないけど、ありえそうな話。最近、現実の方が何が起こるかわからないですから。ちょっとグロテスクな部分もあるけど、最後は悪くありませんでした。同じくいじめを扱った「風葬の教室」(山田詠美)よりは後味よかったです。
                                                         2003.12.23

 

+ 小野不由美 +
緑の我が家
 Home,Green Home
講談社ホワイトハート文庫 恐怖の幼稚園児度 ★★★
父親の再婚と高校入学をきっかけに、浩志は幼い頃に住んでいた街で1人暮らしを始める。しかし、彼が選んだアパート「グリーンホーム」は「幽霊がでる噂」のあるアパートだった。やがて、浩志の周囲でも奇妙な出来事が起こり始める。
幼稚園児が恐かったです。他の部分はそれほどでもないのですが、彼だけはどうしてもダメでした。それなのに登場シーンがけっこう多いので、読むのに困りました。こんな場所に残されてしまったおさるが可哀想です。でも、彼は浩志を助けられて嬉しかったのでしょう。やりきれない話です。

 

+ 加門七海 +
おしろい蝶々 角川書店 夢・幻・現 度 ★★★
社会から逸脱してしまう人々を描いた短編集。時代や設定は様々だが、登場人物達がするりと別の世界へと存在を移してしまう所に薄ら寒さを感じる。古典に近いやや装飾華美な文体は、音に出して語るのに向いているかもしれない。
「おしろい蝶々」…おしろいに焦がれる主人公の前に、時折映る美しい手。その手に誘われ、彼は夜の世界へと堕ちていく。ラストにいたってスッと背中が寒くなった。
「夜の孔雀」…昭和初期の時代を背景に、主人公の少年は妖しい薬屋の美少年と真夜中に邂逅する。どことなく「うさんくさい」空気に満ちた作品。
「琅かん物語」…戦に破れた主従の行く末を描く。美しい景色を背景に鬼と化していく彼等の姿が哀れ。
「闇月夜」…目のみえない帝の第二皇子が謀略により山中へ捨てられる話。なす術もなく人に捨てられ、魑魅魍魎の世界におちていく二ノ宮が哀しい。本当に恐ろしいのは果たしてどちらか?
「花影」…病の淵にある画家が明かす義理の姉の秘密。赤い牡丹と蛇の残像が目の前にちらつく。
「亡春」…廃仏毀釈の時代に仏に執心した僧侶の末を描く。ラストの常澄の悲痛な叫びが胸に痛い。
                                                          2003.2.26

 

+ 鈴木光司 +
リング 角川ホラー文庫 来る、きっと来る度 ★★★
雑誌記者の浅川は残業明けのタクシーで奇妙な話を聞く。交差点で突然倒れた青年がそのまま死亡したというのだ。死因は心臓麻痺。偶然にもそれは、彼の姪の死に方と奇妙な一致をみせる。果たして2つの事件は関係あるのか?浅川は事件を探っていくうちに1本のビデオテープの存在に辿りつく。
映画にもなった有名作品。怖いという前評判を十二分に聞いて覚悟していましたが、やはり怖かったです。読み終わった後、背中からじっとりとくる怖さ。空気が怖いのです。物語そのものは時間と勝負のミステリィ、そして結末に隠されたどんでん返し。先が読めなくて面白かったです。
                                                           2003.8.20

 

+ 甲田学人 +
MISSING 神隠しの物語 角川電撃文庫  異界物語度 ★
「物語は『感染』する。そして徐々に、現実は『異界』に喰われている。」
カバー・口絵・本文イラストの構図がおしゃれな本です。イラストだけ見て、即決で買いました。タイトルと章タイトルも好みです。中身は怪奇ファンタジー。過去に神隠しにあい、生還したという高校生「空目恭一」と彼の所属する文藝部のメンバーが「神隠し」を巡る謎に巻き込まれる。「物語が人に『感染』する」という設定が面白かったです。「感染」という言葉が、じわじわと世界が侵食されていく感じでイメージをそそります。その上、異界へさらわれた人間のなれの果てが、ちょっとぞっときます。(「神隠し」ではない。肉のやつ)本格ホラーとまではいかないですが、そこそこホラー。登場人物はありがちな気もしますが、なかなか面白く読めました。
                                                          2003.1.16

 

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