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「氷結柱」
霜月の詩を
足の下から聴く
さくりさくりさくり
生えてくる
透明な水が凝って
大地を押し上げる
小さな力強さ

69

「想天詩」
赤い南天が
白い雪の上
ぱらぱら描く
誰かの想い
冬を解かして
光りに眠る
春に囁く

70

「空凝る」
海を漂う
透明な硝子瓶
静かな青を
深く深く
詰め込んで
時間を越えた
ボトル・メール
遠い誰かが
私が知らない
空を閉じ込めた

71

「夏散りて」
はりはり降る
白い花弁
僕の頭をなでる
優しい誰かの手
迎え火に呼ばれて
慰めに来てくれたのか
取り巻く気配に
一頻り涙滲んで
母が好きだった
百日紅の花が散っていく

72

「autumn カーテン」
道端に咲いた
気の早いコスモス
か細い葉影と
優しいピンクが
微かに揺らめく
秋風を誘う

73

「還元律」
乾いた音が
足元をかすめて
がざがざと鳴る
枯れ色の秋
土へと還った
彼の季節を
冷たく凍った
極月の地面に聞く

73-2

「季節巡り」
足元の砂が
乾いた風に飛ばされた
転がっていく
小さな粒々
私もこうして
飛ばされている?
なんとなく物憂い
春一番の訪れ

74-1

「花螺旋」
夏祭りに買った
藍色の朝顔
こぼれた種が
新しい命を繋いで
するすると伸びた蔓の先
「ちょっとだけ涼しいでしょ」
花色に笑う君
完敗の僕は
隣にもう1鉢
水色の朝顔を買った

74-2

「神鳴らし」
空へと膨れ上がる
白い塊
どんどこどん
雲間から降ってくる
太鼓の音
影に浮かび上がる
光る輪郭が
鮮烈に
脳裏に焼きつく

75