雲をつかむ話 〜SMAPおでかけ記
Reading [TUBAKI-HIME] with Tsuyoshi Kusanagi * 2002.6.30 matinee * WHITE CUBE


梅雨寒の天気が続いた後の週末。宮城県は白石市まで朗読劇のマチネを観に。
何を着て行こうか、前夜までさんざん迷っていたのだけれど、結局、長袖シャツ1枚で出掛けました。
一応、おろし立てのTheoryだったりするので、気分的にもスッキリ嬉しい気分。

白石蔵王はいきなり駅前から空が広い町で、そんな場所にドカンと置かれた、
その名の通り白くて四角い建造物、それが、今回の会場"WHITE CUBE"なのでした。
ガラスと吹き抜けを生かした設計は、一時期流行った東京国際フォーラム風でしょうか。
2階へあがったホール前のロビーも広々と明るい空間で、清々しい雰囲気。
サントリーホールでのズシリとくる緊張感のある空気とは違って、ワクワク感の方を強く感じたのは、
会場の雰囲気のためだったのか、それとも私が2度目の観劇だったせいなのか。両方かな、やっぱり。

トイレの入り口には、今回もホワイトボードが。
ハングルのメッセージも多くて、ここ1ヶ月ハングル講座を眺めることさえサボっている私としては、
みなさん勉強してるんだなぁ…と、ひたすら尊敬。
実はいまだに「チョ ナン カン」の文字もうろ憶えです。これって、ファン失格かしらん、やっぱり。

ホールへ入ると、傾斜がキツイせいか、ぎゅっと凝縮感がある感じ。
舞台と客席の距離は、サントリーホールと同様にかなり間近。
私は傾斜の始まらない前方の席だったのですが、
後方席から見下ろした感じは新国立劇場・中劇場に似ているのではないかしら。
デザインコンセプトへの力の入れようを感じる内装は、
なんでしょか、銀色のタイムカプセル、はたまた宇宙タマゴといったところ。
背もたれが透明ボードだったり、肘掛が銀色のタマゴ型だったり、なかなか面白いのですが、
ま、はっきり言って長時間座ってるのには不向きです。お尻痛かったですもん。

舞台中央に置かれた椅子を見ていると、これからそこに腰をおろす人の実在と不在を感じて不思議な気分。
でも、そんなことを考えていられる分だけ、私も落ち着いていたということなのでしょうか。
客電が落ちて、高田さんのピアノと野田さんのソプラノで開幕。
野田さんは紅いドレスがとても良く似合う情熱的なお顔立ちで、より華やかな印象。

暗闇の中、下手から中央の椅子へ向かって歩いてくる白い影がとても大きく感じられたのは、
単に私からの距離だけではなかったような気がします。
なんだろう、物理的なことではなくて、存在の"厚み"のようなものでしょうか。
"オーラ"ともちょっと違う、"存在感"でも物足りない。うーん(語彙貧困)。
スポットライトに照らし出された朗読者は、白いスーツに襟のあるシャツを合わせていて、
カットソーだった初演よりも更にノーブルな雰囲気。
そして、足を組んで座る様子からは、ゆったりとした心持ちが伝わってくるような。

台本に対するポジションも、一歩上の大きな場所から眺めている、
もう一人のクサナギツヨシがいるような気がしました。
それは、けっして 「コイツ、余裕かましてんじゃん」などと云うことではなくて、
2月に必死で取り組んで、確実に何かを掴んで、
その掴んだものをじっと暖め続けていたがゆえに獲得できたものなんだろうなぁ、と。
あぁ、今の彼には俯瞰図を眺めているような気持ち良さがあるに違いないと、
そんなことを考えながら、よく響く声を聴いていました。

若干足された言葉があったり、ラストシーンで立ち上がるタイミングが早くなっていたり、
脚本と演出にも若干の変更がありましたが、感情の載せ方にも、だいぶ変化を感じました。
登場人物毎のメリハリが増して、より"芝居"に近付いたというのでしょうか。
初演で気になっていたカミカミも殆ど無くなって(但し、「〜くらさい」率は想定90%(笑))、
"朗読者”としての完成度は増していたのではないかと。
ただ、初演とどちらが好きか?と問われたら、
私は「両方好き」と、まったくもって優柔不断な答えを返すことでしょう。
いっぱいいっぱいのところで、じっと心の奥にギリギリまで深い感情を溜め込んで、
それが、ふとした瞬間にキラリと光ったり、ぽろっと零れ落ちてくるような朗読も好きだったので。
(や、これを書いている時点で未だCDブックを聴いていないので、実はちょっと自信ないんですけどね)

でも、クサナギツヨシが常に前に進もうとしている、ということ。それを感じられたのが、とても嬉しいのです。
"前回の反省点を修正する"というレベルに留まっていない。さらに新しい作品を見せようとしている。
それが、どこまで彼の中ではっきりと自覚されているのか分かりませんが、
これはもう"進化する"という才能なのだと。そんな、盲目なことまで考えてしまいました(照)。

そして、やっぱり生のクサナギツヨシの佇まいは非常に美しく。
オーラのスイッチがONになってると(もっとも、OFFの状態を生で見たことはないんですけども)
彼が動いた時に周りの空気が動くのが見える、って感じでしょうか。
私のポイントがズレているのかもしれませんが、業務日誌が2冊目に移る場面で撃ち抜かれてしまいまして。
考えてみると、ライトに照らされている中で初めて動きらしい動きをするのがこの時なんですよね。
テーブルに目をやった時のクッキリとした横顔、左耳に光るピアス、ふんわりとセットされた伸びかけの髪、
そして日誌を持ち替える何でもない仕草が、どうしてこんなズキンとくるんだか。謎です。

カーテンコールで共演のお二人の手をとる姿は座長さんっぽかったのですが、
一人で舞台に戻ってきた姿は、もう余裕綽々のアイドルさんで。
ライブでお馴染みとは云え、狭い会場で見ると、肩の高さで両手をひらひらさせるお手フリの堂の入り方や、
客席を眺める目つきがスタアさんの其れなのを改めて認識してしまう次第です。
うーん、どんなに「ぷっ」すまでヘタレな姿を見せられようが何しようが、
やっぱり、この人は拍手や歓声を食べることでどんどんルクスを増していく世界の住人なのだなぁ。

それにしても、最後の最後、舞台の袖でチョナンポーズを決めて去って行ったクサナギツヨシ。
ったくもーっ、調子に乗りやがって、コノヤロー!(大喜び)

【2002/07/07 UP】


Reading 『椿姫』 with 草なぎ剛
ヴォイス 〜私が愛するほどに私を愛して〜


【朗読】草なぎ 剛
【ソプラノ】野田 浩子
【ピアノ】高田 浩
【脚本・演出】土田英生
【音楽監督・編曲】高田 浩

ホワイトキューブ[宮城県白石市]
2002/06/30



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