トマト天国


ぐはあっ
ごふっごふっ

口の端から一筋、生暖かくドロリとしたものが伝い落ち、男は今まで意識することのなかった自らの変調をようやく知ることになった。
いつからこんなに脆くなってしまったのか。

ここのところ残業続きではあった。すぐにリミッターが作動してしまうだらしない体であるが、今回は不調を訴え始めるのがいつもより早すぎると思った。
 朝が辛い。それでも通勤ラッシュを避けるためには早めに家を出たいのだ。男にとっては早起きよりも人混みの方が遥かにストレスなのだった。
 食欲も乏しいのだが後々のことを考え、何か口にするようにはしていた。

 そこでトマトを食べて来たのであった。

−−回想終わり

 S君曰く、「トマトには血液をサラサラにする効果があるんです。しかも即効性があるらしいです」
ほう、なるほど朝トマトを一個噛って来たがなんだか気分がすっきりしているようだ(単純)。
「あのどろっとした部分が効くらしいですよ。」
そうか。それは好都合。好きなんだ、あの部分。

ちょうどQの親戚から大量の「美味しいトマト」が届けられており、朝食べるのに良いのだ。これがなかなかに美味しいのだった。
 キッチンに行ってシンクの上でガブっと食いつき、モサモサと食う。
こういう食べかたをしているとなんだか自分の中にある野生の部分を感じ、生命力が満ちて来ているかのように錯覚することができる。実際そんなに満ちてないんだけど。生命力。
 ガツガツではなくモサモサと食う。
 食べかたにすら覇気が感じられないところからすると私の前世はきっとウシか何かだったのだろうと思う。食べたらすぐに寝るしね。ンモー。

  なんか弱音が続いちゃってますが、ほんとのこというと元気ないのは暑いからってだけなんです。トマトでも食べて元気出すべ。
 という訳で冒頭の私の姿は朝一にあわててトマトをがっついたためにむせていただけだったりします。
今日もトマト食べておでかけです。でもやっぱりのんびりと昼寝したい。ウシみたいに。

 次回、「ソルダム天国」に続く(ウソ)

 

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