くさいのよ
私は味音痴である。大概のものは美味しく食べることができる。そのため妻Qの料理に文句をつけたことなどほとんどなく、感謝してもらっても良いのではないかとさえ思う。
だがQに言わせればなにを作っても同じなのでつまらないということらしい。本当に美味しいから美味しいと言っているのだが、私の表現力が乏しいことも有るのだろう。まあその辺りの話は今回の主題ではないので、又の機会に置いておこうと思う。今回は匂いの話である。
嗅覚と味覚とは、非常に近い位置にある感覚であって、一般的に嗅覚が鋭い人は味覚も鋭いというか繊細であると言われている。生物学的にどうでといったところは、例によっていい加減なもので良く知らないのだが、風邪をひいたりして鼻が詰まったときに味までよくわからなくなるとかいった経験は皆さんもお持ちのことではないかと思う。
私は10年程前に顔面神経麻痺なる病気の一環で、舌のきっちり右側半分の味覚を失ったことがある。当日の朝はかなり動転したが、動転しながらも冷蔵庫にあった梅干を、舌の感覚が無くなった方の表面に擦りつけるという実験を行なった。結果はドライに当時の私の状態を反映しており、「冷たい」という感覚のみが私の舌に残ったのだった。
完全とは言わぬまでも、顔面神経の働きとともに味覚もそれなりに回復している今となっては実験のしようがないが、当時嗅覚の実験を行わなかったのは悔まれるところだ。
片方の鼻(もちろん感覚の残っている方)だけを塞いでおけば、どんなに臭くても平気であったのだろうか。
さて味覚(元々味音痴)、嗅覚ともそれなりに回復している私だが、時々気になることがある。
嗅覚だけ突然鋭くなる時ってないですか。
その時は主に電車の中で訪れる。正確には通勤電車で隣に座っているオッチャンとか、立っているオッチャンとか、ドア横に持たれかかってるオジョウチャンまでが。
もう少し詳しく書くと、帰りの電車で座れてちょっとラッキー、隣のオッチャン酒臭くてアンラッキー、反対の隣のオッチャンタバコとか汗とかなにやらかにやらでものすごく臭くて更にアンラッキー、たまりかねて席を立つと次の駅から人がドッと乗って来て身動き取れなくなってしまってちょっとミステイク、でも近くのオネエチャンが綺麗な人でこれはラッキー、でも何故かそのオネエチャンの口が臭くてやっぱりアンラッキー、といった感じである。
こんなことが数日続くと、私の嗅覚は健康な平均的日本人男性(30歳)に比べて特別鋭いのではないかと疑いたくなるもなるのだ。
そんな私の嗅覚だが、これで得をした記憶がない。突然鋭くなる(普段はそんなに鼻がきかない)私の嗅覚は、不快な匂いのみ正確にキャッチして必要以上の悪寒を提供してくれるのだ。
おまけにすぐに頭痛やら吐き気やらを催してしまう私は、連日のように気分を悪くして帰宅するのであった。
ついでの話だが、西洋人は日本人に比べて嗅覚が鋭いのだという。肉食の方々は草食の方々に比べて、腐ったもの(肉食なのでお肉)を食べた時にシャレにならんからだそうだ。自分で書いておいてなんだが、この話は正直信じていない。魚介類を生で食べる民族も腐ったもの(お魚)を食べた時はシャレにならんと思うからだ。
あ。こんな話を書いている間も、横のオッチャンが臭い。臭いんだったら。はあはあ。通勤というのも身を削られる行為だ。電車の後もバスが臭い時があるからなあ。バスは車体が臭い時もあるし。今日のバスは大丈夫だったけど。雨の日なんか臭さ倍増、倍率ドンで更に倍って時ありませんか。同意者募集中です。
やれやれやっと家に辿りついたでよ。ただいまー。お父ちゃんだよー。すりすりー。すりすりー。
あ、こらこらもがくでない。すんごい嫌がりようだなぁ。はっ。ひょっとして俺が臭いのか?くんくん。うーん自分ではわからん。
えーと……すぐ風呂に入って来ます。
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