とうさんはどこだ

 

 

「迷子の迷子の子猫さん〜あなたのおうちはどこですか〜」

「これは子猫さんが自分が誰であるのか、ここがどこであるのか、わからない。つまり記憶喪失、場所の見当識障害という状態に陥っているのだということなんだね」
「あうー」
「ああ、犬のおまわりさんも困っているのだね。ところでどうしておまわりさんは犬なんだろうねえ」
「ぶいい」

「〜ドジョウが出てきてこんにちは〜坊っちゃん一緒に遊びましょ〜」

「どんぐりと呼ばれるものは何種類かあるけど、シイなど広葉樹の果実のことを一般的にどんぐりと総称しているのだね」
「まうー」
「となると、おかしいねえ。そう、これらの種子に雌雄の区別はないはずなんだね。だから、お池にはまったどんぐりに対して坊っちゃん、と呼びかけるのは適当ではないということになるねえ」
「ばうー」

「む〜す〜ん〜で〜ひ〜ら〜い〜て、て〜を〜打って〜む〜すんで〜、ま〜たひらいて〜」

「ぶおー。ペチペチ」
「ああ、手を叩くのはいいんだけど、ま〜たひらいてのところでちゃんと股をひろげないと駄目だよ。そういう振り付けだったと思うよ。多分」

「おくちをポカンとあけてたら、ばなな〜がスポンと飛びこんだ〜。モグモグモグモグたべちゃった〜。た〜べちゃった〜たべちゃった〜」

「これは、いつバナナが飛んでくるかわからないから、お昼寝のときは口を開けておこうという歌だろうか。いいえ、違います。船長さんはおそらく皮ごとバナナを食べているねえ。歌詞のなかに、皮がむけて云々といった記述が無いから多分バナナは皮がついた状態だぞ。これだけは教えておこう。バナナの皮は美味しくない」

「ぞ〜うさん、ぞ〜うさん、お〜はなが長いのね、そ〜うよ、かあさんも、な〜がいのよ〜」
「ぞうさんは、お鼻が長いよねえ」
「むおー」
「確かに我々人間から見れば、ぞうさんは鼻が長い。これは間違いないよね。しかしぞうさんの世界で言えば、当然お鼻の長いぞうさんと、そうでもないぞうさんがいるはずなんだね。これを個体差というんだ」
「ふごお」
「前半の部分、お〜はなが長いのねの部分は、ぞうさんの鼻が他に対して長いという印象を述べているというようにそのまま受け取っても良いと思うが、後半の部分、かあさんもな〜がいのよ〜とは、

1)目の前にいるぞうさんは鼻が長く、同じくその母さんも鼻が長い。それを見ている人間からすれば、当然どちらも鼻が長い訳であり、これは種族間の違いであるということ 

2)目の前にいるぞうさんは象という種の中でも特に鼻が長く、同じくその母さんも特に鼻が長い。これは種の中での個体差ということであり、目の前にいるぞうさんの鼻の長さは母さんから受け継いだ形質であるということ。

の、どちらなんだろうねえ。まあ1)の方なんだろうけど」

「うー」

「ぞ〜うさんぞ〜うさんだ〜あれがすきな〜のあ〜のねかあさんがす〜きなのよ〜」

「Pもかあさんすきか?」

「うっきー。きゃっきゃっ」

「とうさんは?」

「ぶきゅるるる」

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