シューマイではない

 

 

 横浜へ出張したのだ。日帰りだ。遠い場所ではあるが、特に時間を要する用件では無かったので、かなり余裕を持った帰還ができた。
 帰り際にQからリクエストのあったシウマイを買った。奈良といったら大仏と鹿である様に、横浜といえばヒトデ軍団()と崎陽軒のシウマイなのである。少なくとも私の中では。

 お土産を買いやすい土地というのは良い。これが定番というのが無い土地や、定番がお土産に適さない土地では困ってしまうこともある。


 例をあげて見よう。
 これといった定番の無い土地の代表としては東京が挙げられるだろうか。色々なものが有るのは間違い無いのだが、色々有りすぎてこれで決まりというのが無い。こういった場合お土産に困ってしまう。
 その土地の定番がお土産に適さない、こちらは色々なパターンが考えられる。
余りにメジャーになってしまい、飽きられてしまったパターン

広島のもみじ饅頭。
 広島ともみじ饅頭の名誉のために書いておくが、私は何度も食べたことがあり、美味しいお菓子である。ところが妻は広島出身であるし、私も西日本での生活が長いために馴染み過ぎている程に馴染んでしまっているのだ。度を超すとお土産を買って来たにもかかわらず「他になかったのか」などと責められることも予想される。
 東京土産に人形焼を買ってしまっても同様の悲劇は有りうる。味そのものは似通っているが、さらに人形焼の場合はその形状が人面を呈している。怖いじゃないか。さらに「またか」との印象も手伝い、困ったことになる。
 東京と人形焼の名誉のために書いておくが、大変に美味しいお菓子である。そういえば広島のぷよまんってまだあるのだろうか。

 どこの名物かわからないパターン。

 福岡に行くと「ひよこ」というお菓子を見つけることができる。全体のフォルムはバーバパパかひよこかといった感じの饅頭である。いきなり首をもぎとって食べたり、全身の皮を剥ぎとって食べたりといった様々な食べかたが楽しめる素敵なお菓子である。
 ところが、東京に行くとこれまた同じものが土産物コーナーに並んでいたりするのだ。これを東京土産として福岡に持っていった時、あるいはその逆の場合に起こるであろう悲劇は想像するだけでもう充分に悲しい。

やあどうもありがとうこれは美味しそうだねとオバアチャンが言うのだ。愛想笑いが目に浮かぶようだ。どこの誰だそのオバアチャンは。
 ひよこの名誉のために一応、どちらも大変に美味しいお菓子である。って同じものだけど。

 似ているパターン。

 また、東京の「鳩サブレー」、下関の「ふくサブレー」、福岡の「ひよこサブレー」は若干形状が異なることを除けば同じ味であるという事実もある。
 装飾が施されている表面が見えないように、つまり裏返しにするともうどれがどれやらシルエットクイズである。さてどれが「鳩サブレー」でしょう?チクタクチクタクうーんと… じゃあB!ブッブー正解はA。Bは福岡名物「ひよこサブレー」でしたあ。それではまた来週!
 念のため、どれも大変に美味しいお菓子である。皆同じ味であるが。


 さて、その土地の定番がお土産にならない場合はどうしようか。

 大仏。

 持って帰ることは不可能である。
 しかし先日大仏を見に行った時には、土産物売場に手のひらサイズの大仏が売られていたような……。

 大仏(小) ○○○円

 大きいのか小さいのかはっきりさせろという話である。
 第一、大仏(小)をもらってしまった方はどうする。邪魔になったとしてもうっかり捨て、もとい毎日ありがた過ぎて困ってしまうではないか。

 同様に、東京タワーの置き物などをもらっても困るだろう。

 付き合い始めて3ヶ月、初めて御邪魔することにあいなった彼女の部屋の玄関先に東京タワーが飾られていたらあなたはどうする。どうするかと聞いているのだ。

 こうして書いているとまるで東京というところが嫌いみたいに見えるが、そんなことはない。5年程住んでいたこともあるぞ。東京タワーのプラモデルも作ったことがあるぞ。何故か電飾だった。
 そうだ東京という括り方が大雑把過ぎていかん。ええと目黒に5年程住んでいた。サンマとか美味しかったと思う、多分。
東京の名誉のために一応書いておくが、良い所だと思う。

 そうだ今度東京へ行くことがあったらお土産を買おう。新幹線から中央線に乗り換える時のエスカレーター付近で見かけた「ごまたまご」とかいうお菓子がとても気になっているのだ。


※ ヒトデ軍団  横浜ベイスターズのこと。


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