.おすすMeDOC 始めて4kのページに迷い込んだ方へ。 このDocファイルは4kの中で比較的評判が良いと思われるものをよりぬいたものです。 これ読んで駄目なら他のも読んで試してみてください(なんだそれは)。 .まえがき おすすMeDocのまえがき  色々検討した末に、11本をおすすめとして選ぶことにしました。 何だか中途半端な数ですが、今(2003年4月11日現在)の4kが44本であることを考えれば、何だかキリが良いかも知れません。  44打数11安打。打率.250。何とかレギュラー入り出来そうです。守備とか上手ければですが。  各「よりぬき4k」にはそれぞれあとがきを付け加えました。 自画自賛という奴ですな。 それぞれ書いた当時の心境とか今の心境とかを振り返ったりして、ほんの数ヶ月〜数日前の話なのに、なかなか楽しい作業でした。あとがき作りにはまりそうです。おいおいそれより本文書けよ。 それでは。また。 はらたま@はらたまhome mail:haradasi@mxk.mesh.ne.jp URL:www5d.biglobe.ne.jp/~haratama/ (はらたまhome) .4k08:機械だあ と おぼろげな記憶 機械だあ と おぼろげな記憶 多段プレスという設備がある。 職場での話だった。とある試験サンプルを前に職場のS君とAさんが話をしている。 「こっちとこっちのサンプルの違いは何ですか?」 「こっちは多段プレスで作ってんねん」 「……多段プレスって何ですか?」 ここで二人が私の方を見る。Aさんは多段プレスを知っている。S君は知らない。私は多分知っている。わかりやすく説明してやってくれという顔でAさん、「何て説明したらいいかなあ」 「……デスラー三段空母見たいな奴だ」 よりによって三段空母は無いだろうと思う。 多段プレスとはその名が示す通り複数のプレス板が一度に複数枚の板をプレスするという、本当にそのままの機械であったはずだが、振られたら何かしらひねりの効いた答を返したい私なのであった。今回は失敗だ。 しかしそれに対して帰ってきたS君の答えに私は仰天する。 「……なんですかその、デスラー三段空母って?」 おいこらちょっと待て、三段空母を知らない?デスラー知ってるだろ、デスラー。 「……知りません」 若ぶったってダメだぞS君、同い年じゃないか。先日君もサーティーズの仲間入りをしたはずだ。 しかし知らないものは知らないのであった。確かに我々の年代はヤマト世代とガンダム世代の狭間というかどっちかというとガンダムなのである。 ここで私は回想する。 かつてこんなことがあった。 私に今の仕事を教えてくれたOpera座の客人ことNさん(ハンドルネーム不明)は、板と板の間に塗った接着剤がぬちゃあっと糸を引いたままで硬化した状態を 「ガミラス星の内部みたいになってんねん」 と説明し、それで私は見たことのない板と板の間の内部接着状態を、さも断面を切断し観察したかのように理解することができたのであった。 ここで私は確認する。 あれ?ガミラス星ってどんな星だったっけか。 googleによるイメージ検索を試みるも、ガミラス星の画像は見つけられなかった。著作権やらの問題も有るのだろう。確か硫酸の海が有るのだったよなあ。ガミラス。 確かではないガミラス星の画像を頭の中に思い浮かべ、描いてみたものがこれである。 ※注 Web版ではここに画像(手書きのガミラス星)が入ります。 ん?これでは蜜柑ではないか。 .おぼろげなあとがき 4k08:機械だあ と おぼろげな記憶 の あとがき  こいつは今まで(2003年4月11日現在)の4k44本の中で唯一画像を貼り付けてしまった4kです。以後こういったことはすまいと心に誓うほどでは無いのですが、なんとなくもう貼るまいと思っていたりします。一体どれくらいなんだ。 我ながら、10本目くらいまでの4kって面白くないなあと思っておるのです。気合が空回りしちゃったりしてて。 ところが「面白い」と感想を下さる方がいらっしゃったりして、とてもうれしいやらなにやらだったりします。そんな気持ちを込めて(?)一本目のおすすめはこれにしました。リクエストも頂きました。ありがとうございます。  画像はHandwrite3による手書きメモのスクリーンショットです。この画像を見ていただければ、私のサイトが何故あれほど殺風景なモノであるか、わかっていただけると思います。絵、下手なんす。私。  「宇宙戦艦ヤマト」は、私が物心ついたころにはもうIIIをテレビでやっていたような、そんな感じなので記憶はおぼろげです。特別好きな訳でもありません。コスモタイガーの絵も描けません。  そんな私でも「デスラー三段空母」というのは強烈に印象に残っていて、子供心に「何だかとんでもない兵器だ。」と感じたものです。反射衛星砲なんてのもありましたが、あれよりは三段空母の方にインパクトを感じたと記憶しております。  おぼろげですが。 .4k10:唄 唄 皆さんは頭の中で何か音楽が鳴りっぱなしになって困った経験をお持ちだろうか。 私は、ある。 少し前など、松浦亜弥(字、あってる?)が仕事中に鳴りっぱなしで大層困ったこともある。一旦頭の中で響きはじめた曲は止めようと思えば思うほど強烈に頭の片隅を占領しつづける。特につんくファミリーは危険だ。 どういった風につんくファミリーが危険か。 仕事で困っているときに限ってフルボリュームでウッハッウッハッだったり、社外の人と打合せをしている最中にスッゲエスンゲエだったり、あとちょっとここのところを削ってみたいなあという作業中に愛のボタンを連打連打されてしまうのである。これは危険だ。最後の曲がよくわからないという人が多いかもしれないがここは先に進む。 つんくファミリーの場合はまだ対処のしようはある。よりキャッチーな曲を上書きしてやればよいのだ。 先日上司のN室長(二児のパパ)が荷物の上げ下ろしをしている最中に「でっでっでー、でっでっででー(smoke on the waterのリフ)」とやっていたのはおそらくこの上書き行為を行なっていたのではないかと思われる。 当然ながら上書きは気をつけて行なわないと、上書きした曲にその後悩まされることになるのは必定である。その後N室長の頭の中は同じメロディーが延々リピートされていたのではないだろうか。 最近頭のなかで曲が流れないなあと思っていたらなんのことはない、口に出して歌っていた。Pを抱っこしてウロウロするときなどは何かしら歌う。子どもを抱えて歌うときに何故人はこうも音痴になるのだろうか。音痴である。Pに良くない影響があるかもしれない。 風呂の中でも歌う。Pを洗いながら歌いっぱなしである。ところがふと我にかえるとトンデモない曲を歌って(というか口ずさんで)いることに気づく。 「ちゃーちゃーちゃー、ちゃーちゃーちゃー、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ〜〜〜〜 (うん) ぱ〜〜ぱ〜〜〜。ぱ〜ぱ〜ぱぱ〜ぱ〜ぱ〜(西部警察のテーマ)」 「あっれは〜だれっだっ、だれっだっだれっだっ (中略) あ〜くまのち〜から〜み〜に〜つ〜けた〜(Pの髪を洗いながら気がつくと髪の毛をデビルマン状に成型していたりする)」 「きた〜の〜〜さかばどおりには〜(中略)こんやっの〜こいは〜」 等々、選曲からなにから無茶苦茶である。 頭の中で鳴る曲はもともと無茶苦茶な選曲であり、「なぜこの曲が?」と首を傾げたくなるのであるが、今までこれといって考えたことはなかった。口に出して歌ってみると、これがまた不思議な選曲であったので面白く感じたわけである。はっきり言って「太陽にほえろ」は見ていた記憶があるが「西部警察」は子供の頃あまり見た記憶がない。何ゆえの選曲か。 本日、Pがはじめて私の動作を真似した。 右手を突き上げて「ダー」と声をあげると一緒に腕を上げるのだ。猪木イズム継承の瞬間である。Qにちょっとだけ怒られたが、してやったりである。 次は「でーびーる」と声をかけると両腕を下げ、胸を反らせて天を仰ぐとか、「デビルアロー!」と叫ぶと腕を胸の前で交差させるというのはどうだろうか。また怒られるな。 .唄のあとがき 10 唄 の あとがき  頭の中で音楽が鳴っていて止まらない。どうにも鬱陶しい。 おっとローレゾPalmのことを考えると画数の多い漢字は避けなければ。  うっとうしい。  そんな経験は誰にでもあることかと思います。それが今はまっているアーティストのお気に入りの曲であったりするならばそれこそ鼻歌混じりで仕事もはかどろうってもんですが、好きでもなんでもなく、どちらかといえば嫌いな曲に限って頭の中では鳴りやすいようです。  それはCMや流行の音楽では、とにかく聞き手に強い印象を与えようとするメロディ作りが行われるからであると思われます。好きとか嫌いとか関係ないのか。そうか。  最近では「なんでだろ〜」が皆さんの頭の中でも流れやすくなっているのでしょう。私もそうです。好きでも無いのに流れます。そうですか、あなたもそうですか。  しかし4kの中では「何故この曲が?」という曲が流れた時の話を書いています。  これは本当に謎です。  なんでだろ〜。 .4k12:最高峰モンブラン 最高峰モンブラン といっても万年筆の話ではない。私は安い水性ボールペンを愛用しているのです。 モンブランといえば、あのマロンクリームの乗った洋菓子のことなのです。当然そうなのです。 Qにケーキをねだられますね。たまには買いますね。はい。自分の分は、まずモンブランです。 寿司屋は玉子の出来で職人の実力がわかるという。蕎麦屋ならかけそばであり、当然洋菓子屋ならモンブランなのである。何。ショートケーキではないか、ですと。いいえ断然モンブランなのである。 モンブランと言えば栗である。栗という素材をマロンクリームにて最大限に生かさんとし、さらにその頂きには甘く煮た栗そのものが鎮座しておる。店によってはその内部にまで栗の欠片が内蔵されているものまである。栗ケーキだ。 WEBで調べてみた。ヨーロッパアルプスの最高峰、モンブランの名を冠したこの菓子は東京発祥のものであるという。もはや和菓子。日本人のための菓子であると言って良いだろう。 詳しい名前の由来についてはここでは割愛する。とにかくモンブランの魅力は奥深い。てっぺんの栗、上部を包む独特の形状を呈したマロンクリーム。内部にささやかに仕込まれた生クリーム。スポンジケーキ部分は控えめが良い。豪華な本体をしっかりと支える土台部分は焼きが入り、香ばしい。 そう、この菓子は栗の魅力をコアとして、一つで3つも4つものテイストが盛り込まれていると言えるのだ。 しかしそんなモンブランにも欠点が無い訳ではない。強いてあげるとするならば、残念ながらその名称とマロンクリームの形状があまりにも特徴的なために、類似商品による.誤解を招きやすいということがある。 とある洋菓子店、そこはプリンを主力製品としているのだが、その店にプリンを買いにいった。プリン2つ下さいと言おうとしたまさにその時、私の目に別の菓子の姿が飛びこんで来た。そう。モンブランである。小さなカップにあのマロンクリームがあの独特のフォルムでもって存在しておる。嗚呼まさしくモンブランである、これ一個下さいなのである。 喜びいさんで帰宅した私はモンブランを楽しむのであった。 ……。 ……。 マロンクリームの下はプリンではないか。これはちょっと違うのではないか。一応その店の名誉のために書いておくと、まあ美味しかった。しかし私のイメージしていたモンブランは、こげなもんじゃないっちゃ。プリン店でモンブランを買い求めた私が悪かったのだ。 こんなのもある。 先日、帰宅途中にあるパン製造販売店へ立ち寄った時のことである。パン2つ下さいと言おうとしたまさにその時、私の目に別のパンの姿が飛びこんで来た。そう。モンブランパンである。 パンの中央部分にあのマロンクリームがあの独特のフォルムでもって存在しておる。嗚呼まさしくモンブランパンである、これ一個下さいなのである。 以下略だが、そのパン製造販売店の名誉の為に書いておく。なんのこともないただのパンだった。パン製造販売店でモンブランパンを買い求めた私が悪かったのだ。 このように、モンブランの名を冠した食品は、この国に数多く存在しており、それら食品の中では、あの形状のマロンクリーム=モンブランという図式が成り立っているようだ。 モンブランの創始者、偉大なる菓子職人(名前忘れましたすいません)はモンブランの名を自らの菓子と店の名前に用いたが、あえて商標として登録しなかったのだそうだ。そのおかげで数十年の歳月を経て創意工夫を凝らしたモンブランの子孫を私は楽しむことが出来る。そのかわり、前述の例にあるように多くの類似商品が生まれる原因にもなっているのだ。 家の近所にドイツ菓子の店というのがある。ドイツ菓子だけになんとかブルクとかなんとかマイヤーとかいった菓子があったような気もするが、その店が大変に美味しいのだ。なかでもモンブランが絶品である。しかも他のなんとかブルクやらはほとんど全て300円であるのに、モンブランだけ350円である。並々ならぬ自信と妥協の無さが伺える。 栗感が違う。段違いである。形だけのなにやらとは違う。芯から栗である。これこそモンブランである。これ2個下さいなのである。 さて、「おっちゃんはモンブランを好む」といわれる。うそだあと言う方はお試し頂きたい。さあケーキを買ってきましたよお茶にしましょうかどれがいいですかと人数分のケーキを提示するのだ。 あなたの家のお父さんは、きっとモンブランを選ぶはずである。 そして、私もモンブランな歳になったということなのだ。 .モンブランのあとがき 12 最高峰モンブラン の あとがき  唯一Qから評価をもらえた4k。 Qに言わせると4kはこの一本で終わっているそうです。とほほ。  これを書いたのも、ケーキを買うたびにモンブランを頼む私にQが「モンブランを題材に一つ書いてみたら」と言ったのがきっかけです。  自分が美味しいと思うものをいかにして人様に美味しそうだと感じさせるか、これをテーマに書いてみたのですが、出来上がってみればあんな感じでした。とほほ。  プリンもパンも実話です。  昨日もモンブラン食べてしまった。  美味しかったです。4kのモデルになった店はケーキが美味しく、Qにはなるべく控えて欲しいのですが、自分が食べたいこともあって、ついつい買ってしまいます。  今でもモンブランを良く食べていて、Palm用ソフトの「ぐるグル」にモンブランデータベースをつけているのは私です。  いつか、東京は自由が丘にあるという元祖のモンブランというのを食べてみたいものです。  「親ばかパーム」参加申し込みをしたら、代表のまっささんからメールを頂きまして、その中に「4k読んでからモンブランを食べた」という話があったので感激したのは良い思い出です(もう思い出かい)。 .4k14:それでも鯉は鯉 それでも鯉は鯉 先日、工業会の会合に出席する用事が発生した。都合で出席できなくなった上司の代理である。 工業会とは。普段は敵同士であるはずの競合メーカーが、この時ばかりは業界全体の為に活動を行うという建前の下に集まる、まあそういった場なのであった。 退屈である。だがとても面白い。 この会合で決まる方針というのは当然の如く無難な決定であり、刺激に欠けるものである。ところが他メーカーの人間がどんな事を考えているか、一端に触れられるだけでも楽しいのだ。 こんなやりとりがあったとする。 「工業会として、当然ここまでの対応をしておくべきである」 「業界の足並みを揃えないと市場から無視される可能性もあるではないか」 この場合は先に発言した方が議題に関わる技術において先行しているメーカー、後に発言した方は遅れをとっているメーカーであることがわかってもらえるだろう。 工業会での決定は大概、大手の意見中心にまとまっていくか、皆が妥協した結果が決定事項になる。まあ世の中そんなもんである。 この業界自体がそれほど大きなものでもなく、競争も激しいので例に挙げたようなやりとりは少なく、至って健全なやりとりが行われているとは思う。一応言っておかないとね。 面白いのは会議終了後の飲み会である。ここでの情報は、信頼性はともかく新規性は高い。会議終了後は業界トークで盛り上がるのだ。でもひょっとしたら特殊かしら。この工業会。 狭い業界だけに話は弾むのだった。また、メンバーも皆さん酒が好きなのだった。 業界の人間にしか判らぬ愚痴をお互いにたれあったりする。 たまに少々汚い話も行なわれる。 恋は強しという話になった。 嘘だ。強いのは鯉だ。 「いやあ、鯉って強いよ。死なないんだよね」 何だってこんな話なのか。 「うちの会社の前に鯉飼ってるんだけど、死なないんだよなあ。あいつら」 「そうだね。鯉は強いよ。鯉は」 どういう事か。某大手食品会社の例を挙げよう。色んな事であんな事やこんな事になった乳製品製造会社の事は皆さんご存じの事かと思う。ええいコトコトうるさい。 某大手乳製品製造会社は、大昔にも大きな事件を起こしており、その時に当時の社長は会社の前に池を作らせ、そこに鯉を飼ったのだという。そしてその池には工場からの排水を流したのだそうだ。 アピールである。判りやすい。うちの工場は清潔でございますよ。変な菌とかも入っていませんよということが一目で判るという訳である。それと同じ行為は色々な会社(もちろん工場を持つメーカー)で行われているということなのだ。 私の目の前で喋っている某化学製品メーカーの人も自社で飼っている鯉の話をしているのであった。化学製品だけに、うちの工場の排水に有毒物質は入っておりませんというアピールであろう。 ところが、話はいかに自分の会社の水がきれいなのかをアピールしているわけではないのだった。鯉の生命力のすばらしさについて皆語りあっているのである。 「いやあ鯉はねえ。汚泥を食って生きてるんだよ」 失礼な話である。 「いや、金魚の方が強いよ」 おや、お宅では金魚を飼育されていますか。 「鯉は死んだけど、金魚は生きているからね」 鯉は死んだのか。御社の排水はやばいのでは。 「いや、鯉はでっかくなったら強いんだよ。うちの会社のでっかい鯉は生きてるもん。ちっちゃいのは死んだかもしれんけど」 やはりあなたの会社の排水もやばそうだ。 「いやあ、でも金魚もでっかくなるよ」 大きさの話では無かったと思うが。 「うちの鯉なんかこんなにでっかいのがいるんだよね」 大きさの話になっちゃったよ。 「飼うならアユとかヤマメとか飼えばいいんだよ。一発で死ぬから」 おお。強気なんだか弱気なんだかわからないメーカーが出てきた。 「ああ。それは死ぬやろ。」 ああ。やっぱりあなたの会社の排水は危ないんですね。 「確実やな」 やはり御社もですか。 「やっぱり鯉だって」 「いや金魚だよ」 強い魚を選んでどうする。 せっかく、話を振られたら「うちの工場の排水では山椒魚が泳いでますよ」くらい言ってやろうと思っていたのに、話が振られることは無かった。残念だ。 実際私が勤めているのは本社ビルであり、魚は飼っていない。だが工場には池があり、そこには鯉がいる。おぼろげな記憶だが、小さな鯉もいたような気がする。 そんなわけで今度工場に行くときには小さな鯉がまだ生きているか確認し、もしできればこっそり山椒魚を放流しようかと思ったのであった。 ちなみに、わが社の工場から出る排水は鯉のいる池には入っていない。ただ飼っているだけなのだった。無意味じゃーん。それってー。 いや、某乳製品大手の鯉も事件を防ぐことは出来なかったのであり、どのみち無意味なのだ。 .鯉のあとがき 14 それでも鯉は鯉 の あとがき  自分では一番テンポよく書けたと思っている4kです。 会話の内容は実話です。99%本当です(言い回しなどは若干違うでしょう)。  ブラックな感じに落とせて良かった。書いてみてうまく収まったことに気がついた。そんな感じですな。  ちなみにこの工業会。書いた当時は上司の代理で出席していたのですが、いつの間にか私が出ることになっていたりします。  私の会社がいる業界というのは、比較的環境負荷が少ないはずなのですが、何故か世間からは良く攻撃されているような気がします。だから工業会後の飲み会などで愚痴のたれ合いになってしまうのかも知れません。 .4k17:理髪店と美容室 理髪店と美容室 散髪に行くことにした。引っ越しをしてから散髪は2回目なので、まだ馴染みの店など無い。 少し迷ってから、一番家の近くに位置する理髪店へと向かう。美容室と呼ばれる範疇に属する店に行きたいところであるが、わざわざ車で出掛けて店を開拓する程の行動力源(以下ガッツ)が無かったのだ。小心者の私は理髪店よりも美容室で大量のガッツを消費する。 さて、理髪店と美容室との違いはなんだとお考えだろうか。答は簡単、「髪の毛を洗う時にうつぶせなのが理髪店」で「仰向けなのが美容室」である。これで決まり。 しかし、私にとってはこの違いなぞどうでもいいことであって、どちらに行ったものか非常に迷う理由は別の所にあるのだ。 理由1:理髪店はなんだか野暮ったい(だから美容室の方が良い) 理髪店はこういってはなんだがやはりどこかお洒落さが足りない様な気がする。行けるものならば私もお洒落な美容室の方がよいのだ。 第一、理髪店の客層には圧倒的に子供と老人が多いではないか。 理由2:美容室はなんだか恥ずかしい(だから理髪店に行ってしまう) 理髪店も充分に恥ずかしいのだが、美容室は更に恥ずかしい。「こんな私でもいいでしょうか。この店入って本当にいいのでしょうか」と問いたくなる雰囲気である。これを打ち破って店に入るには相当量のガッツが必要である。 その点理髪店(特にいきつけの)なら 店に入ってからでも、 「どうします?」 「短めに」 これでよい。ガッツ消費量は最小限で済む。 理由3:美容室には指名制度がある(だから美容室には行きにくい) 店に入ると「御指名の美容師は?」とか聞かれちゃったりするのだ。「いません」と答えるのにも少々ガッツが必要だ。 理由4:美容室は注文を細かくしなければならない(だから美容室ではガッツが必要) 美容室の雰囲気だけで既にびびっている私が、こと細かに髪型の注文など出せる訳がないではないか。そんなに沢山ガッツは無い。 そのかわり初めて行く理髪店で「適当に」などと答えて店主(きっちりとした7:3分けのオトウサンである場合が多い)に任せておいて、うっかり寝たりなんかしちゃうと、家に帰ってからQになんと説明しようか、職場ではなんと思われるであろうかなどと要らぬ心配をせねばならぬ様な髪型(きっちり)に仕上がった自分と寝覚めに再会とあいなるのだ。 てなことを考えているうちに近所の理髪店に到着。 いかにもといった風情である。「この町内のお得意様相手に地道にやっている店ですオーラ」が店全体に漂っている。こういう理髪店には罠が待っている。 「いらっしゃい……ませ?」 嗚呼やはりそうだ。私を客として認識するより先に「誰この人」という反応が先に出てしまっている。気まずい。 今更無かったことには出来ない。気を取り直して私を店の中に案内する店主は、やはりきっちりとした7:3分けのオトウサンだった。 家族でやっている店のようだった。きっちり7:3オトウサンがメインのカットをし、ちょっと思い切った髪型のオカアサンがシャンプーやカミソリを担当するという黄金パターンである。但しこの店にはもう一人、おおよそこの店とは雰囲気を異にする茶髪のオニイチャンがいた。息子さんだろうか。チャンスだ。このオニイチャンにカットしてもらうというのはどうだろうか。見た感じ私より若そうだし、何だかちょっとカッコイイようにも見える。ひょっとしてセンス良かったりして。 ……。 悲しいかな、理髪店には指名制度がないのだった。私の髪をカットするのはキッチリ7:3オトウサンに決定したようである。 「さて、どうします?」 「えーと、あの、適当に」 言ってはならない一言を言ってしまった。これで決まりだ。家に帰ってからQになんと説明しよう。職場ではなんと思われるだろうか。 いやまてよ。 それは救いを求める私の脳髄が叩きだした一つの記憶であった。どこで聞いた話だったっけ? −−漂流生活一ヶ月を経て無人島に漂着したあなたは、先客として漂着していた2人の理髪師に出会いました。一人は髪も髭も伸び放題、もう一人は綺麗に整えられていました。さてあなたはどちらの理髪師に髪を切ってもらいますか?−− そうじゃん。このキッチリ7:3オトウサンの髪は、少なくともオトウサン自身がカットしてるのではないはずじゃん。 急に東の人になりながら自分を奮い立たせていた私なのでした。 結果。 そこそこ髪の毛を短くして、なおかつ一般的に見ておかしくない髪型であればよいと思っていた私にとっては、まあ充分であった。 しかし理髪店というところは何故ここまで髪の毛に色々なものを擦り込み、何とも勘弁して下さいな感じにキッチリとセットするのであろうか。最終的な仕上がりはオッサン臭いひどくキッチリとした髪型であり、やはり帰宅後Qに「どしたん?その頭」とか言われてしまうのであった。 .理髪店のあとがき 17 理髪店と美容室 の あとがき 「理髪店と美容室の違いは、剃刀が使えるかどうかだろう」というツッコミを頂き、「嗚呼、読んでくれている人がいるのだ」と感激した4k(筋違い)。  今でも性格が変わる訳でもなく、相変わらずガッツも足りないので同じような事を繰り返しております。 ですが、そろそろ思い切ってお洒落な格好良い店に行って格好良くしてもらっても良いのではないかとも考えております。 そうなったら4k一本くらいのネタにはなるでしょう(病気だ)。 .4k28:魔神と不敗神話 魔神と不敗神話 「ねえ、お願いがあるんやけど」 私とST君に向かってお願いする人がいるのである。OMさんという女性だ。 「このフタ開かへんねん」 接着剤サンプルが入ったポリ容器である。OMさんは中の接着剤が欲しいのだが、フタが開かないのだった。 容器のフタは手で掴むには少々大きめであり、誰が閉めたのやら接着剤まみれで固まってしまっている。おまけにフタはネジ山に対して正しく閉められておらず、斜めになっている。 これは反則技が二つ複合された強敵であるな、やり甲斐あり。そう思った瞬間、私に魔神が憑依した。 「フタ開け魔神」である。 「フタ開け魔神」が憑依した私はフタ開け魔人となり、フタ開けに没頭するのであった。ちなみにフタ開け魔人としての私は不敗であり、今までに開けられなかったフタは無いと豪語している。なんのことはない、開くまであきらめないというだけの話なのであるが。 さてフタ開け魔神に憑依され、フタ開け魔人と化した私は力任せにフタをねじ回そうとする。が、簡単には開かない。 「この容器壊してしまってもええねんけど」 OMさんが言う。ところが魔神は耳を貸さない。美学に反するというのだ。不敗神話も途切れてしまう。 力技に固執する魔神は次に斜めになったフタを上から押さえつけて無理矢理ネジ山にはめ込もうとする。金属製のフタであれば不可能な話であるが、プラスチック製(おそらくポリプロピレン)のフタであるからこのような行為が可能なのだ。 「フンガー」 気合い(?)一閃、フタはブリっという音とともに半分ほどネジ山に収まった。 「おー」 OMさんが感心している様子だ。魔神も満足したようで、またしてもフタを回しにかかる。 ところが、フタはびくともしない。フタの縁で固まっている接着剤がフタの回転を阻害しているようだ。力業ではいかんともし難いようだ。 そのとき私の中に新たな魔神が憑依した。 「ほじくり魔神」である。 ほじくり魔神は隙間や溝などに詰まった何かをほじくることに異常な執念を燃やす魔神である。 さて「ほじくり魔神」が憑依した私はほじくり魔人となり、フタの縁で硬化した接着剤をほじくる作業に没頭するのであった。 マイナスドライバーでもってあらかた接着剤をほじくったほじくり魔神は満足した様子で私の中から去っていき、再び勢いを取り戻したフタ開け魔人がフタに取り付いた。 「うおりゃあああ」 気合い(?)一閃、フタはベリベリという音とともに回転し、見事フタは開け放たれた。 「おおー」 OMさんが感心している様子だ。魔神も満足したようで、私の中から去っていった。 以上の様な出来事があったわけだが、これはほんの一例であり、様々な者達が私の行動に影響を与えるのだ。 休日。家の掃除が行われるわけであるが、その一環としてQが私に風呂掃除を依頼したとしよう。 「ねえ、お風呂掃除してくれる?」 私の体内に常駐している謎の生物、通称「めんどくさいこちゃん」が私の自立神経系に働きかけ、動きを鈍らせる。だがこの場面ではなんとか体が動き、私は風呂掃除に取り掛かる。 スポンジに洗剤を付けてあちらこちらをこすってみる。何気なしに水栓金具をこすった時、ガンコな汚れも念入りにやれば落ちてしまう事に気が付いてしまった。 そのとき私の中に新たな魔神が憑依した。 「磨き魔神」である。 磨くという字と魔という字はPalmの8ドットフォントで見たら見分け辛いなと今気付いたとかそういう話はどうでも良いのだ。磨き魔神に憑依された私はひたすら浴室内のあらゆる場所を磨きまくってしまうのだった。 磨き魔神の勢いはとどまることを知らず、翌日の私は接着剤を塗付するロール機械を磨いてしまうのであった。 ところが、磨いても磨いても落ちないものがある。こびりついた接着剤とかそういったモノである。己の仕事は終わったとばかりに去っていく磨き魔神だったが、すかさず私に憑依した者がいた。 「はつり魔神」である。 「ほじくり魔神」と「磨き魔神」、「はつり魔神」の3人は実は兄弟であったとかそういう話はどうでも良いのだ。とにかく「はつり魔神」に憑依された私はヘラでもってこびりついたやつをガリガリとやってしまうのだ。夢中になって。 こいつら魔神達に操られるように突然目の前の行動に没頭することのある私であるが、基本的には飽きっぽいのであった。 私の体内に常駐しているなぞの存在、通称「あきちゃん」のせいだ。 「あきちゃん」は私の脳内麻薬量を制御し、行動を抑制する。同じことを長く続けていられないのはきっとこの「あきちゃん」のせいなのである。 とかなんとか訳のわからないことをいって責任転嫁する癖のある私はきっと「てんかくん」とか「責任逃れ魔神」に憑依されているのだ。 そうだそうだきっと僕のせいじゃないんだ。 .魔神のあとがき 28 魔神と不敗神話 の あとがき  様々な魔神達があなたを狙っています。  会社の同期MWは夏になると「スイカ魔神」に取り憑かれます。大好きらしいです。スイカが。  私には見えない「スイカ魔神」はどんな姿なのでしょうか。やはり緑色でシマシマ模様の魔神(怖い)なのでしょうか。  20年近い憑き合いになる、私の「フタ開け魔神」は上腕だけが異常に太く発達しており、その他の部分はヒョロヒョロしてます。腕組みしてこっちを見て薄笑いを浮かべております。寄ってきても駄目だよ。無いよ。開ける蓋は。  「ほじくり魔神」とも長い憑き合いになります。ひょっとしたら「フタ開け魔神」よりも長いかも知れません。  小学生の頃、机の表面にコンパスの針で穴を開け、毎日少しずつ穴をほじくり続けて机の天板を3ヶ月ほどかけて貫通させたのは私です。ああ、あのときから魔神が憑いていたのかって授業はどうした授業は。  今のところ「あきちゃん」は私の4kにまで手を出してません。おかげでもう少しの間文章を書き続けていられそうです。 .4k30:新ライダーにお願い 新ライダーにお願い〜PDAって何?って人ごめん 新番組の季節である。 なんでも今度の仮面ライダーは携帯情報端末(スマートフォン)をお持ちだとか。うーん、なんだか弱そうだ。 まだ一度もテレビで見たことがない新ライダーであるが、携帯情報端末と聞くと、色々やってほしいことがあったりする。 以下、勝手な私の想像である。 主人公である仮面ライダーは端末(カラー液晶搭載)を駆使して怪人と戦うのだ。まずは怪人シカオトコが襲ってくるのだ。 「もきゅー」 「む、むう。怪人め。とにかく変身しなければ」 主人公は木陰で端末に手をかざしながら何やらこそこそやっているのである。そう、端末に搭載されている反射型TFT液晶は直射日光の下では著しく視認性が落ちるのであった。意外に古いな。 「(なんとか変身)とおっ」 「もきゅきゅー」 シカオトコ、意外に強いのである。ピンチだ仮面ライダー。 「あれを使うしかない」 そう、先日謎の男から手渡された新たなミッションメモリー。このメモリーカードを端末に差し込み、プログラムを端末にインストールすれば、新たな必殺技が使えるようになるのだ。 「(装着)」 ……。 メモリーカードを認識してくれないのである。ピンチだ。あわててメーカーのサポートセンターに電話するのである。 ……。 電話が込み合っていてサポートセンターにつながらないのである。ちっ、メーカーめ。わざとじゃないのか。よくよくメモリーカードを見てみるとバージョンNo.が。 ベータ版である。 まだ不具合の検証が行われていない必殺技なのであった。自己責任である。 「もきゅきゅきゅー」 ばきっ。あー。端末の液晶を割られてしまうのであった。もう一回サポートセンターに電話するのである。 今度は一発でつながった。何故だ。 「液晶割れちゃったんすけど」 「液晶破損の場合、交換で3万円頂くことになりますが」 むう、高い。新品買えそうな値段ではないか。しかし背に腹は買えられない。 「すぐに代替機を手配してもらえませんか」 「それはできません。端末をこちらに送って頂いてから一週間ほどお時間頂きたいのですが」 それでは目の前のシカオトコと戦えないではないか。こうなったら仕方がない。ポケットの中にある予備の古い端末を使うのである。 ちなみに予備の端末、OSも古くモノクロ液晶、乾電池駆動の渋いヤツなのだった。 古いOS、意外に動作軽快。シカオトコをなんとか撃退したライダーなのだった。 今度は怪人ピイチャンが現れるのだ。 「ぴぴぃ〜」 代替機(半透過型TFT液晶搭載。これで直射日光でも随分見やすくなった)も手配済み。あれからいくつかのメモリーカードも導入したライダー。万全である。 「ふんっ。やぁ。とおっ」 強い。ライダー強い。後はフィニッシュの必殺技を放つだけである。 ……。 端末のバッテリーが切れてしまうのであった。ゲームのやりすぎが原因か。出かける前に充電しておけ、ライダー。またしても乾電池駆動の旧機種でしのぐライダーなのであった。 そして今度はバックアップを取っておいたメモリーを紛失した主人公。そこに主人公と全く同じ能力を持ったニセライダーが現れるのだ。 「む、むう。俺のバックアップを使ったな。個人用のデータ(内緒の携帯Noとか?)も入れてあったのに」 どうやら少し後ろめたいところもありそうな主人公なのだった。ならばパスワードロックくらいかけておけ、ライダー。 悪の秘密結社(今回そういう設定かどうかは不明)との対決も大詰め。ライダーは悪の首領と直接対決するのである。 悪の首領はその財力をいかして強力な情報端末を入手していた。 通信カードスロットやメモリーカード用スロットを当然のように備え、さらにAV端子でテレビとつないだり出来る上にUSB端子もついている。WORDやEXCEL、POWERPOINTのファイルやPDFファイルを変換することなしに閲覧可能で、あろうことかJR東日本の運賃プリペイドカード残高確認まで出来てしまうという全くもって関西人をバカにした重装備マシンなのだった。だって大阪には(他の地域にも)そんなカードはないじゃないか。 まあ、全て戦闘には関係ない機能なので結局ライダーが勝つわけだが。 .ライダーのあとがき 30 新ライダーにお願い の あとがき  今までの4kが「ヒット」であるならば、間違いなくこれは「ホームラン」であると言える一本。Palmユーザーにほぼ限定されますが。  ところが、アップした当時の日記を見てみると自信の無さがにじみ出しており、書いた本人の感想と読んで下さっている方々の感想は全く違うものだということを思い知らされることになっております。  逆に本人は良いと思っていても全く反響が無かった奴とかありますけど。そっちの方が多いか。  現在お休み中の堀内さん”シェクまくパーム”にて、仮面ライダーとPDAの話題が出てきたのがきっかけで、書き始めると最後までスムーズにいけました。それだけ今のPDAに不満があるということなのでしょうか。  Palmな方はすぐにお解りかと思いますが、最後に出てくる悪の首領が持っているPDAはNZ90がモデルです。  ちなみに、最初に主人公が持っているPDA(直射日光下では表示が見えない)はvisorPrism、バックアップのモノクロマシンはvisorDX。後日主人公が入手した視認性の良い液晶を搭載したマシンはT650Cをイメージしています。  最後はクリエ対決となった訳ですが、別にSONYが嫌いな訳では無いですからね。念のため。  内容が内容なので、Palm関係のサイトから反応あり、リンクして頂いたのはとても良い思い出です(もう思い出か)。  このお話をサイトで紹介し、リンクして下さった方々。ありがとうございます。 .4k32:4kのできるまで〜社会科見学 4kのできるまで〜社会科見学 「おはよう、おねえさん」 朝からパソコンに向かっている女性に向かってピンク色の生物、カバとも犬ともつかぬ不思議なモノが話しかけた。 「おはよう、モコタン」 女性が答える。そうか、このピンク色のはモコタンという名前なのか。 「どうしたの。朝からパソコンなんか」 やはり毎朝やっている訳ではなさそうだ。 「うーん。ちょっと読んでるサイトがあるんだけど、暇つぶしにもならないんで、ブックマークから外しちゃおうかと思ってる所なのよねえ」 モコタンが画面を見るとそのサイトは「はらたまhome」である。由々しき事態である。ブックマークから外されようとしているのである。 「お、おねえさん。じゃあこのサイトがどうやって作られているか見に行ってみようか」 「え? それ面白そう。行ってみようよ、モコタン」 とりあえずブックマークの件は保留となったのであった。 場面は変わる。 「ここがはらたまhomeを開発、製造しているところだよ」 「へええ、結構というか予想通り小さなところねえ」 入り口前に噴水がある白い建物なのである。 無意味に白衣姿のおねえさん、モコタンと一緒に建物に入っていくのであった。 「ここが開発部だよ」 「なんかお兄さんが暇そうにしているわね」 「ちょっと話を聞いて見ようよ」 暇そうなおにいさんに話を聞いてみることに。 「やあ、ようこそ開発部へ」 「ここでは何をしているの。おにいさん」 「『はらたまhome』のメインコンテンツである『4k』の構想を練っているんだよ。モコタン」 何故名前を知っているのか。まあお約束なので気にしてはいけないのである。 「4kはどうやって作られるの?」 「我々開発部のメンバーが通勤電車の中で思いついたバカバカしいことをここにある携帯情報端末にチョイチョイと書いておくのさ。とにかく何でも書いておく。そしてその『ネタ』を製造部に渡すんだよ」 「そうなんだあ。暇そうに見えて結構頑張っているんだね」 「……やっぱり暇そうに見えるけど」 「そ、それじゃあ次に行ってみようよ。おねえさん」 場面は変わる。 「ここが製造部だよ」 工場なのである。 「『はらたまhome』って工場で作ってるの?」 「これは視聴者にわかりやすくするためのイメージだよ、イメージ」 「何視聴者って」 モコタン。答えてくれないのである。 「さあ、中に入ってみよう」 工場の中ではベルトコンベアに乗った紙切れが続々と流れているのである。 「これが原稿だね」 「結構たくさんあるのね。どれどれ。あれ? 『進退伺いについて』。『よっきゅー』。『ライターズ・ハイ』全然進んでないのもあるわ」 「おねえさん、あそこにいるオジサンに聞いてみようよ。」 溜まった原稿の前に立ち、何やらやっているオジサンがいるのである。モコタンが話しかける。 「なにをしているの? オジサン」 「やあモコタン」 やはり名前を知っているのである。どういうことだ。気にしてはいけない。 「ここは検査ラインだよ。読者の方々に楽しく読んでもらえるように原稿をある程度寝かせて品質をチェックしているんだ。」 「へええ〜」 「どういう基準で原稿のチェックをしているんですか?」 おねえさん、結構まともな質問をするのである。 「うん。時事ニュースを題材にしているようなものについては寝かせているうちに時期を逸してしまう場合がある。そういう原稿はボツになる。他にも、書いているうちに本人ですらあまり面白くないと感じられたものについてもボツとなる。あと、短すぎるものなど4kにはならない原稿は日記の方に回すこともあるね」 「それって、4kのできそこないが日記になるってこと?」 「い、いやそれは……」 「お、おねえさんあまり痛いとこついたらだめだよ」 そうこうしている横で没原稿が自動でシュレッダー処理されているのである。 「すごいアウト率だね」 「一応厳選してアップしているんだよ」 「その割りにはショボイ内容のような気がするけど」 「(ギクギク)そ、そんなことはないよ。おねえさん。もっと厳選してアップしたいところだけど、更新頻度があまりに低くなると折角読みに来てくれた人たちが離れてしまうんだ。趣味でやってても結構厳しい世界なんだよ」 「それって基準を下げてアウト率を調整している訳ね。メーカーとしては最低の選択よね」 「お、おねえさああん」 場面は変わる。 お姉さんの部屋なのである。 「お、おねえさん。どうだった? 殺風景なサイトでも作るのには幾つかの工程を経て更新されているんだよ」 「そうね。読んでるときは一瞬で斜め読みだけど、書くときにはもう少し時間がかかってるとこがわかったわ」 な、斜め読みって……。 とりあえず今日のところは「ブックマークから削除」を回避したのである。 が、モコタンの苦労は続くのであった。 .モコタンのあとがき 32 4kのできるまで〜社会科見学 の あとがき  モコタンのモデルについてご存じの方も多いかと思いますが。え? 少ない?  本文中でベルトコンベアに乗って流れていたネタ、『進退伺いについて』、『よっきゅー』、『ライターズ・ハイ』ですが、これらは当時書きかけていた原稿のタイトルなのです。ところが4kどころか日記にも反映されることなく記憶の闇へと葬り去られました。検査ラインではねられて工場内のシュレッダーにかけられてしまったということでしょうか。  この4kを書いた後、モコタンとおねえさんのコンビをそのうち別の4kでも使ってやろうと思っていた(シリーズ化ですね)のですが、なかなかその機会に恵まれません。モコタンもおねえさんの相手をするのに疲れてしまったということでしょうか。  シリーズ化構想とは別に、モコタンの絵でも描こうかと考えたこともあります。  もともとトップページが殺風景であのような見栄えであるため、かわいいイラストでも貼り付けようかと考え、手書きのヒヨコの絵を貼り付けていた時期があります。クリスマスの時期にはサンタの格好させたりして。  ですが、ガミラス星の絵で実力が知れてしまっている通り、私には画力が無いためかえってみすぼらしくなっていたことに気づき、絵はやめました。  そこで突然ですがモコタンの想像図を募集します。ご応募頂いた方にはもれなく「はらたまhome」のトップページを飾るという特典が与えられます。画力は問いません。  ご応募頂いたモコタン想像図は、後日設置される「モコタンギャラリー(仮称)」にて当分の間保管されます。 「ピンク色の生物、カバとも犬ともつかぬ不思議なモノ」としか書かれていませんが。  他力本願かい。 .4k35:ケイ子さんのこと ケイ子さんのこと いつものようにテレビを見ていた。 いつものニュース番組で毎日のように伝えられている悲しいニュース。 殺人事件があったらしい。被害者の家族が記者会見で何か喋っていた。 僕はそれをいつものように見ながら隣でテレビを見ているケイ子さんに話しかけた。 「悲しいニュースだね」 「そうね。悲しいニュースね」 ケイ子さんは言った。 ニュースの後、この曜日はドラマを見ることにしている。悲しいテーマを扱ったドラマのはずであったが、どうにも感情移入出来ない。母親役の女優がどうにも下手なのと、子役が上手すぎるところに原因があるような気がする。脚本は良いと思うのだが。 「なんだかわざとらし過ぎて悲しくなれない」 「ドラマを見て無理に悲しい気持ちというものにならないといけないの?」 ケイ子さんは悲しいという感情を持たない。いや、悲しみだけではなく全ての感情を持たないのだった。人間そっくり(女性を模して)に作られているが、会話機能を持つ家事ロボット(アンドロイドというのか?)なのだ。会話を成り立たせる為に必要な疑似感情を持ってはいるが、あくまで補助的なものだ。先のニュースに対して悲しい、と言ったのは僕の話に調子を合わせたか、ニュースの内容が殺人事件であったという状況から疑似感情を構成した結果だろう。 「そんなことはないよ。出来の良くないドラマを見て、無理に悲しくなった振りをすることは無いんじゃないかな」 「じゃあニュースでも?」 ケイ子さんは悲しいという感情について多少興味を持っているようだ。 ケイ子さんにも興味という概念は存在する。興味のあるものについては積極的に情報を集めようとするし、興味が無い話題については聞きながしているように感じられる時がある。これにもちゃんとした設計上の理由があるらしい。父から聞いたのだが。 ユーザーと自然な、広がりのある会話を行う為には豊富な知識とある程度の個性が必要となる。そのためには様々な場面で情報を採り入れ、「個性」を作りあげていくことが重要なのだが、人工知能ともなれば扱う情報は膨大なものであるため、全方位に知識を収集していく訳にはいかない。そんなことをすればあっという間に記憶装置の容量をオーバーしてしまう。そこでロボットの「興味」にある程度偏りを持たせ、情報の取捨選択を行う設定をしてあるということらしい。その結果、時間とともに世界で一人(一台?)の個性らしきものが確立されていくように設計されているのだ。 ケイ子さんは犬や猫よりは魚、野球よりはサッカー、そして人間に興味を持っているようだ。そしてロボットである自己の存在についても。 「ニュースは本当にあった出来事だからね。ドラマとは違うさ」 「でもニュースだからって無理に悲しむ振りをすることは無いと思うわ。同じようにテレビに映ってるし、ニュースに出ていた被害者の家族も、私にはそんなに悲しそうに見えなかった」 「被害者の家族は悲しいに決まってるじゃないか。それを見て僕らも悲しくなるんだよ。ドラマとは違う」 「テレビに移っている時点で現実かどうかの判断は付けられないんじゃない? ニュースも嘘かもよ? それでも悲しくなる?」 「ニュースが全て嘘かどうかなんて誰も考えないよ」 「テレビが本当の話だと言っているから、皆が悲しんでいるから、だから悲しいだなんてバージョンの低い私の疑似感情と対して変わらないんじゃない?」 時々ケイ子さんは妙な事を言う。またバグだろうか。 「悲しい時って人間は涙を流すものなの?」 「流さないときもあるよ」 言いながら僕は思った。最後に泣いたのはいつだっただろう。よく思い出せない。それほど長いこと泣いていないということか。 ケイ子さんが言う様に、僕は本当に悲しい気持ちになっていないのだろうか。皆が悲しんでいるから悲しくなっているように感じていただけなのだろうか。 話している間にケイ子さんの動きが急に鈍くなり、そして止まった。これはバグだ。ケイ子さんはシステムにどこか欠陥が生じて、時々自動充電機能が働かなくなる事がある。幾つかパッチ(修正用プログラム)をあててみたが、まだうまく行っていないのだ。 僕は意外に(?)重たいケイ子さんを向かい側にある彼女専用の椅子に座らせた。これはクレードル(と呼ばれる充電用の椅子)である。本来ならバッテリー残量が少なくなったらケイ子さんが自分で椅子に座って充電を行う様になっているはずなのだが。 そのとき玄関のチャイムが鳴った。父が帰宅したのだ。 玄関に行き、カギを開ける。 「お帰り、父さん」 父は部屋の中に入るとまたか、という様な表情をした。 「ケイ子はまた充電しなかったのか」 「うん。なかなか修正もうまく行かなくて」 「まあいい。気長にやるさ。それよりおまえは自分の椅子に座っているんだろうな。ケイ子がこんな調子なんだからしっかりたのむぞ」 「わかってるよ、父さん」 僕は父の言葉に調子を合わせた。 時々父も妙な事を言う。 .ケイ子さんのあとがき 35 ケイ子さんのこと の あとがき  書いた後で、「引き返せないところに来てしまった」と少し後悔した一本。  大真面目に書いたSFを人様に読んでいただこうなんて、そんな大それたしかも恥ずかしい行為を私が出来るようになるとは思っていませんでした。結局アップしましたけど。  当時の日記には「勢いで書いた」とタイトルを付けてましたが、実際は少しばかり違っていて、「それなりに時間をかけて書き上げてアップするときは勢いで」という感じだったというのが本当のところです。  これを書くきっかけは私の、私自身に対する疑問でありまして。 本文中の「僕」と「ケイ子さん」の会話にあるような内容は私自身の葛藤というか、何か苛立ちのようなものでもあります。  ニュースから得られる情報、とくに悲しいニュースに対して素直に反応出来ない自分はどうなんだろうと。所詮他人事だと考えているのかと。  そこから一気に飛躍して、人間の感情、特に「悲しい」という感情って一体何なのよ、とか。  そういったことを考えてしまった訳です。思い切ってQに話をしてみたら思い切り悲しそうな顔をされました。嗚呼話すんじゃなかった。 (ちなみにこの4kはQから「意味がわからない」と酷評されています)  この「感情って何よ」については永遠のテーマっぽくて、時々思い出したように考え込むことがあります。44本目「ホントウのオワリ」にもそれが根底に流れてます。表のテーマは違うのですけど。 .4k43:たぬきはraccoon たぬきはraccoon 立ち食いそば(うどん)は良い。 なにより美しい。 駅のホームにある奴など、電車の時間を気にしながらすばやくエネルギーを補給せねばならないというニーズに対応して、様々な機能が追及されている。 早い。 うまい。(くない場合もある) 安い。(くない場合もある) そんな立ち食いそば(うどん)店に入った時の話である。 今日は東京出張であり、用事(講習)を終え、帰るところだ。帰りが遅くなる為、新幹線が来るまでに何か食べねばと考えたのである。 しかも麺大好きな私なのだ。 そんな立ち食いの店で。 紳士がそばを食している。 高そうなかばんを足元に置き、センスの良さそうな(本当に良いかどうかはセンスの悪い私にはわからない)コートを脱ぐこともなく、直立不動で姿勢よく、脇を絞めた美しいスタンスで構え、慌てず騒がずサラサラと軽快にそばを食している。 どことなく貧乏臭い(失礼)雰囲気漂う立ち食いの店であるが、ここまでスマートに利用されると店自体の雰囲気も一変する。 どこぞのコーヒーショップにて、折角の店の雰囲気をぎゃあぎゃあ騒ぐ連中に打ち壊しにされることを思えば何と落ち着いたこの空間。 もちろん無用に長居する客などいない。ここは駅なのである。立ち食いの店なのである。 そこ行くと私なんぞは暖かいものを食べるとすぐ汗をかいてしまうので、上着は丸めてカウンターの下にある棚に詰め込んである。 今日受けた講習のテキストやら資料を雑多に詰め込んだユ二ク□鞄はヨタっという感じでカウンターにもたれかかっている。 万が一電車に乗り遅れてはかなわないので、時計がわりに携帯電話をカウンターの上に乗せ、横目で見ながらせかせかとそばをかきこんでいる。まだまだ修行不足である。 そんなよくある風景に来客あり。 いや客は入れ代わりに来る訳だけれども、今回の客は黒人のオトウサンだ。しかも日本語を喋ることが出来ない様子。 なにやらカウンター内のオッチャンオバチャンと話しているが、オッチャンオバチャンは「No,No」と繰り返すのみ。 オトウサンの方も要領を得ず、「Only soup? Only soup?」などと聞いていた様だ。 横では我々がそばやらうどんを食しているのだから、ここが「Soup Bar」で無いことは明白であるし、第一そんなものは我が国には無い。いやどっかにあるかも知れないが少なくとも駅には無い。 あれと思ったときには紳士も立ち去った後であった。さすが紳士。去り際もさりげない。 感心している場合ではなく、何を聞いても「No」しか言われなかったオトウサンもあきらめてどこかへ行ってしまった。 さすがに首都の新幹線駅ホームの立ち食いそば(うどん)店なのだから、オッチャンオバチャンに英語を覚えさせないまでも、食券の自動販売機の操作説明とか、おすすめメニュー(せいぜい2、3点だし)の英語表記くらいはしてみてはどうかと思った次第。 さっきのオトウサンも、立ち食いそば(うどん)店に立ち寄っているんだから、お腹すいてたんだろうに。 その前に。 もしも私に英語力があったら。あのオトウサンにStanding Japanese noodle(正しくはどの様に言えば良いか不明)の魅力を伝えることができたのに。 ヘイミスタア。 ジャパニーズヌードルは、このディスポーサブルチョップスティックスをエレガントにパキイっとやるところからスタートアルよ。 セブンテイステッドジャパニーズスパイス(※1)はレッドペッパーベースだからかけすぎにビーケアフルよ。 ヘイミスタア。 ジャパニーズヌードルには大きく分けてイースタンスタイルとウエスタンスタイルがアルよ。 ウエスタンスタイルならフォックスヌードルがメジャーね。 ウエスタンジャパニーズはイースタンスタイルをバカにしてるね。スープがストロングだってだけで(※2)。ワタシに言わせればヘンケンね。どっちもデリシャスよ。 えーとたぬき。たぬきって何て言うんだっけ。 えーとにかくウエスタンスタイルにはえーとタヌキソバヌードルというのが無いのよ。 あれ。そばとうどんって英語では何て言うんだろう。 えーとウエスタンスタイルのタヌキソバヌードルはイースタンスタイルで言うフォックスウドンヌードルなのよ。 だからとにかくトウキョウに来た時くらいイースタンタヌキソバヌードルを食べるのよ。ワタシ(※3)。 イッツテンカス。テンカスね。 私が英語に憧れるのは、間違いない。こんなときだ。 ※1 七味唐辛子のつもりらしい。 ※2 関西人が関東のうどんだしが黒いことについて「あんなの食われへん」と言っていることらしい。そう言い切る私も関西人に対して未だに偏見を持っていると言える。 ※3 書いていて自分でもわかりにくい。 要するに、たぬきそばは東京では天かすの入ったそばをいい、大阪ではあげののったそばを言うのである。って、皆知ってるか。 .たぬきのあとがき 43 たぬきはraccoon の あとがき  「パムフェスDocといい、ケイ子さんといい、はらたまは変わってしまったのか」の疑問に対して正面からぶつかった一本。  貴重な読者の一人、まりこさんより『本領』との表現があり、うむやはり私の本領とはここにあるのだろうと考えた次第です。  実は"Seven tasted Japanese spice"の中に入っているあの黒くてでっかい実(けしの実?)が、いかにうっとうしいものかという部分を入れたかったのですが、4kの制約上かけませんでした。まだまだ修行です。  後半のカタカナ攻撃部分ですが、自分自身も訳がわからなくなっているようで、特に狸そば云々の部分は書いた本人もとても読みにくいことになっています。  後で書きなおそうかとも思ったのですが、このままのほうが混乱している様子が表現できているかもしれないということで、そのままにしています。 .4k44:ホントウのオワリ ホントウのオワリ ○月○日 あの日から何度目かの土砂降り。 この季節にこれだけの雨は珍しい。今日はひょっとしたら、と思ったらやっぱり起こった。道路を渡ろうとした犬が車にはねられた。ジョンと呼ぶことにする。せめて俺だけでもジョンの事を覚えておいてやろうと考えた。野良犬のようだし。 ○月△日 新学期が始まったようだ。 入学式か? かなり気合いの入った出で立ちの母親に手を引かれ、男の子が道を渡っていく。少し心配になる。自分が入学式の頃はどうだったかと思いだそうとしたが、記憶は薄ぼんやりとしていた。少し寂しくなる。 ○月×日 近所で飼われているらしい犬が電柱にマーキングしていく。 ここは俺の場所だよ。お前のじゃない。何とか言ってやってくれ、ジョン。 △月○日 最近ここを通りがかる可愛い娘を発見。ちょっと浮気ぎみかな。 浮気という言葉にちょっと空しくなる。 △月△日 あの娘はクミちゃんという名前らしい。名前は普通だが、なかなか笑顔が素敵だ。クミちゃんファンクラブ設立を宣言。会員は俺だけだ。アホか俺は。 △月□日 自分について考えてみる。 あの日以前の俺は、今ほど考えることをしなかったのでこの変化に自分でも驚いている。何か考えるのに書くものが無いというのは不便だ。 もちろん結論出ず。 ×月○日 新入学の男の子は風邪でもひいていたのか、ここ数日見かけなかったので心配していた。 今日は久しぶりの学校ではしゃいでいる様子。道路には気をつけろよ。 ×月△日 何やら怪しげな霊能力者みたいのが怪しげなお祓いを始めた。 おいおい周辺住民。こういうのじゃなくて、他にやることあるだろう。まずはいっつも黄色点滅な信号をどうにかしてもらえよ。 ああ、それが出来ないからお祓いしてるのか。 ×月□日 自分についてまた考える。 わかってはいるが、認めたくないこと。俺が既に生きていないということ。 何故俺はここにいるのか。よく言うジバク霊という奴なのだろうが、自分は特に現世に対して未練もないし、誰かに恨みがあるわけでもない。 実際はジバク霊というより残留思念とでも言おうか、とにかく意識がここにあるというだけの状態。どう定義しようが誰にも知ってはもらえないことなので考えても無駄なことに気づく。 でも考える事と、この場所を観察すること。他にすることがないのでまた考える。 なぜ俺はここに「ある」のか? □月×日 昔の彼女(と言っても正式に別れた訳では無く、死に別れ)が男と通りがかった。 何だか複雑な心境。 だが特に未練を感じていないことに気づく。 そう言えば彼女、何て名前だったっけ。 □月△日 クミちゃん、仲間入り。 フキンシンだが少し嬉しくなる。いやいや本当は悲しいことだ。 クミちゃんは原付でここを通りがかったときに車と接触した。見ていてとても悔しかった。何とかしてくれ警察。 クミちゃん、無事(?)ジバク霊仲間として俺と話をする。 クミちゃんも特にジバク霊になった原因には心当たりが無いという。誰も恨んでないらしい。 ジバクという字がわからなくてクミちゃんに聞いてみたが、手元に書くものがない(あっても書けないけど)のでなかなか要領を得ず。 字を書かなくなって随分経つからか、漢字が思い出せない。まあ、書く必要も無い訳だけど。 □月○日 またオハライ。 だからそんなの無駄だって。俺も成仏(?)してないじゃん。それより事故の原因を取り除けよ。 クミちゃんの事故を俺のせいにされてるようでムカついた。 □月□日 マニアらしき人間が最近多い。 この辺りの写真を沢山撮っていく。写るわけ訳ないじゃんとか言いながらも「シェー」とかアホなポーズをとってみる。クミちゃんにもウケた。 写ったら面白いよな。ジバク霊が「シェー」してんだよ。写っても多分心霊写真としては認められないよな。イメージ違うし。 でも、ジバク霊は深刻であるものだなんて誰が勝手に決めたんだ? ?月?日 信号機が新しくなった。横断歩道もついた。 さすがに2人も死亡者が出ると何とかしてもらえるものらしい。これであの小学生も大丈夫かな。自分たちの死が無駄にならなくて良かったということでクミちゃんと一緒に喜ぶ。 あれ今日、何月何日だったっけ。 ?月?日 クミちゃん、生きていた頃の事をどんどん忘れているらしい。そういえば俺もそうだ。 少しずつ自分の意識が薄れていくのを感じる。 あくまでジバク霊というかザンリュウ思念に過ぎない俺たちにも終わりのトキというのはあるらしい。 考えてみればあたりまえの事。死んだ人間が皆俺たちみたいになって、永遠に意識を残すんだとしたら、その辺に死んだ人の意識がうじゃうじゃしてるはず。そうでないということは、今の俺にもいつか本当の終わりが来るということだ。 それに気づいた今、少しだけ寂しくなった。 ほんの少しだよ。そんなに深刻じゃないって。 .おわりのあとがき 44 ホントウのオワリ の あとがき  車の中から信号機を見ていて妄想が膨れていき、ついには4kになってしまった一本。  人間何が一番怖いってそれは自らの死でしょう。自分が存在しなくなることの恐怖。  でももしその後も自分の意識が存在するのだとしたら?  意外と本人(既に霊というか意識のみですが)はあきらめがついて、あっけらかんとしているのかも知れません。そう思った次第。  「心霊写真でシェー」は、実際に自分がやりそうな事だという気がします。死ぬ気はまだありませんがね。  しかし、その後になって霊体というか、意識までが消滅していくことに対する恐怖、悲しみ。誰にもそれを知ってもらえない空しさなどは想像を絶しますって言っても今想像してますね。そうですね。  自縛霊は深刻なものであるだなんて現世の人間が勝手に決めたことですから。  本人(霊ですか)達は以外に冷静で、ユーモアに溢れた思考を持っているのかも、なんて考えたら薄気味悪いですけど元気が出るような、不思議な気持ちになれるかも知れません。 .最期に ホントウのあとがき  どうも最近文章の調子が変わってきまして、これは明らかに「ケイ子さん」以後変わってきていると思われる訳です。たまにはスッカラカンに馬鹿な文章を書きたいのですが、狙うといけません。元々気合いとかそういうのがマイナスに作用する体質のようですし、気合い入れて馬鹿な話を書くというのも変な感じです。  ここは肩の力を抜いて、自然にまかせようと。そうしているうちに出てきたのが最新の「4K44:ホントウのオワリ」だったりするものですからこれはもうしょうがないと。 実は45本目も今書いているところ(4月10日現在)なのですが、それも笑いが無かったりします。困ったもんだ。 (この間で2日ほど経過)  45本目は選挙をテーマにして書いた(実はもう書き終えた。4月12日現在)のですが、こんな候補者がいたらと思って書いた後、自分のいる選挙区に全く同じ様な候補者がいるのに気づき、アップするのをためらっているところです。どうしよう。アップするのやめとこうかしら。  読んで下さっている方々からすれば、力を抜いて書いているのがバカ4kで、力んで書いているのがシリアス4kであるように思われるかも知れませんが、そうでもないです。  良さそうなのが書けたら推敲は力んでしますけど。  またよりぬけるくらい4kが溜まればいい(100本くらいに)と思っていますが、できるかどうかはわかりません。こればっかりは。  モコタンに聞いてみますか。どうかなモコタン。 「作者に言われたら元も子も無いよねえ」 そりゃそうだ。 「ちょっとあなたそれよりあたしとモコタンの4kはどうなってんのよ」 ひいい。  それでは。また。