バンコク点描04 (パッポン通り散策2)

文:遊佐たいら 写真:ハリマオ

前夜この階段の前を通り過ぎようとしたら、おびただしい数の少女たちが、群がる子鳩のようにしゃがみこんで、屈託のない笑顔で手招きしながらこちらに声をかけてきた。
近づくことはしなかったが、しばらくその「不思議な光景」に吸い寄せられ、金縛りにあったようにその場に立ち尽くしていた。
ビルの入り口のドアの上にある看板の「EASY BUY」の文字が、偶然にしてはなぜか出来過ぎたジョークに見えた。
翌朝思い出して現場に足を運んだが、昨夜の出来事が幻か何かであったように、子鳩は跡形もなく消えていた。
今頃はきっと「巣に帰って、ミルクくさい寝息をはいて寝ているのだろう」、そう言い聞かせながら昨夜見た幻影の思いにひたりつつホテルの方角へと引き返した。


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