あやしいハジャイその2




[伝統マッサージ施療師]

何軒か伝統マッサージ施設を巡っているなかで、腕と技とがいちばんしっかりしていたのが写真の女性である。相当なマッサージおたくを自認する私だが、これまでに一度も経験したことのないおなかの圧迫による内臓の刺激。これには、一本やられたとしかいいようがなかった。ハジャイで商売する人の中で英語を話す人に出会うことは難しいが、この女性はちゃんと英語が話せた。ということは、バンコクあたりから流れてきているのかもしれない。もちろん施療師の資格・免許を持っている。この女性に出会ってからは、連日午後遅い時刻伝統マッサージを日課にし、指名した。




[チャッカサーイ]

さて、何度もいうようだが、ハジャイの伝統マッサージは「チャッカサーイ」すなわち「睾丸マッサージ」がオプションでついている。どこでもこのサービスがあるといっていい。ただし、マッサージ師の選定のとき「若くてかわいいこにしようかな」などという中途半端な意識で指名すると、「チャッカサーイ」ができない女性もいるのでご注意を。睾丸、尿管、精管、前立腺などを東洋医学の理論にもとづいて15分ほど圧迫ししごいたりする。痛みはまったくない。決して風俗としての性感マッサージではないので誤解ないように。伝統マッサージ2時間240バーツ。チャッカサーイ15分200バーツが相場である。




[ピンクレディ・ホテル正門]
ハジャイを訪れる人で「ピンクレディ」を知らない人はいないだろう。「アジアホテル」など、一般的なシティホテルももちろんあるが、ピンクレディほとポストモダンで、ハジャイのおおらかな町の空気を充満させているホテルはない。なぜか露店の並ぶ小路の奥に入り口があるという点はさることながら、ホテルのネーミングがまた正直で、浅草、三ノ輪、千束あたりの感性にどこか似ていなくもない。




[ピンクレディ・カフェの入り口]

「客室用の唯一のエレベータを降りるとすぐ、いやでもカフェの入り口の案内板が目に飛び込んでくる。写真は、このカフェに登場する女性たちの紹介である。どことなく歌舞伎町や錦糸町のキャバクラの指名板を髣髴とさせ、みるからに怪しげである。



[カフェ内部]

カフェは日中は食堂になっているが、ほとんど利用客はいない。夕方になるとショーパブの雰囲気になり奥のステージで歌や踊り、セクシーダンスなどが行われる。専属の歌手が次から次へと登場するが、タイ語で日本の演歌を歌っているようで実に謎めいている。しかも歌う人々のファッションやメークが奇抜で、国境付近最大の町の混沌、文化の混交を思わせ、どう解釈しても「宇宙人が鬼怒川温泉の宴会場で謎のパフォーマンス」をしているようにしか思えなかった。夜に集まるカフェの女性の大半は、自由恋愛の対象だそうな。



[ライブカフェ]

客室階に通じる一基のエレベーターの中には、どきっとするような広告が恥じらいもなく貼り出されている。最上階にあるカラオケ・バー・ラウンジのショーの案内である。写真ではわかりにくいが、ミス・ハジャイではないかと思われるほどきれいなダンサーたち、その着衣はかなり薄手の「シースルー」で、法をかいくぐるための間に合わせのものである。このラウンジはバーファインOKである。ハジャイで、もっとも高級なクラブとして知られる。
毎晩ここで寝酒を引っ掛けて部屋に帰り寝たが、ちょっとは顔を知られた客になった。ハジャイからバンコクに戻る飛行機で、通路を歩いていたら後ろから誰かに指で突っつかれた。振り向いたらこのクラブのコだった。


[ピンクレディ・ホテルの裏口]

もうお分かりだろうが、「ピンクレディ・ホテル」というのは、男性専科お遊び複合施設内のホテル部門に当たる。ですから「家族向け」のホテルではない。こんな場所に泊まるのは男だけかと思ったが、マレーシアからの夫婦連れ、恋人カップルと思しき人々も目立った。ハリマオショーもそうだったが、この辺では「風俗施設」を男女で楽しんでいるのがよくわかる。男がこそこそ徘徊しているのではなく、女もその辺の事情を熟知して一緒に楽しんでいるのである。そういう懐深さに思いをいたすと、足裏マッサージの「ナーンデカナ?」のミニスカートの美人女性の存在もどことなく理解できるような気がした。とにかく「さばけた町」なのである。