ガイダンスその7


■サウナとマッサージですっきりする

さて、次なるお題目は午後のけだるい時間を過ごす最適な方法、日本式サウナ&マッサージ。ハリマオのぜひぜひお奨めの施設です。場所はロハス大通り沿い。「
ネット・ワールド・ホテル」や日本料理店「漁華(Ryoka)」の入っている細長いビルの中にあります。

名前は「
SM健康サウナ」< Jipang Bldg、5thFloor, Roxas Blvd, Pasay City(Tel:536-58-30)>。日本語の看板を出しているところをみると、日本人の経営者かもしれません。あるいはお風呂好きの日本人をメインターゲットにしているということかもしれません。いずれにしても、日本人にはうれしいジャグジーなどさまざまなきめ細かい入浴コースがセットされた大衆浴場です。

ウィンドウショッピングでそろそろ足が棒になってくる午後の遅い時間、そうですね午後の3時頃から夕刻の7時頃のあいだでしょうか、うだる暑さもありもうこれ以上どこにいっても何もすることがないという空白の時間帯、私はほぼ毎日のようにここを利用していました。

フィリピンではサウナに付属している浴槽つきお風呂のことを「ジャグジー」と呼んでいます。地方の中堅都市に行けば、少なくとも一軒ぐらいはジャグジーつきのサウナ施設は見つかるものです。しかし、実際に利用してみるとがっかりします。フィリピンのジャグジーのお湯はぬるすぎるのです。どちらかといえば水に近く気持ちの悪いなまぬるさ。熱い気候で暮らすフィリピン人には気持ちのよい温度設定なのかもしれません。カア〜ッと熱い湯に浸かって体の芯まで温めたいという日本人のテイストにはまったく合いません。下手をするとかえって風邪でもひきそうな中途半端もんです。

そういう意味でいうと、「SM健康サウナ」は体の芯までしっかり温まる温湯ですから、日本人にとってはありがたい施設です。マニラまできて何で熱い湯に浸かるのさ、という御仁もいらっしゃるでしょうが、ホテルに戻ってクーラーつきの部屋で数時間寝て過ごすよりも、私はこの熱い湯に浸かる方をお奨めします。

フィリピン人は清潔好きです。暑さもあって、一日に何度もシャワーを浴びるようです。民族的にはマレー・インドネシア系と基層で結びついているのですが、彼らには信仰生活ともかかわりの深い「マンディ(水浴)」という習慣が染みついています。そのことを思えば、遠縁のフィリピン人の水浴びも、生活の重要なファクターになっていると考えられます。

汗を洗い流すときフィリピン人はシャワーを利用しますが、大部分の家にはまだ「温水シャワー」の設備が普及していません。年がら年中暑い国ですから、その必要性も乏しいといえるでしょう。

それでも、少し「小金もち」くらいになると、「温水シャワー」設備をそなえ始める家もあります。特に日本での生活に慣れたPナなどが、そういうちょっとした贅沢を希望するようです。フィリピンの家族からすれば、何が何でも必要な設備ではないでしょう。一年の大半を日本で過ごしている出稼ぎPナひとりが、つかの間帰国したときのために「温水シャワー」を設置するというのは、真っ先に揃えなければいけない他のアイテムと比較するとやはり優先順位は低いようです。

ところで日本の暮らしで贅沢を知ったPナでも、温水シャワーまではOKだが、バスタブに熱いお湯を張って体を浸けるまでに順応しきったババエは少ないのではないでしょうか。諸兄の身近にいるPナはどうですか。

私が知っているケースで、こんなのがあります。あるとき友人が、巨大な浴槽で有名なある温泉にPナを誘い、男女別々の大浴場を利用して部屋に戻ったところで彼が彼女に印象を聞いてみたら、ずっと洗い場の隅っこで体を丸め人目を避けながら下着を洗っていただけで、浴槽には恥かしさと怖さとでまったく入っていないと答えたそうです(笑)。

さて、SM健康サウナ。入浴料は40分のマッサージ込みで580ペソ。客の大半は現地在住とおぼしき日本人が多いのですが、浴衣に着替えて男女が一緒になる休憩室で観察していると、日本のPPでならした小金もちの帰国フィリピーナ風ババエも見かけます。日本人とPナのカップルも少なくありません。

さて、料金にセットされているマッサージはかなり訓練を受けている女性のテラピストによる健康マッサージで、大部屋のみ、個室はありません。ただし、2002年3月現在、近々個室ができるという噂もあります。テラピストの基本は見るところ30代〜40代のフィリピーナ。日本の場合よりはかなりお若い感じです。

コースは、普通のマッサージとオイルマッサージのどちらかを選ぶことができます。オイルを選択すると、「お灸」サービスを受けることもできます。お灸といっても、モグサを焚く日本式のものではなく、中国や台湾で見かける「真空パック」式の「肉吸出し器」のようなヤツです。うつぶせになった背中に、薄い木箱に並べてある十数個のガラスのカップをひとずつ当てて、中の空気を抜きたるんだ肉をカップの中に吸いだしていきます。ガラスがぶつかり合う「カチャカチャ」という音が、不気味といえば不気味ですが、音にリズム感があるテラピストほど熟練しているということになります。

この「お灸」は当然背中に無数のうっ血した円形のあざを数日間残すことになります。同室の人がいればその人をびっくりさせたりする可能性がありますから、そのつもりで受けてください。お灸を断り、オイルマッサージのみ受けることもできます。
この真空パック式お灸サービスは、日本の台湾エステなどでも受けることができますが、日本では法律で禁止されているという話を聞いたことがあります。

入浴後のマッサージは、いつも大変込み合っていて、順番まちになります。せっかちな日本人ですから、係員に催促する人がでてきます。あまりしつこく催促すると、「バクラ(おかま)でもいいですか?」と言われることがあります。日本人はどうもバクラに揉まれるのを好まないようで、リクエストがなくあぶれているテラピストがいるのです。私も一度バクラをあてがわれたことがありましたが、やはり慣れないと居心地が悪い。男なら男、女なら女、どっちかはっきりしないと、ここちよく眠ることもできません。

マッサージのテラピストへのチップは、帰りの際に受付カウンターに設置している選挙の投票用ボックスのような木箱に、彼女の担当番号を書いて差し入れるらしいのですが、そのやり方がよくわからず、利用した回数の割にはまだ一度もチップをあげたことがありません。

ロハス大通りをもう少しリサール公園方面に向かって上ったところに、台湾式のマッサージ専門店、そこからもう少し上って行った「インフィニティ」というナイトクラブの近くにもユニークな日本式サウナがあります。体荒い専門の女性がついています。名前は確か「ボリバード」といったように思います。これについては、トップページの「フィリピンブース」内にある「語り忘れた風景」のフォトエッセイに書いてあります、ぜひご参照ください。清潔さと設備では「SM健康サウナ」に到底かないませんが、その「ユニーク」な趣向を一度は試してみてはどうでしょうか。

ところで、このビルの前にはちょっといかがわしいメーターを使わないタクシーがつけ待ちしていますから気をつけましょう。愛想のいいタクシーの客引きのいうままに、私が先日乗って「コパカバーナ」と言ったところ、運転手はやはりメーターを倒す気配がありません。

「おいなんでメーター倒さねえんだ!料金はいくらだ」というと
「80ペソです」と言われ、
「なんだとお、すぐそこじゃねぇか!?ふざけんな。よしわかった、デレッチョ(まっすぐ行け)、デレッチョ・ナ(まっすぐだぞ)。ヘリテージ・ホテルに変更だ!あそこの外にツーリスト・ポリスがいんだろ、あそこまでだ!」
「.......」

運転手はやばい客を乗せちまったという顔をして、とたんに平身低頭。何とか勘弁してほしいという表情がありありになった。ちょっとロハスを走り、ヘリテージのところから左折して側道に入ったところで、畳み掛けるように、遠くを指差して
「いいか、あそこに立ってるだろ、ほらツーリスト・ポリス。よく見とけ!」
運転手は情けない顔になり、今にも泣き出しそうになっている。運転手がポリスと関わるとかならず法外なチップをたかられるので、大の苦手なのだ。何とかこの場は勘弁して欲しいという表情がありありだ。

ヘリテージの前にさしかかったところで、許してあげることにして「デレッチョ(まっすぐこのまま行け)!」と私が言うと、運転手はほっとしたようす。隣りのコパカバーナの正面で几帳面に車を停めた。

「ほら見ろ!38ペソじゃねえか。何が80ペソだ。このパランタガヤ!」
そういって後部座席から50ペソ紙幣を差し出すと、顔面を紅潮させきちんとつりの12ペソを返してよこした。普通なら、小銭の2ペソはチップになるでしょう。
ホテルのドアマンも何事かとクルマの中の様子をうかがっている。運転手は、もういい加減に勘弁して欲しいという顔で困りきっている。

わたしは時々このように、わざと運転手に文句を言ったり絡んだりします。計算があってのことです。日本人と見るとすぐ「外国人価格にさらに上乗せ」して吹っかけてくるやつらが多いのです。それを、ただ文句も言わずはにかみ笑いして払ってしまう日本人にも問題があります。

けっきょくこの町の風紀と観光価格相場を、お人よしの日本人とそれを知り尽くしているゴロツキ連中がつり上げていく…。これはなんとしても阻止しなければなりません。

相場を吊り上げれば、最後に首を絞めるのはフィリピン人たち自身だということを知らせておくべきでしょう。先々に起こりうることを見通して今を行動する力が、フィリピン人には著しく欠けているということも考慮しておきましょう。ですから、かわいそうだが私たちが自身で厳しくしてあげないと物事は改善されないのです。
かつて隆盛を極めたEIECも、相場がつり上がって客が地方に逃げてしまい、いまはどの店も閑古鳥が鳴いているというのは、もとをただせばそれと同じことが背景にあったと思っています。



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