BITTERSWEET FOOLS

ハード/DC・PS2
発売日/DC・2002年8月29日 PS2・2002年9月12日
メーカー/D3パブリッシャー
値段/2000円
備考/DC・PS2版SIMPLE2000シリーズ
    minori製作のPCゲーム「BITTERSWEET FOOLS」の移植作


 元々原画を担当した相田裕氏が好きだったので、PC版も発売日に購入。
 さすがに移植するとは思いませんでしたが・・・しかもSIMPLE2000で、ついでにフルボイスときた。
 実際PC版もかなり好みだったので、期待してみることにする。

 舞台はイタリア、フィレンツェ。謎の青年・アランの元に預けられた少女・ティ。
 行き倒れてた少女・レーニエを救った青年・パルレモ、そして彼女を追いかける少女・フランチェスカ。
 二人の青年が二人の少女に出会った時、二つの物語が始まる。

 ちょっと設定等が従来の恋愛ゲームとは異なるので、説明がし辛いが、こんな感じである。
 基本的にこの手のゲームはプレイヤー視点に置かれる主人公がいて、その主人公を中心に背景設定があり、基点としてゲームが進行するというスタイルなのだが、 本作はちょっと特殊な視点によって本編を展開している。
 上述したように、本作の主人公にあたる人物は二人存在している。
 そうなると必然的に二人の主人公の軌跡を追っていくことになるのだが、本作は基本的に「視点」というものを持たない。
 つまり、主人公という位置づけの青年が二人存在し、そのそれぞれを基点にした別々の物語は展開するものの・・・その物語を見つめる視点、プレイヤーの代弁者になる 存在というワケではなく、あくまで物語の登場人物として描かれている。
 何だかややこしい説明になってしまったが、早い話が、本作は主人公一人称のスタイルで進行するタイプではないということ。
 基本的なシステムは従来のテキストノベルタイプと同じで、ノベル形式で物語を読み進めていくもの。
 このノベルタイプのものは主人公視点かつ、テキストが主人公の内面として描かれている場合が多いのだが、本作ではそれが完全に傍観者としての立場から描かれている というスタイルになる。
 だから画面に主人公(という立場のキャラ)も登場するし、完全に独立した存在として物語の中で描かれる。
 この、本作での主人公=否プレイヤー(視点)であり、プレイヤーはほとんど傍観者であるということは、結構重要なので覚えておいて下さい。
 で、前置きはここまでにしてシステムをば。
 そんなワケでシステムは基本的なノベルタイプのもの、テキスト表示はウィンドウタイプ。
 ページ送りや画像切り替えのレスポンスも悪くなく、スキップも強制・既読両対応でオートモード有り。バックログ搭載と、ノベルタイプのものに必要なものはほとんど完備。 セーブ箇所も多く、CGモード及び音楽モードなど基本性能は高め。
 PC版でも好評だった新海誠氏が製作したOPムービーももちろん収録、私見だが何か若干綺麗になってるっぽい。
 ノベルゲームとして見た場合の周辺機能に関しては問題なし、強いて言うなら音声読み込みの際に若干ディスクの回転がうるさいくらい(それともウチのPS2が古いからだろうか)。
 それで、ノベルゲームで重要な内容ですが。
 本作は上述したようにかなり特殊な設定と演出がされているので、まず主人公=プレイヤー派の方はお引取り下さい。
 ついでにコテコテのラブコメや、いわゆるギャルゲー塗りとも言われるグラフィック等などがお好きな方もご遠慮下さい。
 さらに言うと、幼馴染みだとか眼鏡っ娘だとかメイドだとか、学園モノなどを嗜好とするような方も退場願います。
 スゴイですね?ハッキリ言って「ギャルゲー好きお断り」みたいな感じです。
 まぁそれらを踏まえた上で書くと、本作はちょっとPC(エロ)ゲームとしても、コンシューマ恋愛(ギャル)ゲームとしてみても、その方向性が大きく異なるのである。
 舞台がイタリアはフィレンツェってトコロにまず目を引く、そうなると必然的に登場キャラクターは欧州系に絞られることになるのだが、この登場キャラクターというのも曲者である。
 「外国人が主人公の漫画は売れない」というジンクスがあったように、基本的に恋愛要素を含んだゲームというのは舞台が日本である(現代であった場合)。その他ファンタジーや 未来などを描いたものもあるが、それらはほとんど無国籍であり比較の対象にはならない。
 よくよく思い返してみても、あまり外国が舞台の恋愛ゲームというのは少ない。それは多分プレイヤーに身近では無いからだろう。
 個人的に好きではないが、基本的に恋愛ゲームというのは主人公とプレイヤーを同調させた上で成り立っている、その場合現代日本の方が世界を伝達するのに適しているからである。 それに、やはりその方が親近感があるのだろう。
 それらを踏まえた上で書くと、「外国が舞台」であり「プレイヤーは傍観者」な本作。コレだけで特異性が際立つ。
 ただし無論のことそれらは決して弱点ではない、見方によっては厳しいかもしれないが、本作には本作の楽しみ方と言うものがある。
 そう、それこそ本作は傍観者として楽しむのが吉、である。
 それから舞台や設定などを見てみると、「レオン」などといった映画的な要素もある。つまり簡潔に言ってしまうと、本作は「イタリアが舞台の外国映画」と思った方がいい。
 これだと傍観者であるプレイヤーという立場も頷けるとは思う、ただし、好みが大きく分かれるでしょうが。
 選択肢も一応ありますが、基本的にCG回収のルートが異なるだけで、ほとんど物語には影響されません。
 そんなワケで、ゲームをプレイするというよりは、どっしり構えて物語を傍観するというスタイルが、本作の正しい楽しみ方(?)だと個人的には解釈しましたけどね。

 上述したように、従来の作品が持つ「いかにもな恋愛ゲーム」を本作に求めるのは酷である。
 それだけで選択の幅が狭まってしまうのが本作の弱点ではありますが、雰囲気や掛け合いなどのシーンはかなり良質。
 イタリア・フランス映画のやたらと抽象的な表現ではなく、その中にあるイメージとしての欧州映画(分かりづらいが、大衆的な欧州芸術への意識。安く言えば「イタリア映画っぽい」でもいい)が好きならオススメ。
 システムなどは問題なく、テキスト量も多いので(その代わりルートがほとんど無いが)コストパフォーマンスも高い。
 元々エロゲーではあるが、あんまエロシーンも必要のない作品だったため、修正もそれほど違和感なし。
 ちなみにPC版との変更点はエロシーンの修正の他に、全20話だったエピソードに加えてDC版・PS2版にそれぞれ異なる2エピソードを追加。それぞれに追加エピソードが異なるというやり方はいやらしくて賛同出来ないが、 それでも移植の際に合計4エピソードを追加すると思えばSIMPLEシリーズとしては優遇な扱いである。
 それから本作は「恋愛要素」として見るならほとんどないので、そういう意味では酷評。あくまで一本道の映画みたいな作品、として評価。
 個人的には気だるい午後にでも、オートモードでまったりしながら読み進めたい作品。電話線を抜くのも忘れずに。



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