STEADY×STUDY

ハード/PS2
発売日/2004年3月25日
メーカー/アイデアファクトリー アイエフメイト
値段/通常版6800円・限定版8800円
備考/限定版・設定資料集、ドラマCD付き


 「スペクトラルフォース」等で有名なアイデアファクトリーが設立した、自社内ブランド・アイエフメイト。
 本作は、主に恋愛ものに取り組んでいくというアイエフメイトのデヴュー作である。
 さて、今この時代に何のノウハウもなく家庭用恋愛ゲーム業界に挑んでくるとは・・・一体どのような隠し玉を持っているのでしょうか。

 東京は新宿に設立の私立高校に通う主人公・中根マコト。
 彼は幼馴染みでもある親友・哲に演劇部への入部を頼まれ、断ろうとするがもう一人の幼馴染み・望からも勉強部への入部を迫られ・・・
 いつも通りの平凡な学園生活、それは幼馴染みの一言からゆっくりと動き出した・・・

 と、出だしの設定は手堅く、中々好印象。
 部活を基点にして話を展開するのはキャラクターや設定の拡散がしにくくなる(つまり汎用性がなくなる)という弱点を持ってはいるが、上手く扱えば一つの大きなものを 主軸として小回りが効き狭く深い内容を構築することが出来るのが強みである。
 タイトルにもあるように「恋人」と「勉強」、つまりは部活という一つの目標を持って行動する集団の中であらゆること(この場合は恋でも友情でも夢でも何でもいいが)を 学び、その上で恋愛要素を持たせようとしているのが伺える。
 プロットとしては悪くない、青春群集劇としてスタンダードながらも十分その性能を発揮してくれるだろう。
 ・・・と、無駄に期待させておいてシステムをば。
 基本的にはテキストノベルアドベンチャーで、選択肢によってルートが確定していくタイプ。
 ただし対象キャラへのルートはほぼ序盤で確定してしまい、その後の選択肢はCG回収と好感度にのみ影響。
 その他特異システムとしてASV(Around Search View)システムというものがあり、これは従来のゲームが固定された主人公視点からの映像 として画面を表示していたことに対し、その場所を空間として視点を自由に切り替えることが出来るシステムである。
 例えば仲間内でファーストフード店に入るシーンがあるとする。従来のゲームならば全員が揃ったCGを1枚表示しテキストを流したり、主人公視点で1・2キャラ表示を固定 したりという具合だったのが、本作ではそれをアクティブに変更することが出来る。
 つまり、早い話が一つのシーン(空間)で視点を切り替えることによって、選択肢ではなく行動そのもので話を進めることが出来るということである。
 基本システムはこのようになっていて、特に酷評するところもなく及第点。
 ただし・・・他色々と気になる部分がいくつか。
 まず目に付くのがOPムービー、何故だか知らないが妙にブレるのである。仕様と言ってしまえば仕様で済むかもしれないが、残念ながら本作の売り文句の一つとして 「アニメーションが様々なイベントを印象的に演出!」と高々と謳ってしまっているのである。勿論OPのみならず本編中に使用されるムービーもやはりブレていて、 コレでは折角の武器も台無しである。
 続いて通常グラフィック。キャラクターデザイナーとは異なる人が原画・着色しているのは個人的には全然構わないのだが、気になるのはその解像度の低さである。どうにも 画像がブレてしまっている。オマケにジャギーも処理されておらず、背景とのミスマッチが際立つ。
 あまり画像にそれほどこだわらない自分でさえ気になるくらいだから、グラフィックの評価を重く考える方が見るともっと酷評することだろう。
 まぁその他スキップ機能は強制のみだが搭載しているし、バックログ有りと問題はない。
 ただセーブ機能は1データに116k使用で、さらにそれが単品扱いという素敵仕様。しかも何とシステムデータはなく、CGモードといった本編中に使用された グラフィックを観賞するような機能は一切搭載されていない(クリアしても項目が追加されないのだから、恐らく本当に無いのだろう)。
 一体何年前の腐ったギャルゲーですか?と思わず疑問系で問いかけたくなるくらいの珍妙仕様である。
 そんな周辺機能に愕然としながら、本編に期待してはみたものの・・・
 残念ながら、酷評せざるを得ません。
 部活を基点とした群集劇という点はいいでしょう。ですがあまりにも薄っぺらくメリハリのない内容と、都合が良すぎて盛り上がりの「も」の字も無い展開には正直呆れるくらいです。
 テキストそのものは冗長であるものの問題のないレベル。だが要所要所に設けられた寒いギャグや、無意味に長い主人公の独白などこなれてない部分が多過ぎて、本来の実力 より随分劣っているように感じるかもしれません。もしかしたらこれが地なのかもしれませんが。
 それから1プレイの短さ、普通にプレイすると3時間もかからずに終わります。確かに上述したような魅力の欠片も無いシナリオやテキストを何時間も読み進まなければならないと 思うと苦痛かもしれませんが、それにしてもこの時間はかなり短いかと。
 クリア対象キャラを考えてみると、このボリュームと内容でこの値段は・・・はっきり言って、高過ぎます。
 これが同人ゲーム、もしくはSIMPLEシリーズ等ならば問題はなかったかもしれませんが、商業ラインという名目の元で発売出来るレベルではありません。
 せいぜい何か特化したものでもあれば良かったのですが、残念ながら特に目を引くようなものはありませんでした。
 キャラクターは結構良いのですが・・・哀れにも、いい製作者に恵まれなかったようです。残念。
 もっちーなんて、シナリオや演出さえ上手くやればかなり化けられるキャラだっただろうに・・・惜しい娘を亡くしたものだ、本当に。

 そんなワケで。
 久々にオススメしない作品、何と言うかセールスポントが全く見当たらない。一体どの層をタ−ゲットしたのかも分からない。
 上述したようにシナリオも散々です。大した起伏も無く最強キャラになっている主人公とか、何故主人公に惚れていくのか過程が全く描かれずに突入するEDとか、とにかく材料を 粗末に扱い過ぎ。適当に話を繋げて、最終的に女の子とくっつけば客は喜ぶとでも思っているのか。
 「恋愛ゲーム製作に慣れていない」のも分かる、だがこんな作品を作るためにわざわざ別ブランドを設立したアイデアファクトリーの戦略意図が全く掴めない。 ネバーランドを舞台にした(過去の栄光にすがった)ゲームを製作し続けて、固定ファンに支持されるのもいいかもしれないけど、こんな乱雑なゲームを作っているようじゃ本気で滅びるぞ。
 ・・・と、まぁ酷評したが、事実としてこんなもんだと思ってください。
 少なくとも定価で買うものじゃない、2000円くらいで売られていたのなら戯れで購入するのも有りか・・・という感じ。
 それこそ、本作を買うくらいならSIMPLE2000シリーズの恋愛ゲームを買った方が得策です。本気で。
 どうやら5月にもアイエフメイトの新作恋愛ゲームが発売されるようだが・・・そっちも失敗したら、さっさとアイエフメイト解散した方がいいな。今後のためにも。



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