トゥルー・ラブストーリー

ハード/PS
発売日/1996年12月13日
メーカー/アスキー
値段/5800円
備考/廉価版有り


 家庭用恋愛ゲームの歴史の中に、その名を刻む至高の名作(勿論否定する人もいるだろうが)。
 今でこそシリーズ化するほどの人気・知名度を欲しいままにした作品だが、前評判や発売当初では散々な扱いだった。
 問題は、客観的に見て明らかに「可愛い系」ではないイラスト・・・だが、そんなものは物ともしない魅力が、本作にはあるのだ。

 主人公・早川大輔は、父親に突然の転勤を告げられた高校2年生。
 あと一ヶ月もすれば転校しなければならない・・・その間に、自分は一体何が出来るだろうか?
 戸惑いを隠せないまま、彼は残り少ない生活を始める。

 物語が開始するまでの経緯を好意解釈するとこうなる。
 だが実際に表記された設定を要約すると、「転校するのに彼女の一人もいないと寂しいし、最後だしやってみっか」といったもの。
 当時のスタイルを考えると『恋愛シミュレーション=女の尻を追っかける』だったので、思想的には間違ってはいないのですが・・・
 今考えると、最終的な結果としてはしょうがないとして、『女性キャラとくっ付くことだけが目的』というのはあからさま過ぎてちょっと嫌ですね。
 目的のために過程があるのは当然なのですけれども、やはり偶発する過程上の結果としてEDが存在する方がスッキリして良いです。
 システムは、一日を4つに区切り、場所を選択・移動するADVパートが基本。
 場所は学校内・放課後に選べる寄り道場所など、対象となるキャラクターの性格・趣味などを考慮して移動する(ただし登場はランダム)。
 これで対象キャラクターに会っては好感度を上げ、条件によってはイベントが発生、といった日々を過ごしていきます。
 そして本作が搭載する特殊システムとして、「下校会話」なるものが存在する。
 これはその名の通り、対象キャラクターとの下校時の会話を完全にシミュレートしたものである。
 放課後、帰宅時に出会った対象キャラクターと一定以上の好感度が成立した場合に可能になり、その時点でシステムが移行する。
 学校から対象となるキャラクターと分かれる距離(駅前や、バス停など)までの許された時間内に、各話題を使って会話を弾ませるというもの。
 会話時には、対象の好感度(ときめきゲージ)と心拍数(ドキドキハート)というものがあり、それらを考慮して話題をふらなければいけない。
 対象となるキャラクターによって好みな話題・嫌いな話題があり、場が盛り上がれば好感度・心拍数も上がり、盛り下がれば好感度・心拍数も下がる。
 厄介なのはこの心拍数で、盛り下がり過ぎると対象は飽きてさっさと帰ってしまい、盛り上がれば恥ずかしくなってそれはそれで帰ってしまう。
 つまり、妥当に盛り上がる会話をしているだけでは、すぐに心拍数が上がりどうにもならなくなってしまうのだ。
 そこで好感度・心拍数を見計らって話題を弾ませるという駆け引きが重要になってくるのである。
 このシステムは画期的且つ秀逸で、他作品との差別化を強調するには十分なものとなり、シリーズを通しての最大の武器となっている。
 通常画面(立ちグラフィック)から下校画面(バストアップ)での画像演出等も当時としては素晴らしいものがあります、表情もよく変わるし。
 話題によっては特殊な会話も発生し、対象との距離の詰め方が非情に丁寧で、キャラクターが身近に感じられるのもいいですな。
 それから、本作にはゲームの舞台となる季節を決定することが出来、メインキャラ5人に加え、各季節限定キャラ1人を含む6人が攻略対象になります。
 1日1日に重点を置く短期型の作品なので、こういった季節の概念を取り入れたのも好感触。
 欲を言えばもう少し四季に富んだイベントを展開してもいいかと思いましたが、季節ごとの微妙なこだわりは中々のものかと。
 それとこれは個人的なもののなりますが、ゲーム開始地点の選択というのはかなり思い切ったことだと思う。
 一種のパラレルワールドのようなものですからね、特に季節限定キャラが他季節にふと登場すると、デジャブに襲われるような。

 少し誉めすぎた感もありますが、当時の家庭用恋愛ゲーム事情からしてみればそれくらい衝撃的だったワケです。
 どのメーカーも自社作品ならではの特化したものを付加しようと四苦八苦していた時代で、これだけ特異的な作品を作り上げたのですから。
 周りの作品がときめきメモリアルを参考に必死こいている中、オリジナルを貫いて成功した数少ない作品の一つですな。
 しかし問題は当時も今も言われている個性的な絵柄、残念ながら嫌煙されているのも事実です。
 当時はいわゆるアニメ絵が主流でしたし、今は今で売れ線の絵柄が無難に氾濫しているだけのような気がします。
 特に今現在の新規・若手ユーザーにはかなりキツイでしょう。正直、絵柄で優劣付けそうな連中には恋愛ゲームは御法度な気もしますが。
 1・2・3でキャラクターデザイン・原画・版権イラスト等を担当した松田浩二氏ですが、1発売後に人気が上がり、
 今まで叩き売りされていたPC麻雀美少女中心派(松田氏が以前原画を担当したPC-Eソフト)の値段が高騰したのはいい思い出です。
 まぁ、それはともかく。
 恋愛ゲームというカテゴリーに身を置こうとする者なら、プレイしておくべき作品の1つであることには間違いないです。
 必修科目なので。



戻る