トゥルーラブストーリー3

ハード/PS2
発売日/2001年4月5日 廉価版2003年9月4日
メーカー/アスキー
値段/6800円 廉価版・2800円
備考/廉価版有


 TLSシリーズ3作目、プラットホームもPS2に移行する。
 今までテーマの一つでもあった転校という概念がなくなり、さらには主人公含む対象キャラクターが全員中学生に低年齢化する。
 冒険とも思える前作から変更点と、無謀とも言える挑戦の結果は・・・

 主人公・関谷朋貴は、どこにでもいる中学三年生。
 受験という初めてぶつかる壁と、卒業という初めての別れを心のどこかに隠して過ごす中学校生活最後の年。
 彼の生活は、わずかに変わり始める。

 転校というような事前設定が無くなったので、ごくごく普通の背景設定のない純粋な学園アドベンチャーに変貌。
 期間も1年間と長く(プレイ次第では短縮可能)、これだけでも前作からのユーザーは戸惑いを隠せないかもしれません。
 前作同様のシステムで1年間もプレイすると40時間ほどかかってしまいますので、本作では日常時のシステムも大幅に変更されています。
 主人公は一週間以内にあるどれか1日を選択し(選択は睡眠時に行う)、その日だけを行動します。
 さらに、前作では1日数箇所の時間・場所移動が可能でしたが、本作では1日1箇所。それも移動可能な場所は4箇所と随分大雑把に。
 そして主人公には「やる気」というパラメータが存在し、最大で100%。行動する度に減っていきます。
 1日行動すると10%減、その他下校時に対象キャラから下校の誘いを断られると10%減など、かなり影響を受けます。
 このやる気は主人公の行動する日(がんばる日)を1日先送りにする度に10%回復。
 「2」にもあったイベントガイドアイコンも本作にあり、それはこのやる気が90%以上ないと正確に表示されないという素敵っぷり。
 このやる気は低い状態だと期末テストなど定期イベントにも影響を及ぼすので、高ければ高いほど良いでしょう。
 基本は90%維持しつつ、イベントガイドの日を的確に選択し、無い場合は好感度を地道に上げるというスタイルになります。
 そこだけきちんと抑えておけば、プレイ感覚自体は前作ともそれほど変わりはないように思えますが・・・
 まず目についたのは人間関係です。
 1では意図的に排除され、2ではある程度の相互関係を持たせましたが、3ではほぼ全ての登場キャラクターが友人・知人です。
 そのために必要以上キャラクターの掛け合いが多くなってしまいます。
 用意された会話パターンにも限界があるので、例えば朝の登校時4人程で行われる会話を何回も見なければいけません。
 キャラクター同士の掛け合いに重点を置きたいのは分かりますが、その場合のシステムがTLSと上手くかみ合うとは思えません。
 こういったテンポの悪さにいらつきを覚えることもしばしばありました。
 それから、TLSシリーズの伝統として主人公をサポートする役目を担う存在として登場してしてきた主人公の妹ですが、今作は双子の姉・かなめがそのポジションに付いています。 そうなると、上述したように「人間関係」を主眼においた場合に、多少問題が発生してしまう。つまり、この姉の存在があまりにも作品に影響力を与えすぎてしまっているということだ。
 主人公の攻略対象となるキャラクターは合計7人いるのですが、その内の5人が主人公に対するファーストインプレッションが「かなめの双子の弟」という認識から始まるのがまず脅威。 つまり、主人公と攻略対象となるキャラクターの間に、本来ならサポートに回らなければならない存在が、その登場の時点で中間に介入してしまっていることになる。
 そして最初だけならまだしも、対象キャラクターとの中間点に位置してしまう双子の姉は、主人公と対象キャラクターを結ぶイベントなどに対してあまりにも汎用性が高く(クリア対象キャラクター7人の内 6人が姉・かなめの友人という設定)、製作サイドが意図したものかは分かりませんが、必要以上に登場してしまっているである。
 そのおかげでサブキャラでなければいけない「双子の姉」が、どんな女性キャラクターよりも目立ち、身近に感じさせてしまという自体が発生。
 設定レベルで汎用性が高いことに気付いているはずなのですが、製作サイドがそれに頼りすぎてしまった結果なのだろうか。
 他にも期間が1年あるのに定期イベントの充実が全くなっていないとか(修学旅行を上手く使用しないのは呆れを通り越す)、無意味キャラが多過ぎるとか・・・ 1・2とは違うことをやってやるぞ、という意気込みは感じられますが、感じられるだけでそれ以上のものは無かったようです。

 本作において、最も重要なのは決して「恋愛要素」を主軸にしたものではないということ。
 勿論その要素も多く内包してると言えますが、基本的に本作は「中学生活シミュレーター」と言った方が適正だと思います。恐らくは、製作サイドの方でも決して恋愛ADVとして作ったわけではないかと。 というかTLS1・2を作ったスタッフが純粋な「恋愛劇」を描くとするならば、こんな中途半端な代物は作らないはずですし。
 あの中学生独特の生温い雰囲気・少しだけ背伸びしたような恋愛模様・受験に対する焦燥や葛藤・学園生活の中で培われる自己と他者・・・そういった、思春期を過ごす少年少女達の群集劇としては結構な 出来を誇っているとは思います。
 ただし、純粋な「恋愛もの」としてみた場合には非常に中途半端です。学園色が下手に強すぎて、それ以外の要素が希薄になりすぎている感は否めません。
 プレイ当時は前作までのイメージが強いために本作をかなり酷評していた記憶がありますが、それはあくまでも「恋愛ゲームとしてのTLS」を照らし合わせた場合にのみ値します。
 雰囲気やキャラの駆け合いのソレはTLSのものは感じられますし、今ではまぁ・・・冒険し過ぎた異色作みたいな感じで見つめています。

 難点も多くあるとはいえ、普通にプレイする分には普通に面白いとは思います。
 少々つまらなく感じるのはあくまでも前2作と恋愛要素を主軸にして比較した場合であって、実際のところは平均以上のものはあると思います。
 上述したように、本作は「中学生活体験シミュレーター」ですから、広い意味で学園色を味わいたいのなら割とオススメ。恋愛模様には期待出来ませんが。
 ちょっと冒険し過ぎたのが残念でしたね・・・キャラクターそのものの造形はかなりよく出来ているので、連中のままで舞台が高校のTLS3がプレイしてみたいものです。
 PS2発売初期の作品でもありますし、ちょっと製作を急いでこうなってしまったのかな、という邪推もありますが、今では安く売っていますので戯れに買うのも悪くないかもしれません。プレイ時間も 短いので、気が向いたときにダラダラ進めるのも○。
 どうでなら割り切って別のシリーズで展開した方がよかったかな、TLSに縛られんでも良いと思うのに。

 まぁ、二階堂がクリア出来ない時点で駄目駄目なんですけどね。



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