True Love Story Summer Days,and yet...

ハード/PS2
発売日/2003年7月24日 廉価版・2004年7月22日
メーカー/エンターブレイン
値段/6800円 廉価版2800円
備考/廉価版有・廉価版のみ12歳以上推奨


 TLSシリーズ実質の4作目、誌面で発表された時はそれはもう驚いたものだ。
 まず、俺の中ではすでにTLSは作られないものと確信していたこと、それとキャラクターデザインが変更されていたこと。
 ある意味3よりもとんでもないことをやらかしそうな期待と不安があったが、実際のところは・・・

 主人公・森崎勇太は、ごく普通の高校2年。
 初夏にさしかかり、これから夏本番に向けて移り変わるそんな季節。
 彼の終わりのこない夏が始まるのである・・・

 普通に見てみれば、夏休み前の期間が舞台となるどこにでもある普通の恋愛ゲームのような気もします。
 ただし、それはそれ。単発作品ならまだしも、本作はTLSというシリーズの一旦を担う作品です。
 つまり、そのタイトルを冠するものならば、それなりの制約と共に受け継がねばならないものも多々あるわけなのです。
 それの多くは(ゲームの場合)システムであったり、世界設定であったりというところ。
 確かに前作と同じようなものをやっては進化は望めませんし、かと言って全く違うものを作るわけにもいかない。
 それがシリーズとしての宿命でもあると思っているのですが、そのスタンスはかなり微妙なラインであり難しいのは分かります。
 本作がどのようにTLSとしての側面を保持しつつ、新しい境地を開拓しているのだろうという部分は、ファンとしても気になるところである。
 さて、とりあえずその辺りのことは後回しにしてシステムをば。
 システムは基本的に1及び2を継承、平日時間を5つに区切った学校・帰宅時の場所移動による好感度上げがメイン。
 そして本作、キャラクターのクリアパターンが2種類存在し、それは出会ったパターンから分類される。
 まずは好感度により単発のイベントが発生していき、最終的にエンディングに達する1のようなタイプ。
 それから各イベントがシナリオとして繋がって展開する、チェーンイベントを継承した2のようなタイプ。
 とはいえクリアする過程そのものは全く変化しません、基本的に対象キャラを追いかけていれば問題ありません。
 ・・・というか、どっちにしろ後者のような展開だったような気がしますが、製作者曰くなので深く考えないことにします。
 他本作のみのシステムとして、会話レベルというものがある。
 これはTLSシリーズの目玉となっている下校会話時の会話パネルそのもののレベルを表し、レベルは日常会話で上げることが出来る。
 つまり、この会話レベルが高ければ高いほど下校会話時に有効なわけです。
 ついでに、本作はデートに誘う際下校会話時に「誘う」というコマンドを使用していたのですが、これにも会話レベルが存在します。
 「誘う」会話レベルが低いとデートに誘えないのはおろか、下校会話に誘うことすら出来ません。
 そしてこの「誘う」レベルの上げ方ですが、これは通常会話ではなく定期イベント発生時に上がる仕組みになっています。
 話の最初から最後までの展開を表示すると、好感度上げ→特定イベント発生→誘うレベルUP→(繰り返し)→デート→エンディングという構成。
 好感度による特定イベントが一つの区切りとして存在し、それにより対象キャラとの関係が明確化していくわけです。
 それから本作、3にあったイベントアイコンを継承した「今日の目標」というのが設定されています。
 これは「○○さんに会おう」といった、その日に設定されたプレイ上での目安になります。
 他には特定イベントをほのめかした目標も表示され、ランダム的な部分が多いシリーズの補佐をしていることになる。
 さらに、特色として本作にはゲーム期間がありません。
 1・2は1ヶ月、3は1年でしたが、本作のゲーム期間は基本的に「終わらない夏」になります。
 つまり、期間が定められていないので、「対象となるキャラクターとエンディングを迎える」という最終地点に辿り着くまで延々に同じ夏の日が続きます。勿論 ある程度期間が過ぎればは終わりが来るのですが、それでもかなり長い期間を過ごすことが出来ます。はっきり言ってちょっと怖いです。
 シリーズの一つとして存在する本作ですが、前作等と比べて追加・変更された箇所は大体こんなところ。
 プラスになっている点もありますが、マイナスになっている点も多くあります。
 ・・・単品のゲームとしては面白いですし、個人的にもかなり好きなんですが・・・やはりどうにもTLSの名前が付いてしまうと、ちょっと首を傾げなければならないようなところも 多く見受けられるのがちょっと切ない、かも。

 良いところ。
 会話レベルという概念はかなり良い着眼点だと思う。下校会話時の会話パネル(各種話題)そのものにレベルを設定し、高ければ高いほど効果が増すというのは 正直唸らされた。そしてその会話レベルは各対象キャラクターとの日常会話で上げることが出来、つまりは対象キャラクターの特性に基づいた会話レベルが上がる仕組みといった 固有性を引き出し、今まで日常会話でのシーンにおいて「・・・さんと親しく会話した」といった曖昧な表現が「・・・さんと○○について会話した」という具合に具体性も向上するという 素敵システム。これはTLSとしての特性を活かした上での新機軸だと思う。日常出会って→好感度上げだけのパターンから抜け出したのも○
 あとグラフィック・原画、コレはファン内でも色々言われてるみたいだけど、幅広い顧客層を狙ったという点では評価出来るかと。
 ちょっとどうかと思うところ。
 本作は基本的に1日1日を過ごすタイプのADVなのですが、今作からその1日の終わりに「今日をやり直す」というコマンドが追加。コレはつまり、今まで対象となる キャラクターの登場がほぼランダムだったために、丸1日誰とも会えなかったという日があった→ロード実行という手順を踏んでいた背景を考慮して、最初からその1日を最初から やり直せるコマンドを付加させたというもの。
 確かに一概に悪いとは言えないのですが、「今日の目標」によりある程度の出現キャラクターやイベントへの道標があり、さらに本作は上述したように規定されたクリア期間がありません。 つまりランダム性を抑えられる設定の上でやり直しがきくシステムなために、この今日をやり直すというコマンドがどうにも浮いている感じがします。1や2にあれば、一ヶ月という期間ですから 最後の一週間で対象キャラクターを下校会話に誘えずに今日をやり直すという具合に出来重宝したでしょうが、Sのシステムだと完全に出現ランダムADVとしての特性すら放棄しているように 思えます。
 しかしコレは「今日の目標」を表示・非表示にも出来るので、あまり突っ込んだことは言えませんが・・・どうにもTLSのシステムをインターフェイスとして使用する意味が無いんじゃぁないかと。
 下校会話というシステムを使いたいがために、無理矢理TLSにしたような感じもなきにしろあらずです。邪推でしょうけど。

 TLSと謳ってはいますが、あまり気にせず何のことはなく普通の恋愛アドベンチャーとしてみた方がよいかと。
 システムの回りの良さ、キャラクターの表現、グラフィックに関しては及第点以上。単品作品としては問題なく楽しめると思います。
 世間的な評判も良いみたいですし、CSオリジナルとしては最近発売された中でもトップクラスであるのは間違いないです。
 ただかなりライトユーザー向けに製作されたらしく、全体的に生ぬるいのがちょっと残念。
 それから上記したように、TLSとして作品を評価するならば何とも言いがたいです。雰囲気などは確かにソレなのですが。
 切り口を広げて幅広いユーザー層を獲得しようとした姿勢は認めますけど・・・別にTLSじゃなくてもいいんじゃないかなぁ・・・
 このシステムで、1・2みたいな季節・学期ものだったら評価も変わったと思うんですけどね。夏に限定しなくても良かったかも。



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