エンジェルグラフィティ 〜あなたへのプロフィール〜

ハード/SS・PS
発売日/SS・1996年7月18日 PS・1996年7月26日
メーカー/ココナッツジャパンエンターテイメント
値段/6800円・限定版(PS版のみ)8800円
備考/限定版・ボックス使用、主題化シングルCD、書きおろしイラスト設定資料集etcetc
   SS版正式タイトルは「エンジェルグラフィティS 〜あなたへのプロフィール〜」


 ギャルゲーバブルの中、数多に発売されては消えていった作品の一つ。
 家庭用恋愛ゲームの絶対数の少ない中、後世に典型的な失敗例として礎を築いた功績は大きいが。
 製作プロデューサーは寺田憲史&まつもと泉という黄金コンビ、自分オレンジロードとか結構好きなんだけど・・・けど?

 天使達の暮らす天上界・・・純愛を守護する天使・イヴと、激情愛を守護する天使・フレイヤの抗争が続いていた。
 数千年の戦いの後、イヴが勝利を収め・・・敗れたフレイヤは封印され、海中深く静められた。
 時は流れ、その場所には学園が建てられ・・・天使イヴは、今でも暖かく恋の行く末を見守っているという。

 とか、そんな。
 事前設定がファンタジーなのはいいんだけど、天上界が唐突に人間界になってるとかそんなことは気にしない。
 多分、天上界が一度滅んで、そこから人間の世界が構築されたという設定なんだよ・・・恐らく・・・(イヴも石像化してるし)
 で、そのイヴの石像が祭られている天使が丘学園がこのゲームの舞台。ちなみに所在地は横浜。
 ・・・横浜は怖いトコロだZE。
 システムはオーソドックスな自己育成→デート→繰り返しのシミュレーションタイプ、特筆するところは無い。
 ただ従来(当時)の一週間を同じコマンドで過ごすタイプの作品とは異なり、その上で一日に3つのコマンドを選択する仕様になっている。
 つまり、結果的に同列系の作品よりも3倍近くの時間と思考を要求することになる。
 正直言って、大した意味は無い・・・ユーザーに自由度とリアル感を与えたかったのだろうが、余計にストレスが溜まるだけである。
 この時期の作品には、自作のポイントとしてお金の概念を取り入れることが多いのだが、本作もそれにあたる。
 アルバイトというコマンドの導入や、お金の概念によりデート・プレゼントに現実感と達成感を持たせようとしている姿勢が見える。
 ただし、こっちの財力が全く無いと何も出来ないというところまでキッチリ際限されているので、色んな意味で辛い。
 つまり、ゲームの中でここまで気苦労をする必要性があるのか・・・と、疑問が湧いてくるのである。
 もちろんゲーム性を出すためには良い選択ではあるのだろうが、人間的にメンタルな部分を題材にしているので・・・正直難しいところだ。
 ここのあたりの感覚は、後の動向に激しく影響を与えていく訳だが、ここでは割愛する。
 当時の主流を自でいってるだけで、特に目立った特異性を持たない本作だが、強いて言えばシナリオが存在するということだろうか。
 この手のシュミレーションタイプは、学園生活内の突発イベントが個々に存在し、それがキャラクター性を出すという仕組みになっている(当時)。
 そんな中、この作品にはキチンとイベントとイベントが直結するシナリオが用意されている。
 正直に言わせてもらえば、日々の無駄なシミュレーションパート・・・それらをどうにかすれば、そこそこの作品にはなっていたのではないだろうか。
 まさしく、「恋愛ゲームはこのシステムでなければいけない」といった先入観と、迷走により台無しになってしまった代表例である。

 正直言ってオススメは出来ない。
 無駄に時間がかかり、ストレスの溜まるシステム。多すぎるキャラクターに、希薄な存在感。
 当時ですらプレイするのは辛かったのだから、今だとすでに拷問と言えるだろう・・・黒歴史のまま埋めておくのが一番だ。
 中古では500円程度で売られているのが普通なので、まぁコレクションとして置いておくのは悪くないかもしれない。
 ちなみに、俺は限定版を700円で購入した。主題歌CDが欲しかったからね、純粋に。
 ・・・買う時スゲェ恥ずかしかったなぁ・・・
 まとめとして、この作品はゲームそのものとして評価するよりも、家庭用恋愛ゲームの歴史上としての評価をするべきだと思う。個人的には。
 ときめきメモリアルが売れて、「恋愛ゲームは金になる」と商品価値を見出してきたメーカーがこぞって参入した当時。
 そんな中、自ブランドの特異性を出そうと必死になりながらも、参考になるものが無く、結局はときメモの劣化コピーとして成り下がるしかない。
 アニメ・漫画で実績を持った寺田・まつもと両氏を起用したのも、恐らくそれらのノウハウを活かせば売れるゲームが作れると思ったのでしょう。
 (実際のところ、設定資料集の対談等で見ると・・・両氏がゲームを作りたい、と発案した訳ではなく、依頼されたという経緯であるようだ)
 これにより、恋愛ゲームというそのものの特異性が表面化してきたのだと思う。
 漫画的・アニメ的な表現も悪くはないのだが、結局土俵はゲーム・・・活かすも殺すもシステム次第である。
 もちろんこれからも自己育成シュミレーションタイプは氾濫するのだが・・・着実な進化を遂げていくことになる。
 エンジェルグラフィティという作品は、あらゆる恋愛ゲーム応援ページで酷い言われ方をしているが、それはあくまで単品作品としてのこと。
 歴史の上では、「偉大なる失敗」をした重要な作品なのである。



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