Erde 〜ネズの樹の下で〜

ハード/PS2・DC
発売日/PS2・2002年12月19日 DC・2003年8月7日
メーカー/KID
値段/6800円
備考/-


 KID作品では珍しく、物語の舞台が現代日本ではない。
 異世界・・・でもなければ、別に数年後の地球といった世界でもない。どことなく地球に似てる別の世界、といったところか。
 別世界モノは、その世界設定や感覚のズレなどを表現するのが難しいが・・・この作品はどうだろうか。

 人が若くして、その生涯を終えることに何も疑問を持つことのない世界。
 各地に存在するネズの樹に見守られ、現実世界と、タウンと呼ばれる大型仮想空間の2つの世界で暮らす人々。
 そんな中平凡に日々を生きる主人公・タクミの生活は・・・物置に一人の少女がバイクで突っ込んだ時から変化していくのだった。

 事前世界設定がかなり希薄なので、作品世界に入り込むまでにはかなり時間がいるかもしれない。
 作品世界での常識を基準にして話が進むので、プレイヤーとしてはどうにもゲームとの距離が開いている感が否めない。
 それでも、話を進めていくうちに、この世界はどういう世界なのかが語られていくわけだが・・・
 あまりのめり込めるようなものではないかもしれない。
 システムは典型的なテキストノベルアドベンチャー、選択肢を選んでシナリオが変化するタイプ。
 小説として読めるような文章ではないので、ライトノベル感覚で読むのを推薦しておく・・・
 と言いますか、この作品の文章レベルは従来のKID作品と比べて見ても大幅に下だと思うのだが・・・どうだろう。
 ビジュアルに頼りすぎている部分もあるし、表現の一つ一つが簡素すぎる気もする。
 いくら作品世界での日常を描いているとは言え、説明不足な個所も多く見られる。把握し辛い場面もいくつかあった。
 (説明口調過ぎるのもたしかに嫌だが、それはシナリオ上での展開から合理的に説明することも可能では?というのも踏まえてである)
 それはもちろん、俺個人の読解能力や感性が乏しいのかもしれないが・・・
 まぁ、テキストはどことなく「先を急いでいる」感じではあったかもしれない。早く世界設定を伝えたい、というような。
 実際プレイ時間もそれほど長くはなく、3時間前後といったところだろうか(既読スキップを用いての場合。初回はもう少しかかる)。
 そしてグラフィックの方だが、一部どうかと思うものもあるものの、個人的には及第点。
 キャラクターデザイナーが描く版権イラストや、原画を手がけているであろうイベントグラフィックにも問題は無いのだが・・・
 通常の立グラフィックにおいて、どうにも一部のキャラクターがぎこちない線をしている。
 表情の変化を見ると、もう目も当てられないのも中にはある・・・
 恋愛ゲームの顔とも言えるグラフィックを、単純に好き・嫌いという判断では無く嫌悪するのは・・・非常に珍しいことだ。
 もちろん全てのキャラクターではなく、一部、である(あえてキャラ名を上げるが、エナは凄いと言うか・・・酷い)。
 テキスト・グラフィックと共に、従来のKID作品よりも素人臭いような気がするのだ。外注かしらん?
 あまり細かくスタッフを気にしない性分なので、スタッフリストを見て、今までの作品とを評価することは避けるが・・・
 とにかく、かなり少ない人数で製作したのは間違いないようである。

 というわけで、どうにも個人的には頂けない本作。
 胸を張って「オススメ」と言える作品では無いが、「これだけは止めておけ」というような作品でもない。
 ただ、無理をしてまで買うような作品でもありません。あしからず。
 上記したように、テキストやグラフィックも今一つですし、作品世界設定も実際それほど度肝を抜かれるものでもないです。
 この作品でなければ味わえない・・・といった感覚がそれほどあるわけでもないです。キャラとしても、シナリオとしても。
 (エナのエンディングには、正直背筋に寒いものが疾るのを感じましたが・・・それくらいでしょうか)
 お金と時間に余裕がある方なら、挑戦するのもいいかもしれませんけどね。



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