Lの季節 A piece of memories

ハード/PS
発売日/11999年8月5日
メーカー/トンキンハウス
値段/6500円
備考/初回限定版にはトレーディングカード(1種)・描き下ろしジャケット(4種)が同封。
   初回版と通常版ではジャケットイラストが異なる


 こと恋愛ゲーム業界には、思いがけないメーカーがいきなり参入してくる場合が多々ある。
 本作もそんな一本で、トンキンハウスと言えばマサカリ伝説の記憶しかない俺は色んな意味で驚きを隠すことが出来なかった。
 ついでに言うと、下手に人気が出てしまうとメーカーの方向性まで変わってしまうというジンクスもあるのだが・・・

 似ているようで異なる2つの並列世界、それが現実界幻想界
 新聞部に所属する現実界主人公・上岡進、バンドリーダーとして活動する幻想界主人公・桐生真。
 彼らの物語は、奇妙なペンダントを手にした時から始まる。

 説明が色々と面倒な本作。
 これらの複雑な設定が売りの一つでもあるのですが、まず本作は舞台となる世界設定が2つ存在します。
 上記したように、基本設定を現実に依存する現実界と、ファンタジー要素が入り混じりながらもどこか現実的な幻想界。
 ゲーム本編では、そのどちらかのルートを進むことになる。
 システムは基本的なノベルアドベンチャーをベースに、特殊システムを積んだ変則型。
 ちなみに現実界・幻想界どちらのルートに進むのかは、本編開始最初の選択肢によって決定されます。
 特殊システムのひとつ「口出しシステム」では、通常のシナリオが進む中特定の場所でのみ発生し、対象のキャラに口出し出来るというもの。
 これは基本的に対象キャラの意見・意思が表示されるシーンで発生し、プレイヤーはそれに対し口出しが可能になる。
 口出しせずにそのまま無視していってもいいし、口出しすることによって対象キャラ好感度を上げたり下げたり調整するのも有りである。
 ただこの口出しシステム、タイミングがセリフが表示される1シーンのみということと、スキップすると通り越してしまうデメリットも。
 他に「エモーショナルグラフ」というものがあり、これは登場するキャラクターの感情の度合いを示すものである。
 いわゆる好感度を表示するグラフで、これらの度合いでルートやシナリオが変化する場合もあるので様注意。
 それから「相関図」、誰が誰のことをどう思っているかを表示するものです。
 本作は人間関係がかなり複雑なので、登場するキャラクターのほとんどが相互にそれぞれの感情を持ち合わせています。
 否定的・好意的感情をそれぞれが抱いており、一方での影響が他方への影響を及ぼすことが多々ある。
 この相関図を考慮すると、例えば口出しシステムにおいて対象キャラの好感度をあげた場合、その対象キャラとの関係が
 友好的なキャラは相乗され好感度が上がり、否定的なキャラは逆に下がるという仕組み。
 これを上手く利用すると1人のキャラクターに絞って好感度を上げられるので、慣れてくるとかなり有効な手段になります。
 TIPSと呼ばれる作中の単語を詳しく解説してくれるシステムもありますが、それはまぁゲーム本編に影響を及ぼすわけではないので割愛。
 それともう一つ大きな特色としては、本作のシナリオを全て空間化した3DMAPが存在する。
 これは視覚的にゲーム本編を示したものであり、どこのルートを通り、どのルートを通ってないかが分かるようになっている。
 少々見づらいところもあるが、謎や裏設定が多い作品のため、まだ到達していないルートに対し色々想像が膨らむ。
 複数ルートを完全制覇する、いわゆる達成度を明確に提示したのは評価するところではあるのだが、残念ながらそれは強みでもあり弱さ。
 この本作の達成度を100%にするためには、もう数十時間は覚悟しなければいけないくらい面倒なので・・・

 本作の魅力はキャラクターの人間関係やら世界設定やら、表面的ではないものの方に依存します。
 シナリオやテキストもちょっと誤魔化し・はぐらかしを効かせた箇所が多くあるので、直球勝負なのが好きな方は止めておいた方が得策。
 ただし複数の情報一つ一つから世界を整理するのが好きな理論派や、若干のミステリもあるのでそちらが好きな方はどうぞ。
 ちなみに書くと、恥ずかしながら自分自身は本作をそれほどプレイしてはいないので、大それたことが書けません。
 あの妙に虚無的な雰囲気に慣れなかったので・・・落ち着いたら改めてプレイしてみようかと思います。
 客観的な評価に寄ると、世間的には結構人気があるようで。実際のところ本作製作後のトンキンハウスの方向性が変わってしまったのも事実。
 この手のゲームが売れてしまうと、やはり抜けられないようですね。KIDとかが典型的ですが。



戻る