硝子の森

ハード/PS2
発売日/2002年10月24日
メーカー/D3パブリッシャー 
値段/2000円
備考/SIMPLE2000シリーズ


 SIMPLE2000シリーズ・女の子のための恋愛アドベンチャーとして発売された作品。
 そんなワケで本作は乙女ゲー・ガールズゲームと呼ばれるジャンルのゲームですが、俺は男なので男性視点での紹介ということは了承を。
 それにしても、タイトル聞いて反射的にライライ言いたくなるのは俺だけだろうか・・・

 季節は夏、祖父が残した古い洋館を整理するため、山深い里・鏡面にやってきた主人公・高村深鈴。
 その里を取り囲む、「迷いの森」と噂される神秘の森・・・
 彼女が足を踏み入れた森の奥に忽然と現れたのは、カフェ・プリズムと不思議な少年達だった。

 タイトルですでに「女の子のための」って書いてあるにも関わらず、それを無視して購入する男。
 それにしてもD3パブリッシャーが出す低価格のガールズゲームって、大体は「女の子のための」って前置きがつくな。しかし、わざわざ女の子の ためのって強調しなくともいいと思うんだけどな。主流の恋愛ゲーム(主人公男対象女型)で、「男の子のための恋愛アドベンチャー」とかって 書かれたらどうなるだろう。意味は全然変わらないのに、何だかとても切ない。どうでもいいが。
 まぁそんなことはさておき、システムをば。
 基本的にはオーソドックスなテキストアドベンチャー。テキストで進行する話を、ところどころ挿入される選択肢によってシナリオが変化するタイプ。
 各種周辺設定に関しても、既読・未読スキップやバックログ等、この手の作品に必要なものは大抵揃ってプレイ環境は問題ない。D3も開発に こなれてきたと言うべきなのだろうか(実際に開発しているのは別のメーカーなんだろうけどね)。
 そんなワケで、テキストアドベンチャーとしてはほぼ問題なく楽しめる土台はあると言えます。
 問題となる内容の方。
 まず、本作はあくまでテキストアドベンチャーであって、ノベルアドベンチャーではないことに注目。本作を構成するテキストはノベルの形式を 取っておらず、状況説明などといった描写も全てキャラクターのセリフのみによって導き出されます。つまり、単純に言うと「キャラクターのセリフしか テキストで存在しない」ということです。
 ノベル的な面白さ・・・一人称系なら、主人公から見た世界へのセリフ以外で構築される全ての心理描写や、テキストによって導き出される効果的な演出 などといったものは一切ないものと思ってください。勿論そういった描写もないわけではないのですが、それら全ての表現がキャラクターのセリフによって 表現されるため、何だかちょっとあまりにも説明的過ぎて肩透かしを喰らったシーンが多いのが残念。
 辛い過去などを持ったキャラがいるとしますと、そのキャラ自体が自分の過去を独白し・・・色々とそれっぽいセリフを言ってくれるんですが、どうにも 「それは本人が直接言っちゃ駄目だろう」って感じがします。例えば、幼い頃愛されずに育ってきたキャラクターが、「誰も俺(私)を愛してくれなかった!」 とか、さも何かを期待しているかのようなセリフ回しになってしまっているっぽいのがちょっとアレです。
 ですが全体の雰囲気としては中々良いです、幻想的な森に迷い込んだ少女と、池のほとりに佇むレトロな喫茶店に集まる少年達。ガラスの森というタイトル も結構サマになっている。舞台が夏の田舎なので、そういった少女と真夏の幻想を味わいたいというのなら問題ないかと。少女漫画的でもあるので、表題は 伊達じゃないとも言える。
 悪いところとしては、とりあえずグラフィック。女性受けするグラフィックがどのようなものか生憎と分からないのは難なのですが、とにかく着色がキツイ。 無駄に血色が悪い肌(儚さを表現した、もしくは作中のイメージに合わせたというのなら納得・・・いくかなぁ)に、変に光沢のある髪など。原画に関しては妙に 鋭利で触れたら切れそうな髪が気になります、それ以外はちょっと癖のある絵だなぁと思うくらい。
 あとはシナリオの分岐。元々SIMPLE作品なので1プレイそのものの時間は短いのですが、各キャラクターへの分岐がちょっと希薄だったかと。攻略しよう と思ったキャラをメインに進めてみても、大して個別イベント・シナリオが起こっていないのに、クライマックスでいきなり核心についたような話が展開してしまう ような感じ。あと、お互いを好きと認知する過程が甘いので、ちょっと展開が突然過ぎるような気もする。
 良いところ。上述したように雰囲気は結構良く出てますし、話も物足りなさと急展開なのが気になりますが、小奇麗にまとまってスマートなところに好感が持てる。 設定自体も特筆するところはないかもしれないが、作品の雰囲気に相成って手堅くも良い味になっている。
 それから、本作の主人公は最初に「女子高生」「女子大生」「OL」の3つから選べるのですが、その変更によってきちんとテキストが書きかえられてる細かい配慮 もちょっと感度した。メインターゲットのプレイヤーでもある女性に対する感情移入の口を広げたのだろうな。

 正直期待しないでプレイしたので、その意外な面白さに面食らった。
 確かにキャラクター表現が希薄で、シナリオなどの詰めが甘いなど問題点なども多く見受けられるのですが、何と言っても雰囲気が良い。
 少女の幻想、真夏のまほろば。夏を舞台にした作品は多いですが、本作はそれを森に特化して、実に幻想的な雰囲気の表現に成功しているとも言える。 それが少年ではなく、少女の視点というのもまた良いものがある。もしかしたら、キャラクター表現が希薄なのも、こういった雰囲気を構成する一つの要因としての配置 にしたからではないかとも思える。何というか、登場する青年達の存在感がまるでないのだ(良い意味で)。
 まぁそれでも様々なところに癖はあるし、あまり万人に進められる作品ではないのは確かだ。元値が安いので挑戦してみるのもアリかもしれないが、あまりオススメはしない。 本作をオススメ出来るのは、雰囲気に特化した作品が好きな方くらいなものです。
 それから声に関してはフルボイス、主人公含めて全て喋ります。声優陣に関しては、ガールズゲームというか女性向けでは良く見かける名前が連なっています。 緑川光とか子安武人とか・・・そんなワケなので、声優目当てで買うのも悪くは無い、かも。
 俺は結構楽しめたので、男性でも割り切れれば大丈夫かも。主人公可愛いし。

 どうでもいいけど、プレイし終わった後に何となく「思春の森」を思い出した。自己嫌悪に陥った。



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