双恋 -フタコイ-
ハード/PS2
発売日/2003年10月9日
メーカー/メディアワークス
値段/通常版6800円 初回限定版9800円
備考/初回限定版・特製缶パッケージ仕様 プレミアムDVD・キャラクタースタンプ同封。12歳以上推奨


 美少女ゲーム専門雑誌、「電撃G'sマガジン」誌上で展開された、読者企画をゲーム化。
 内容を簡潔に書くと、「アナタの元にとびっきり魅力的な6組の双子の美少女がやって来た!」という、つまるところ 「双子」を全面的に押し出したものとなっている。何とも末期的なプロットだが、企画はともかくゲームとしてはどうなのだろうか。

 主人公は、新学期を迎えた中学二年生。両親が海外赴任のため、本日付で隣町の親戚の家で暮らすという、正に 新しい生活が始まる
 だが、厄介になる家の娘さんも双子、一年ぶりに再会した幼馴染みの女の子も双子、自分に惚れたと転校までしてきた双子美少女や、 昔隣に住んでた双子のお姉さんも教員としてやって来て…彼の新生活は、一体どうなってしまうのか!?

■はい、頭悪いですね
 いや、登場キャラクターの全てを「双子」に統一するという発想は別に悪いと思いませんが…それでも、色々と制約が出てきてしまうんですね。
 最初にまず述べてしまうと、「本作は恋愛ゲームではありません」。これは、制作サイドでもちゃんと意識してそう作ってあると思います。
 「G's」読者企画作品のゲーム化というと、「シスタープリンセス」や「HAPPY☆LESSON」が有名だと思いますが、この二作品も恋愛ゲームと して扱うことの出来ない作品です。そして、「双恋」もほぼ同様の理由により恋愛ゲームとして扱うことが出来ません。
 まぁ、早い話が「作品開始時点でほぼ全キャラクターがデフォルトで主人公にベタ惚れ」というのがネックになるワケです。
 そこには「結果的な恋愛関係」も、「過程的な恋愛要素」も意味を成しません。ただ、主人公を取り巻く美少女キャラクターとの甘い日常を強制的に 見せ付けられるだけです。そして、申し訳程度に「ゲームの終わりを提示する」だけの結果が提供される。
 これは、「誌上における読者参加企画」を無理矢理ゲームに転換したからとも言えます。
 偶像として存在する誌上のキャラクターに対し、複数人数の読者がアプローチをかけることにより、キャラクター自体が変動する。あくまで キャラクターは単純な個性としてそこに存在し、読者の玩具になることで、読者の要求が充たされる。
 単純な構図ですし、企画としては問題ないと思います。
 ただし、そのキャラクターを特化させることをに全ての命題を置いているため、不可能なことが出てきてしまう。
 それは、いわゆる「一本の話として構成されたシナリオの付加」が出来なくなってしまうのです。
 ユーザーの希望によって形成されていったキャラクターには、それこそ一つの個性としての存在価値しか与えられません。つまりシナリオという 副次的な要素によって構成される、「提供者が作り上げた物語のヒロイン」にはなりえないんですね。
 例えばそのシナリオが与えられてしまった場合、ユーザー達によって形成された対象キャラクターの存在が、良い意味でユーザーの玩具として 存在を許されているキャラクターが、提供者という神の名において「シナリオの変動によって、オフィシャルで確定された別の存在」になってしまい、全て台無しになってしまうからです。
 だから、この手の作品がゲーム化された場合、シナリオの付加が不可能になるんです。
 制作サイドだって、わざわざ商品の存在の根底を狂わすようなことをしないでしょうから。
 個人的には…こういうの好きじゃないですけどね。

■…と、そんなことを思いながら、システムをば。
 基本的なものは、場所移動型のアドベンチャー。主人公の学校を中心にして、MAP表示された街中を選択・移動していくタイプ。
 各移動場所にはキャラクターアイコンも付加しているので、基本的には一組の双子を追いかけているだけでクリア出来ます。
 ただし、この場所移動型のADVへ移行するのは、序盤をやや過ぎた辺りで、物語開始冒頭にはオープニングスーリーとして設けられた…いわゆる、作中に登場する6組の双子を登場・紹介 させるだけの、作品のアピールポイントの土台を明確に築くパートがしばらく続きます。
 ちなみに、このオープニングパートは二週目以降でも飛ばす(パート自体をスキップ)ことが出来ないので、製作者も分かってらっしゃる。
 さて、このオープニングで6組の双子に何故か好かれてしまう主人公。さらに、まるで強迫観念に押させるように、こんなことを考えます。
 「一体どの娘たちが気になるだろう?」と。
 ここで6組の双子のいずれかを選択することによって、各キャラクターのメインルートが制定します。で、ここから前述したADVパートへ。
 確定されたルートは、第○○話と、対象双子に沿った一つのハプニング・イベントが一話として扱われ、選択・読み進めていくことになります。この話数自体は 全組で一律しているワケではなく、それぞれで話数の変動もあるようです。
 しかしこの双恋、ただキャラがいる場所を選択→とりあえず、なんか選択肢→好感度UP→繰り返し→エンディング…と、単純な構成をしているワケでは ない。いや、実際はそうなのだろうが、意外にもややこしいシステムがいくつか搭載されている。

 「ジャンクションシステム
 ジャンクション、つまるところ交差・交差点である。
 これはオープニングパート終了時、選択したいずれかの双子のルートが確定され進行している状態で、特定のイベントを発生させた場合に発生。
 …まぁ、早い話が「現在進行している双子のルート」を破棄し、「別の双子のルートへ移行する交差点」と考えた方が早いでしょう。
 ジャンクションシステム発動時に選んだ選択肢で(システムといっても、選択肢を選ぶだけです)、ルートが変動します。
 1プレイで、色々な双子のルートを楽しめる…というのが制作サイドの狙い目でしょうが、結局のところこの手のゲームはオンリープレイがデフォルトなので(言い切れないけど)、 あまり意味の無いシステムだとは思います。けど、キャラクター特化の作品だから、別に悪くはないのかな。

 「ツインビューモドード
 ツインビュー、単純に書くと二つの画面。
 本作の醍醐味は、何と言っても「双子」につきます。ですので、システムもそれに沿ったものが設計されているようです。
 ツインビューモードは、その名の通り画面を二つにバッサリと断ち切って、左右にそれぞれの双子の片割れを表示させ…(よくある落ちものパズルゲームの画面を想像してもらえれば、 分かりやすいかと思います)…その二つ表示された画面の大きさによって、ツインビューモードが発生している間の、対象になる双子の好感度がどちらに傾いているかを計るシステムである。
 ツインビューモード発動時には、通常よりも長い会話・選択肢が用意され、その選択肢によっては左に表示された娘の好感度が上がり、その表示の度合いが大きくなったり…右の娘の表示度合い が小さくなったりと、視覚的に「どちらの好感度が上がっているか」を確認することが出来ます。
 ただし、ここでの「好感度」は、進行中のツインビューモード内でのみ影響を及ぼす。
 このツインビューモード時では、この「高感度」をいかに双子それぞれのバランスをとって終了させるかが鍵になります。簡単に言うと、どちらか片方の娘の好感度ばかり上げる選択肢を選んでは 駄目で、互いの好感度の均衡を保つような選択肢を選ばなければなりません。
 視覚的なものでいうと、ちょうど二人が表示されているツインビューが、画面を中心にして真っ二つの状態を維持しろ、ということなのですね。
 そのバランスがどれだけとれているかに対してボーナスが発生し、ツインビューモード終了時に始めて、本ルートでの好感度が清算されます。
 面白いですよね?
 本当に、「二人一緒」が根底にあるシステムとしか言いようがありません。良くも悪くも。

 「バキューンシステム
 バキューンですってよ、奥さん。
 これはツインビューモード時に発生し、単純に言えば「ボーナス選択肢」。
 ここでの選択肢が的確であれば、ツインビューモード終了時にバキューンボーナスとして、追加好感度がプラスされます。
 それにしても…バキューンはどうかと思う。

 勝負の分かれ目は、やはりツインビューモードか。
 単純にキャラクターを持ち上げる選択肢を選ぶのには慣れていても、同時に進行する二人の好感度のバランスを保つ、というのは中々難しい。
 着眼点は上手いと思った…けど、やっぱり、その根底にあるものがなぁ…

■その他周辺システムなど。
 セーブ・ロードは一日の終わりに可能。一日のサイクルがそれほど長いわけではないので、いちいち夜にデータ管理画面が表示されるのはちょっと 鬱陶しいですが、まぁそれほど気になるものでもないかも。
 データは128KBで、システムデータ、各種セーブデータを12個まで保存可能。悪くない。
 ただ、スキップ機能が強制スキップ(しかも、ボタン押しっぱなししか対応していない)であることや、ボタンを1プッシュだけで対応してくれるメッセージ自動送り機能(ほとんどスキップ) も、音声のあるセリフ部分では停止してしまうという、ちょっとあんまりな仕様。
 一応ボイスON/OFF機能がついているので、ボイスOFFにしてスキップさせることも出来ますが…何だかなぁ。
 環境設定は、上述したようにボイスON/OFF機能・ゲームスピード・ボリューム設定等、基本的なものは揃っています。
 単純に、読み進めていくタイプのADVとして見るならば、特にプレイ環境に問題はないかと。

■そんなワケで。
 本作をまずプレイすることの前提として置いておきたいのは、「読者企画である『双恋』が好き」なことと、「単純に(偶像として表現された)可愛い女の子との日常にどっぷり浸かりたい」ことの、 どちらかに当てはまるかどうかです。
 そのどちらにも当てはまらない人…例えば、シナリオや演出を評価の比重に置く人、偶像としてではなく単一化された個性としてキャラクターを評価する人。そして何より、読者企画の延長線上で しかない作品なので、単一作品として認めることが出来ない人。
 そういった視点でギャルゲーを評価する人は、プレイすることを止めた方が身のためです。
 あまりにも甘ったるくドロドロとした日常を垂れ流すだけの構成に耐性がないと、恐らく精神が崩壊してしまうことでしょう。
 ぅ〜ん、俺はやっぱ駄目です!こういうのは趣味に合いません。
 ただし、やっぱ読者企画「双恋」が好きな人、純粋に美少女キャラクターが好きな人。良い意味で、深く考え込まず単純な視点で作品を評価出来るような人であれば、多分楽しめるかと思います。
 そうだねぇ…良くも悪くも「ギャルゲー」だし、「キャラクターゲーム」としては成功して…るかな?
 俺は好きじゃないがね。

■早い話が、ゲームの「双恋」は読者参加企画として展開する「双恋」プロジェクトの一環でしかない。ということですな。
 つまるところ、センチメンタルグラフティが一つの現象であったと同じように、双恋も単にゲームだけの評価は不可能、みたいなもので。
 まぁ、ここでは、そのゲームだけの紹介をしてみましたが、やはり単一のゲームだけではあまり意味を成さないみたいです。
 そういう意味では、「商品としてのゲーム」を見事に体現しているとも言えますが。




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