漂流少女

ハード/PS2
発売日/2003年7月24日
メーカー/D3パブリッシャー・SIESTA
値段/2000円
備考/SIMPLE2000シリーズ


 SIMPLE2000シリーズ・THE恋愛ホラーアドベンチャーとして発売された作品。
 その肩書きだけで、B級好きならいてもたってもいられなくなること必至。しかもD3パブリッシャーの息がかかってるときた。
 発売された他SIMPLE恋愛シリーズと比べるといまいち知名度やインパクトに欠けますが、実際の内容は・・・

 主人公・南雲龍平とその友人達は、夏休みの花火大会の夜に肝試しをやるために廃校を訪れる。
 そして足を踏み入れた彼らを襲う幽霊、突然の大地震。
 気を失い目が覚めると、そこは校舎ごと地中に埋もれた中・・・彼らの脱出劇が始まる。

 ・・・何かこういう出だしの映画が昔あった気がするな・・・よく覚えていないが。
 「平凡な日常から恐怖のどん底へ、そしてそこから這い上がる」系の作品ではありますが、比較的ライトな仕上がりになっています。
 確かに何の複線もなく「本物の幽霊が出た」「逃げろ」「閉じ込められた」じゃ、さすがに首を傾げたくなる。
 内容のことは後に記すとして、まずはシステムをば。
 この手の脱出系アドベンチャーでは比較的スタンダードな、場所移動型の詮索・進行タイプ。
 とは言えかなり簡略化されており、廃校内部の場所移動→各場所詮索→選択によるアイテム及び進行のヒント→繰り返しとなっている。
 本格派アドベンチャーとは違いプレイヤーの選択が非常に狭いので、まず迷うようなことはない。
 そしてこの廃校詮索時の行動をクリア対象となる女性キャラクターと共にすることで、好感度上昇・イベント発生という仕組みだ。
 本編は1日刻みで進行しており、朝方に行動を共にするキャラクター選択・食料分配を指定する。
 食料分配は、主人公含む閉じ込められた6人に対し、適量の食料を与えるというシステム。
 各キャラには体力が設定されており、それは1日ごとに減少し、0になるとそのキャラクターは死亡してしまう。
 食料を規定量分配することによって、それを回避することになる。
 その規定量は各キャラごとに異なり、食料はアイテムとして校内から拾ってくることによって増加する。
 体力はイベントや戦闘で減少することもあり、その場合は規定量よりも多めに分配すれば対象キャラの体力が増加することになる。
 上記したように、本作には一応戦闘というものが存在する。
 戦闘と言うには少々目劣りするが、校舎をうろつく幽霊が相手になり、主人公は行動選択型の戦闘を強いられる。
 この時選択肢を間違えれば体力減少・ゲームオーバーという結果もありうる。
 これらをどうにかしながら、本作のストーリーは進んでいくということになる。
 システム回りに関しては特筆することもない、地味目ではあるがそれこそシンプルにまとまっているとは思う。
 既読スキップ・バックログ・CGモードなど基本は抑えており、周辺システムもそこそこ。
 ただし難点もいくつか。
 ホラーアドベンチャーと銘打っている本作ではありますが、全くもってホラーとしてもアドベンチャーとしてもお粗末な出来です。
 小学校低学年向けの児童文学系のホラーという印象を受けました、内容はほとんど子供騙しと言っていいでしょう。
 御都合主義的な展開や、矛盾・どう考えてもおかしい設定などがわんさか出てきますので、そういうのを気にする方は門前払いにあうこと必至です。
 そして脱出系アドベンチャーとして見た場合ですが、プロセスがあからさま過ぎてプレイヤーが悩むような場面はありません。
 ついでに脱出までの過程は全て一本道なので、複数キャラをクリアする場合かなりしんどいです。
 ファーストプレイで約2時間、既読スキップを使い他キャラでクリアする場合だと1時間を余裕で切ります。
 確かに短い分まだいいんですが、それでも同じ謎解きをするのはちょっと辛いですね。
 この3点が特に目に付いた難点ですね、その他はそれほど気になるような箇所はありませんでした。
 グラフィックに関しては女性・男性キャラの比率が異なることに疑問を持たず、絵柄が多少同人臭いのが平気なら問題ないです。
 声優はまぁ・・・棒読みじゃない分素人演技よりはマシな程度です、気にならないなら大丈夫かと。ちなみに音声は女性キャラのみです。

 良い意味でも悪い意味でもSIMPLEシリーズの範囲を出ていない作品です。
 システム・シナリオ・グラフィック・キャラクター・・・ゲームを構成する全ての要因が平均より一つ二つ下だと思って下さい。
 今までのSIMPLEシリーズにはそれぞれ特筆するものが一つはあったはずなんですが・・・ちょっとコレは酷いかもしれませんね。
 そういうわけでいくら2000円とは言えオススメはしません、黙って見過ごすのが得策です。
 ただB級・C級作品をこよなく愛する方や、進んで地雷特攻するのが好きな方はこの限りではありません。
 参考までに個人的な意見。
 確かに普通に考えると面白くもないし、好きとも言えないののですが・・・純粋に楽しめた作品ではあります、色んな意味で。
 この煮え切らなさととってつけたような展開、微妙なシナリオや伏線も立ちもあったもんじゃないキャラクターは中々味があります。
 こういう肩を抜いてプレイできる作品が好きな方、発信される情報全てを楽しめるような方にはちょっとだけオススメしておくことにします。
 ・・・エロゲーにした方が冴えた作品だと思う、個人的に。



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