Iris

ハード/PS2・DC
発売日/PS2・2003年2月28日 DC・2003年8月7日
メーカー/KID
値段/通常版6800円 初回限定版7800円
備考/初回限定版・むーちゃんパペット同梱


 中学生の学園生活を描いた、家庭用でも珍しい作品。
 製作がKIDなので、プレイする前は中学生に一体どんなことをさせるのだろうかと邪推したものだが・・・期待は裏切られなかった。
 否定的・肯定的に捉えるかは個々の自由だが、この作品は遠巻きに「恋愛ゲーム」というスタイルを否定した問題作なのである。

 主人公・瀬戸原治樹は高校受験を控えた中学三年生。
 そして彼の前に現れる、自分を知る不思議な少女・あやめ・・・彼女の存在は、何故か自分にしか見えなかった。
 これは夢・・・それともユメ・・・

 ぱっと見ても、本作に結構な力を入れている姿勢がうかがえます。
 グラフィックに関しても本絵のイメージをほとんど崩さずにディフォルメ化していますし、システムも今までの焼き回しではありません。
 正直、この力の少しでもいいから「Erde」に注いでくれたらと思うくらいです。
 (ErdeとIrisは平行製作だと思いますが、シナリオはともかくグラフィックのスタッフをErdeに分けて欲しかったです・・・)
 某週間ゲーム雑誌でも好評価を得ていたようだ(が、その雑誌の評価は当てにならないので特に付加価値は無いですけど)。
 システム自体はオーソドックスなテキストノベルタイプ、ただしそのインターフェイスは特殊で、従来のKIDベーシックではない。
 パッドのボタンの組み合わせで行う各種ショートカット機能を備えており、これが中々良く出来ている。
 文章スキップやオートモードなどの設定も細かく、個人的にはとても好印象なスタイルだった。
 おまけ要素に関する周辺設定も平均以上で、KID作品では久々にシナリオ達成率などの項目も加わる(100%の意味があるかは不明)。
 シナリオは、MemoriesOffで音羽かおるシナリオを担当された高瀬伸氏。
 メモオフでのテキストに対しても思ったのですが、氏の書く文章は思わせぶりな描写をしておきながら、それが消化されていない節があります。
 各所の表現や、キャラクターの描写は個人的に好きなのですが、それらが統制仕切れていない感じだ。
 個別シナリオまでのつかみも弱く、キャラクターの動機なども「?」な部分があります。まぁ些細なことを過大表現するのがKIDの十八番ですから。
 ついでに、キャラクターが全般的に幼稚なのが難です。
 確かにメインキャラクターのほとんどが中学生なので、仕方が無いとも言えますが・・・言動がその場の感情に流され気味です。
 勿論、これは「中学生っぽさ」の演出だと思っていますけど、いわゆる「子供」が嫌いな方はプレイしていてイライラすること必至なので覚悟を。
 高校生や社会人のキャラもいることはいますが、それらも見事なまでの幼稚っぷり。
 一応、言動に関してはそれなりの設定が明かされてはいくのですが・・・それを差し引いても辛いです。俺は始終イライラしてました。
 そういうわけで、この作品はシステムやインターフェイスに関しては何も言うことはないのですけど、やはり内容が人を選ぶものになります。
 (・・・まぁ、テキストノベルタイプ何ていうのは大体がそうなんですけどね・・・)
 全体的に統制が取れておらず、整合性の無さやキャラクターの言動に対しての違和感が目につきます。
 大きい風呂敷を広げてそれを包みきれていないタイプではなく、小さな風呂敷にゴチャゴチャ詰め込んで失敗しているタイプです。
 なまじ文章表現そのものは普通に読めてしまうから、違和感なく読めてしまうかもしれませんが・・・個人的には違和感が残る作品でした。
 いや、雰囲気などは結構よろしいのですよ。
 中学生特有の青っぽさなどの表現は賞賛に値します。ただし、これは武器であると同時に、弱点でもありますが。
 自分のやりたいことと、自分自身の力との差。どうしようもない憤りの表現など、評価すべき点も沢山ある。
 ただ一本のストーリーとしてみたらどうか・・・?というところで、唸ってしまうのです。
 各種背景設定の弱さや、つかみの弱い展開など苦しい部分も否定は出来ない。最終的には「残念な作品」止まりという、KIDお決まりパターンです。

 面白いかど聞かれたら「つまらない」と答えるけれど、嫌いかと聞かれたら「好き」と答えます。
 各シナリオやキャラクターに対して、俺はそんなに思い入れもありませんし、正直言ってそれだけなら凡作と決め付けてしまうでしょう。
 ですが、この作品には大きな隠し球が存在します。
 それはメインキャラクターである6人の女の子のエンディングを全て見た後に、明らかになります。
 衝撃の結末に対して、多くの人が否定的な思いを抱くと思いますが・・・個人的に、あれは肯定出来るラストだと思います。
 いわゆる「恋愛ゲーム」と呼ばれる、無差別な可能世界の乱立という汎用性に依存した存在を、「ああいうカタチ」で閉じたことに敬意を表する。
 ・・・まぁ、似たようなものでは、すでにAIRがやってしまっているという話もあるが・・・
 作品としての出来はさて置き、全体的にみて及第点以上の性能は十分あると思うので、購入を迷うなら買ってしまうことをオススメします。
 委員長イカスなぁ



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