君の気持ち、僕のこころ

ハード/PS
発売日/1999年9月14日 廉価版・2000年12月7日
メーカー/タカラ
値段/5800円 廉価版2800円
備考/廉価版有り


 何を血迷ったか知らないけれど、大手玩具メーカーであるタカラが発売した珍妙作品。
 CS恋愛ゲーム業界が下降気味な時期に発表されたこともあってか、実際のところユーザー数も少なく歴史の影に埋もれているのが実態。
 せめてあと1年早く発売していれば・・・少々残念なところも残る作品である。

 主人公・天童憑太は、代々超能力を受け継ぐ血統の高校生。だが、何故か彼にはその才能がなかった。
 しかし、高校2年の夏、彼は突然ある能力に目覚める。それは相手の身体に憑依する能力だった。
 彼はその能力を駆使しながら、日常を過ごしていくことになる・・・

 何やらPCゲームのような匂いの設定、まぁ説明書曰く「ちょっとHな超能力ラブコメディー」ですし。
 よりにもよって超能力、よりにもよってちょっとH。
 何と言いますか、この辺を踏まえて言うと、当時(99年)のセンスから大きくかけ離れているんですよね・・・
 CSなのであからさまなエロ表現は出来ませんが、このHというまるで「少年誌のエロ担当」みたいな感じは良く出てます、確かに。
 ただそういった表現がすでに退廃してしまっていたこと、それから超能力というセンスがあからさますぎた(悪く言うと古いセンス)こと。
 このように本作の武器であるはずの2つのファクターが、逆に大きな足枷になっているのが難点。
 そういうわけで、新しいものを求めようとする方には味付けが古臭く感じると思います。
 ただし、良い意味で懐古的な作品なので、80年代あたりの雰囲気が懐かしく感じられる方にはしっくりくるのではないでしょうか。
 システムは基本的に主人公移動型のテキストアドベンチャー、ゲーム期間は夏の約1ヵ月で1日に重点を置いて話は進む。
 移動タイミングは基本的に朝・昼・放課後・夕方の4つ(休日時は3つ)で、それぞれ町内と学校内と複数箇所表示される。
 移動場所はマップで表示され、どこに誰かがいるかが提示されているので比較的難易度は低めのように思えるのですが・・・
 このゲーム、そうして対象のキャラクターにただ会いに行って好感度を上げていくだけではシナリオも進みませんし、クリアも不可能です。
 そこで重要になってくるのが、本作の特徴でもある主人公の能力・憑依。
 マップ移動時に移動場所そのものを選択した場合、主人公としてその場所へ移動し対象キャラクターと出会うとこが出来ますが、その他にマップにアイコン表示された対象キャラクターを選択した場合、そのキャラクターに憑依した状態でイベントが進みます。
 例として、その場所に二人のキャラアイコンが存在して昼食をとっているというイベントがあったとします。
 ここに通常移動した場合主人公としてその2人のキャラクターを会話を交わしますが、どちらかのキャラクターに憑依した場合、その2人のキャラクターの関係を考慮した上での会話やイベントが展開することになります。
 つまり、本作のエンディングを迎えるためには、一定以上の好感度と適切なタイミングと適切なキャラクターに憑依し、シナリオを進ませる必要があります。
 ついでに言うと、この憑依は基本的に登場キャラクター全てに全てのタイミングで行えるので、そのパターン数は半端じゃない数です。
 そんなわけではっきり言ってしまうと、本作の難易度は極悪級です。
 何度もプレイしていると、憑依して発生するイベントがどのキャラクターのシナリオの鍵になるかはある程度分かってはくるのですが・・・
 基本的に繰り返しプレイでフラグ表・各イベントリストなどを製作しつつ、シナリオを詰めていくプレイが必須になります。
 ちなみに攻略本は未発売ですので、努力と根性で乗り切りましょう。
 システム以外の周辺機能もまぁそこそこ、作品用語集などのおまけもありその辺は及第点以上。
 ただし、ボイスON/OFF不可(常にON)なこと、何故か用語集にミクロマンの紹介(タカラですから)などがあり顔をしかめるのもしばしば。
 展開も懐かしさあふれるラブコメディー調で、古めかしさを帯びるキャラクターも男女構わず愛着が持てます。
 特に珍しく声付きの主人公は完全なる有性格主人公で、その背中がむず痒くなるくらいお約束な言動は突き抜けていて個人的に好きです。
 後半になる毎にシリアスに向かっていくシナリオも中々味もありますし、実はかなり良く出来た作品です。
 が、前記したように本作の弱さはとにかく当時の主流からズレていること。
 画像演出やキャラクター、掛け合いに関しては一昔前のラブコメアニメのようなものと構えておいた方がよいでしょう。
 元々高めのユーザー層を狙っていたのでしょうか?グラフィックもセル塗り系で、ちょっとクドめです。
 それからその極悪な難易度、パッパとシナリオを進めたい人は御法度です。
 「自分だけの攻略法」を作っていた世代向けなのかもしれません、この辺りも万人受けしない理由なのでしょうが。

 今現在の主流とはまた別の意味での「濃い」作品です、良い意味でも悪い意味でも。
 憑依システムも、例えば女の子だけの関係を覗き見ることが出来るなど、結構良い出来だと思うんですけどね・・・
 当時の雑誌評価も結構高めなのですが、やっぱり世代別なのとゲームとしての攻略概念の違いからでしょうか。
 それから難易度についてですが、あくまで個人的にそう思っただけで、自分がヘタレなだけかもしれません。
 実際、レビューをなさっている各HPの方々は普通にクリアしているみたいなので・・・攻略ページなどもありますしね。
 まぁそんなワケで、色々と癖もあり声を大にしてオススメとは言えませんが、廉価版もあるので手に取ってみるのも吉かと。
 かなり玄人志向の出来です、悪く言えばゲテモノゲームかも。
 や、個人的には全然好きなんですけどね。



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