Lost Aya Sophia -ロスト・アヤ・ソフィア-
ハード/PS2
発売日/2004年5月27日
メーカー/アイデアファクトリー・アイエフメイト
値段/通常版6800円・初回限定版8800円
備考/初回限定版・設定資料、ドラマCD付き 12歳以上対象


 アイデアファクトリーの恋愛ゲーム専門自社内別ブランド・アイエフメイトが、「STEADY×STUDY」であまりにも衝撃的 過ぎるデヴューを果たしてから二ヶ月後に、本作は発売されました。早い、あまりにも早過ぎるその期間。何やら悪い予感がいたします。
 正直、不安というより「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」アイデアファクトリーの悪い癖に嫌悪感を抱くが…はてさて。

 主人公・小熊裕司は、春休みに奇妙な夢を見る。自分ではない他の誰かが、焔の中で彷徨う夢を…
 何度も繰り返す夢。そんな折りに、彼は街中で出会った見知らぬ少女に「あなたの魂は悪魔に魅入られている」と宣言される。
 裕司は、自分の通う学園に転校してきたその少女・マリーの…悪魔の封印探しの事件に巻き込まれてしまう。

■本作をプレイ、及び購入しようとする際に頭をよぎったのは、あの悪夢とも言うべき「STEADY×STUDY」の記憶。
 「買うのをよそう」「また痛い目をみるのは自分だ」、そんな終わりの無い自答を何度も繰り返した。
 …そもそも、こういうマイナスな考え方をさせるまでの破壊力をステスタが持っていること自体が悪いのだが、まぁそれは仕方ない。
 ひたすら悩んだ後、一握の希望を賭けて本作の購入に踏み切ったのですが…果たして、その選択は正しかったのだろうか。

■そんな不安を残しつつ、まずシステム。
 基本的には選択肢を選ぶことによって、対象の好感度高低とシナリオの変化が行われるノベルアドベンチャー。
 その選択肢も、現在置かれている状況への対応(行動、及びセリフを選ばせる)ではなく、状況に応じて対象のキャラクターを選択する(誰と 一緒に行動するか、その時誰のことを思ったか)ことでの変化がメインなので、難易度は低め。大体1キャラに絞っていけばルートは確定します。
 スキップやバックログ機能有り。ただしスキップは前作同様既読・未読の判断機能はなく強制スキップ、しかも遅い。本編が結構長いので、ちょっと苦しいかもしれない。 他周辺設定機能もそれほど充実しているというわけではなく、プレイ環境は他ノベルゲームと比べてもやや低め。残念。
 それと、本作における特殊システムとして「PCS(Personal Charactor System)」というのが存在する。
 これは、作中で対象キャラクターが主人公(プレイヤー)に対して心理テストを応用した問いかけをし、その返答(選択肢形式)によって主人公自身のパーソナリティが変化する といったもの。
 本作には主人公のパーソナリティ…つまり、それ自身の個性や人となりが(作品的にも)重要視され、プレイ開始前に全12問の心理テストを受けることになる。 その返答によって基本パーソナリティが確定し、なおかつゲーム本編中でもPCSによってパーソナリティが変動していくという仕組みだ。
 そして、そのパーソナリティはシナリオなどの作中にも影響を及ぼしていくということになる。
 つまり本作は、ノベルアドベンチャーゲームとして読み進めながら、そのパーソナリティをどう変動させていくかが鍵になる。というわけだ。
 …とは言え。
 この変動するパーソナリティなのですが、説明書や公式サイトでも詳しい情報が掲載されていないのがちょっと問題かも。
 ゲーム本編を始める際、つまり全12問の 心理テストを行う前にその内容は明らかになるのですが…
 本作には「DP (Dark Point)」という内面パラーメータ…つまり、上述したパーソナリティが設定され、心理テストの 返答により、このポイントの値が上下します。そして、このポイントが作中に影響してくる、ということになります。
 別段隠すようなシステムではないと思うのですけど(作中では結構重要だし)、どうして説明書などで説明を避けたのでしょうかね?

■その他、内容などに対して。
 本作は、前作である「STEADY×STUDY」と比較することによって、アイエフメイトもかなり頑張っているということが分かります。
 まずグラフィック。前作では背景とキャラグラフィックの解像度の問題で画像に違和感が出る、ジャギーが目立つなどの問題点がありましたが、本作ではそういうグラフィック面での問題は ほとんどないです。背景とキャラのマッチングも結構いい感じですし、強いていうならキャラと背景の境界線に軽い歪みがあることが挙げられますが、特に気になるということはないでしょう。
 内容もキャラクターの掛け合いや、単純にキャラクターの立て方の表現も格段に上がっています。前作では設定レベルの情報を垂れ流していただけの感じがありましたが、本作ではちゃんと イベント化したシーンやシナリオを上手く絡めて、各キャラクターの特性を引き出していると思います。主人公の性格が、前作に比べてアクティブなことも影響しているんでしょうね。
 前作であった「システムデータ無し」「1セーブ1ブロック116k使用」「アルバムモード等無し」という素敵な仕様も回避されてます。ただし、アルバムモードやシステムデータはありますが、 ゲーム開始時にシステムデータを読み込まないので、アルバムモードへ取得したCGを閲覧したい場合には、まずセーブされている既存データをロードする必要がありますが…まぁ、少なくとも 前作よりはマシでしょう。
 続いてプレイ時間。ステスタがせいぜい2時間強程度で1週をクリアしてしまうボリュームであったのに対し、本作はスキップ無し・全テキストを読むことを前提にプレイすると、1週でも6,7時間強の ボリュームがあります。ノベルゲームとしても申し分ないプレイ時間だと思いますね。
 最近はプレイ時間の長さやボリュームが重要視されているようですが、だからといって1週に10時間以上かかってしまう作品はどうかと思います。
 個人的には、5〜6時間程度が丁度いいんですけどね。
 以上を踏まえて書くと、間違い無く「前作よりは面白い」と断言出来ます。ただし、その問題の前作が最底辺にいる作品なので、何だかんだ言っても惜しいところがいくつか。

■さて本作、「悪魔」「封印」といった単語が出てくるように、内容は現代ファンタジーといっていい。
 あまりネタバレになるのは避けるが、説明書などのキャラクター・ヒロイン紹介に「ローマカトリック組織の一人」「悪魔の封印を見守り、復活を阻止する組織の一人」などと書かれているところに、 近年流行の「ローマカトリックの異端殲滅機関」といった単語がよぎる。そして悪魔の存在、つまりは悪魔という異端と、ローマカトリックの闘争に主人公が巻き込まれていくという構造になっている のは明白である。
 それはいい。こと恋愛モノにおいて、そういった別の大きな要因を主軸にして話を展開するという技法は正義である。
 問題は、その要因がもの凄く中途半端に表現されてしまっている、という事。
 つまり、上述したような単語を並べられると、期待するのはただ一点…
 「ローマカトリック異端殲滅機関とか悪魔とか何故かスゲェ力を持っていた主人公のガチンコバトル」のみに集約する。
 勿論否定的な意見もあるだろうが、俺自身はそういった展開が大好きだし、それを望んだ。だが、実際展開する内容はというと…まぁ、バトルもののような展開が皆無というわけではないのだが、 それでも期待外れと言える程度の微々たるものだった。
 何だか、魅力的な単語を並べておいて、ユーザーが期待する内容を提供してくれなかった…という感じなのですね。残念ですが。
 もう少し開き直って、戦闘シーンとかに力入れて欲しかったなぁ。
 あと残念なのは、「共通ルートが多い」ということ。早い話が、各キャラクター別ルートに移行するための材料が選択肢上の「その時誰のことを思ったか」や「誰と行動するか」といったものくらい しかないので、長い共通ルートの中にぶつ切りのキャラクター個別イベントが存在する、といった感じになってしまっている。
 おまけに選択肢そのものも少ないので、何度もプレイしていると同じシーンの繰り返しになってしまい正直ダレてしまう。これは大きなマイナス点。
 音声に関しても難あり。本作はプロローグから始まり、全7章の構成になっているのだが…キャラクターがボイス付きで喋るのは「最初の一章だけ」である、一体どんな仕様というのだろうか。
 それから前作よりは格段にレベルアップしたとは言っても、「恋愛要素」を踏まえた上でのシナリオもまだまだ甘い。対象キャラクターの描き方は上手いと思うが、残念ながら主人公に惹かれていく 描写などが描ききれていない。その「好きになっていく」理由が希薄な部分が否めないのである。

■大声でオススメとは言えないが、割と好印象な佳作。
 確かに「STEADY×STUDY」と比較してしまい、相対的に良く見えてしまっているだけかもしれないが…それを踏まえたとしても、アイエフメイトの成長を 期待出来るタイトルになっていると個人的には思う。
 上述したように残念なところも多く、「もう少しここをああしてたらなぁ…」と思える箇所も少なくありません。
 それでも、テキスト自体の出来も中々ですし、一本のライトノベルとしてプレイしてみるのも悪くないかも。むしろ、製作者側もそういった意図があったのかもしれません。ほらアイデアファクトリーですし… そういった表現はお手の物ですから。
 そんなワケで、最終的には「恋愛ノベルアドベンチャー」としては平均よりもやや下かもしれませんが、その他の要因もあるので余裕がある方ならプレイしてもいいかも。という感じ。「STEADY×STUDYで 幻滅した方なら、特にやってみる価値がありそうです。
   アイエフメイトの成長が期待されるところですが、これからの発売スケジュールを見ると…何だか、アレである。堕落しなければいいけど。

■ちなみに。
 「アヤソフィア」とは、イスタンブールにある「アヤソフィア大聖堂」のことだと思われる。世界で四番目に大きい教会で、恐らくは本作における神聖性を表現するために、語呂が良いから拝借したのだろう。 それから、本編には「アヤソフィア」という単語は登場しない(少なくとも、俺のプレイでは)。



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