めぐり愛して

ハード/PS
発売日/1999年2月25日
メーカー/SME
値段/5800円
備考/初回限定版・校章&クリアホルダ付き


 何を血迷ったか、ソニーミュージックエンターテイメントが製作した稀有な一品。
 スタッフにはかなり大御所を起用しており、恋愛ゲームのネクストスタンダードを狙った意欲的(?)な作品なのだが・・・
 通り過ぎた後に残ったのは、理想と現実という切ない結果だったようです。

 主人公は父の都合により、以前暮らしていた虹ヶ音町に引っ越すことになった。
 7年ぶりに再開する幼馴染みの俊介、そして……紗奈。
 変わってしまったもの、変わらずにいるもの、全てがめぐり始める……

 こういう事前設定(主人公回帰による、現在と過去のギャップにおいてヒロイン等を強調するタイプ)は当時珍しかった。
 しかし、特異設定を持たせることに躍起になっていた時代も終わりに近づき、作品スタイルは段々とシナリオ重視方に依存していく。
 その中で打ち立てたネクストスタンダードという台詞は、もうすでに時代遅れのものとなっていたのだった。
 とは言え、本作が例え2年前に発売されようが、評価は同じものだったでしょうが。
 システムはオーソドックスな一週間特定コマンド実行型自己育成シミュレーションタイプ、まぁ簡単に言えばときメモタイプです。
 そもそも本作には、PCE版ときめきメモリアルスタッフがプロデューサーレベルで関与しているので・・・
 新しいものを作り上げようという意思よりも、既存のものをより良いものに仕上げていこうという意思の方が強かったようです。
 自己育成・デート・イベントといった構成の他に、付加されたシステムがいくつか。
 まずアドベンチャーパート、本作の育成期間は平日の月〜金曜日までで、土曜日には場所移動型のアドベンチャーになります。
 校内・市街とマップ内を移動し対象キャラクターを探すのですが、その移動数合わせて35箇所。ちなみに移動回数はたったの3回。
 一応各キャラクターによって出会い易い・辛い場所はありますが、それにしても無意味なまでに多い数です。
 リアリティーを演出したかったのでしょうけど、この手の作品はリアリティーよりも作品世界にマッチしたシステムが重視されるのですが・・・
 そしてこの土曜日のアドベンチャーパートでは、出会ったキャラクターにデートの誘いを持ちかけることが出来ます。
 そこでOKだった場合、翌日の日曜日にデートへと向かう仕組みになっているわけです。
 ちなみにこのデートですが、1日に3人まで実行可能になっており、前日土曜日に約束を取り付けた最大3人を対象に出来ます。
 1日を3つの時間帯で切り分け、3人をそれぞれデートに誘うも良し、1人を1人中使うも良し。
 約束が何も無かった場合は、主人公は寝て過ごすか、電話でデートにこぎつけることも可能。しかしもう少し有意義な休日を過ごせ、主人公。
 本編はこのローテーションで話が展開していくことになります。
 ちなみに本作、この手のシステムでありながらも展開は突発イベント型ではなく、シナリオが連続していくタイプと中々珍しい。
 勿論普通に特定イベントを発生させ、好感度を上げただけでエンディングまで到達することは到達しますが・・・
 全てのイベント・シナリオを発生させた場合にのみ、トゥルーエンディングというものも存在する。
 ただしその条件はかなり多く、普通にプレイしただけでは恐らく到達出来ないと思います。攻略本があれば簡単ではありますが。
 ・・・というように、特に目立った点もなく、聞いただけではあまりにも無難すぎる作品に見えます。
 しかし欠点としてローディングが長いこと、システム回りの関係上テンポが恐ろしく悪いこと、そして何も新しいものがないこと。
 キャラクターも確かに古臭さや、キャラクター数の多さによる設定の飽和など弊害はありますが、そこそこ整っています。
 各シナリオに関してはベタではありますが、実はかなりしっかりしたもの。
 ということで本作を見て一番の失敗は、やはり自己育成型のシミュレーションだったことだと思います。
 はっきり言いますと、これでキャラとシナリオはそのままで、マップ移動型のアドベンチャーであったらもっと面白くなっていたはずです。
 そういう意味では非常に残念です。下手にときめきメモリアルという過去の遺産にしがみついてしまった結果ですね。
 他良いところ。
 音楽は梶浦由記氏が担当、勿体無いくらい良いです。今思うとかなり凄いですな。
 あと色んな意味でグラフィック。これは世間的な酷評の対象になってはいるのですが、味のある絵なので個人的には好きです。
 とは言え客観的・一般的に見てみれば・・・まぁ、確かに美少女ゲームの一端とする作品にしては個性的ですな。
 ちょっとだけ「勝った」と思ったのは秘密中のヒミツです。

 結論を言うと、ただのゲテモノ作品。全体的に見ても確かに酷評せざるを得ません。
 テンポが悪いのと、システムに依存した作品なのにそれが全く面白みのないこと。そしてそれがシナリオの足枷になっていること。
 もう少しロード時間が短く、サクサク進むなら我慢出来たんですけどね・・・育成を含めて作品世界に合っていません。
 ちぐはぐな出来の作品ですね、まぁ少なくともオススメ出来る作品でないことは確かです。
 自虐的なプレイが出来る方、何と言っても恋愛ゲームが好きな方、それから声優はそこそこ豪華なのでその筋の方は戯れにどうぞ。
 ・・・でも、俺は結構好きなんだけどなぁ・・・くれは姉さん・・・



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