良い意味でも悪い意味でも、KIDの代表作品。 本作発表以前までは、主に一般ゲームとPCゲームの移植を開発してきたKIDですが・・・ここからKIDの全ては始まったと言っていい。 今まで手がけた移植ゲームでのノウハウと、初オリジナルとしての意欲が、よく出ている作品だと思います。 |
主人公・三上智也と、2人の幼馴染み。妹のような唯笑と、最愛の恋人・彩花。 いつまでも続くと思っていた、穏やかな日々と三人の関係・・・そんな、高校2年の秋。 彼らの側に、彩花は、いない。 |
個人的には好きな作品の1つではあるのだが、独特の作品世界を持つため賛否は激しいです。 プレイしていて、その良いところも悪いところも目立つのは認めるしかないですが・・・ 良いところは勿論として、悪いところも本作の魅力を語る上では非常に重要なファクターだと思うんですけどね。 システムはオーソドックスなテキストノベルアドベンチャー。恐らく、このあたりはPCゲームで主流になってきたシステムを採用したのだろう。 以前移植として製作した「輝く季節へ」からのイメージもあっただろうが、輝く季節へではテキストをフルスクリーンで表示した失敗 (・・・と、個人的に思っている。画面全体にテキストを表示するタイプのことだが、作品によって合う・合わないを理解しなければいけない) を考慮したのか・・・本作のテキスト表示はウィンドウタイプになり、画面もスッキリしていて見やすい。 画面構成や、テキストタイプでの環境設定などもよく整理されており、プレイする上での問題はそれほど感じられない。 テキストや選択肢の達成率もおまけで表示されるので、クリアする以外でのやりこみも可能(100%達成しても、何も出ないが・・・)。 純粋に、システムなどについては及第点以上です。まぁ、これ以上どうしようもないという意見もあるかもしれませんが。 テキストタイプのゲームはシステムが確立し過ぎて、進化しないのが問題の一つか・・・ それはさておき、この作品において賛否の全てを決める・・・シナリオとストーリーなのですが、かなり玄人向けだと思います。 この際文章、読み物としての評価は避けますが、それ以上にキャラクターの表現・シナリオ展開に癖があり過ぎるのです。 登場するキャラクターの、あまりにも個性が溢れすぎている言動は見ものです。 恐らく、製作者側も「面白い」とか「可愛く魅せている」と思っているのでしょうが・・・味付けが少々人を選ぶようになってしまったようです。 それは日常描写におけるキャラクターもそうですし、シナリオ上で描かれるキャラクターとしてもそうです。 キャラクターを「個性」と言う視点で見るなら、そう重く構えないでもいいのですが、シナリオと整合させると中々面白いことになります。 ここからはあくまで個人的見解になるのですが、設定からくるストーリーが大げさすぎるのではないかと。 些細なことを、さも大変なことのように表現しているような・・・そんな気がします(一部除く)。 生死などデリケートな部分に触れるシナリオもありますが、それ以上に物事の捉え方が、皆さん思考回路の運動が活発なようで・・・ 何か凄い設定のどんでん返しがあるのか、と期待してみても、全然大したことないとか。 一度解決した問題や関係が、壊れては治り・・・問題にするのが可笑しいくらい、些細な問題が重要視されてしまうとか。 正直、「う〜む」と唸るような展開もいくつかありました。 それだけ登場するキャラクターが繊細なのかもしれませんけどね(フォロー)・・・あまり納得はいきませんが。 主人公である智也の言動などは酷いものでしたけど、慣れると心地よいですよ?選択肢通りに行動しないところなんて特に愛着が持てますね。 ・・・一体何のための選択肢なんでしょうか? とにかく、登場キャラクター全ての言動に惑わされてはいけません。考えるんじゃない、感じるんだ! 賛否は激しい作品ではありますが、そういう意味では一度プレイするのも悪くないかと思います。 通常版は今現在ちょっと手に入りづらいようなので、買うのなら廉価版。個人的にはDC版(Complete)かPS2版(Duet)を推しますけど。 概要として前記した通り、この作品はあらゆる意味で味付けが濃いです。 キャラクターやシナリオの濃さ(勿論「深い」という意味では無いです)では、一種のトラウマゲームとしても語られている側面もあります。 その上、テキストが大変読み辛い・・・というか、比喩表現や情景・心理描写が独特過ぎます。 普通に読み物として読んでいるだけでは、ぱっと見一体何を伝えたいのかが分からなくなってしまうところもあります。 テキストに関しては、俺個人の読解力が足りないだけかもしれませんが・・・ とにかく、不安な要素を連ねて言うのも何ですが、色んな意味で有名な作品なのでオススメしておく。 取っ付き難い作品ではありますが、個人的には非情とも言える現実感・・・そして、空虚な絶対存在影響がとても好きです。 この作品を簡潔に言うなれば、苦いオブラートに包まれたキャンディ、ですね。個人的に。 |