ミス・ムーンライト

ハード/DC
発売日/2001年6月21日・廉価版2003年9月11日
メーカー/naxat・加賀テック・シュピール
値段/6800円・廉価版2800円
備考/廉価版(ドリコレ)有り


 パソゲー移植作品に見えて仕方のない本作だが、立派なCSオリジナル作品である。
 しかし開発にシュピール(18禁PCゲームメーカー)が関わっているところを見ると、PC移植の話もあったのではないかと思われる。
 ・・・まぁ、実際のところそういう展開にはならなかったワケですが。

 主人公・秋庭こうきは、外交官を父親(義父)に持つ高校2年。
 ある日、内戦が行われている中東X国へいるはずの父親が突然帰国。その傍らには、1人の少女の姿が。
 その少女の名はサンディ……X国の、正当なる姫君である。

 CSオリジナルなのにそれといった広告もされず、どうにもユーザーの記憶に残らずパッと消えていった作品の一つ。
 例えばPCゲームなら移植されるだけの人気やファンもいるだろうから、それなりの売り上げも望めるし、広告もそれほど必要じゃない。
 しかしCSオリジナルだと、大御所ならともかく恋愛ゲームなどもうすでに退廃している時代である。
 そんな中ひっそりと発売された本作だが・・・実はかなりの良作。
 システムは主人公移動型のテキストアドベンチャーで、特に悩むような選択肢はありません。基本的に対象キャラクターに会えればいいです。
 そうして各キャラクターのシナリオが進んでいき、話もかなり熱く盛り上がっていくのですが・・・
 本作の残念なところとして、何というか盛り上がってからの収束が滅茶苦茶早いというところなのです。
 クリア対象キャラクターが5人で、テキストアドベンチャーであるのにも関わらず、本作の1プレイ時間は大体2時間ちょっと。
 テキスト系のゲームとしてはかなり短い方です。
 勿論一つの話として各シナリオはきちんと完結していますが、盛り上がってからのEDへの展開の早さにはちょっと興冷めた感じも。
 そのEDへのくだりをもっとじっくりと描いて欲しかったとは今でも思いますが、本作に関してはそれ以外が全て及第点以上である。
 まずその展開の早さはデメリットと同時にメリットでもあり、物語中盤の中だるみも無いシナリオ構成には感嘆させられる。
 さらに本作で使用されるイベントCGは従来の作品よりも桁外れに多く、CGを多様した巧みな演出が展開の早い物語に拍車をかける。
 この2つのポイントは本作においての強烈な武器であり、何といってもプレイして飽きが来ないという点はかなりの高評価。
 まるでショートフィルムでも見ているような感覚に襲われる。
 作品や主人公の背景設定がかなり重く、一つ間違えると単なる泣きゲーに陥る可能性もあったが、そういうことにならなかったのも○。
 主人公が精神的にも強く、かなり共感出来るキャラクターであるのも理由の一つかもしれない。

 少々褒め過ぎた感もあるが、実際のところ作品としての強みがそれぐらい特化しているものだと思っていただきたい。
 個人的にかなり好きな作品で、廉価版もあることだし普及してもらいたいものである。
 作品としての弱点は全体的に地味目なところと、前記したように展開が鬼のように早いこと。確かにパッとする作品ではないですね。
 特に変則的なキャラクターが目立ち始めた時代に、地味目なキャラクターを配置したのは英断だと思います。
 作品としてのバランスはかなりとれていて、傑作・秀作とまでは言いませんが、隠れた良作とは言えるのではないかと。
 続編への動きがあるとかないとかいう噂を以前聞きましたが、個人的には是非とも出て欲しいものです。いつになるのかは分かりませんが。
 大きな声でオススメとは言えませんが、余裕があるのなら手に取ってもらいたい作品の一つです。



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