Never7 -the end of infinity-
ハード/DC・PS2
発売日/DC版2000年12月21日 DC廉価版2002年5月28日 PS2版2003年6月26日 PS2廉価版2004年9月2日
メーカー/KID (PS2廉価版のみ、発売元サクセス)
値段/DC版6800円 DC廉価版2800円 PS2版5800円 PS2廉価版2000円
備考/DC・PS2版ともに廉価版有。DC版ドリコレ・PS2版Super Lite2000


 PSで発売され、好評を得た「infinity」の完全版。
 数多くの謎を残し、曖昧なまま幕を閉じた「infinity」に対するファンの悶々とした思いを完結させるために、DC移植と共に改良が加えられた。
 その後シリーズ化されるほどの人気を獲得し、名作の呼び声も高い本作だが…

 主人公・石原誠は、大学のゼミ合宿で避暑地に訪れていた。
 その初日、彼は最悪の目覚めで朝を迎える…「目の前で女の子が非業の死を遂げる夢」、それが誰でどこで起きたのか、詳しいことは覚えていない。 ただ1つ、その日が6日後の4月6日だったということを除いて…

■発売当時から好印象な評価を多く目にした本作。
 移植や廉価版・PC版発売などの側面から見ると、人気があるのは事実のようだが…いささかマイナーチェンジ→多機種発売が多過ぎて、その人気に寄りかかったドル箱商法のような気が しないわけでもない。実際売れているので、商業的に悪いとは毛頭思っていないが。
 作品単体の評価と、その作品を取り巻く二次的な要因は直接関係を持たない。本作が面白いか否か、それ自体が全てである。
 初期(DC)版が発売されてから随分遅れてプレイしたので、事前評価だけは聞いており、本当は早くプレイしたくてウズウズしていたのだが、この度やっと本作を購入することが出来た。
 期待を抱きながら、本作はどんなものか追ってみることにする。

■まずシステム。
 これはKID作品にありがちな、選択肢によってストーリーが変化する典型的なノベルアドベンチャー。
 「謎解き」や「ミステリ」的な要素を多く含むものの、従来の推理アドベンチャーのようなコマンド選択でストーリーが進行するというものではない。その内包されている「謎」はユーザーが解き明かす のではなく、シナリオが1つ1つ進行することによって剥がされていく。つまりは、プレイヤーはあくまで読み手であり、要求されるものはない。純粋なノベルゲームとして楽しめる。
 最近流行のライトノベル寄りのミステリ小説とでも思ってくれれば分かりやすいかもしれない。いかにもなキャラクター達が、作品世界内での謎に翻弄されながら、絆を深めていく。
 そういった話が、選択肢型のノベルアドベンチャーとして構成されている、というわけである。
 ただし、一つの方向性しか構築出来ない小説とは異なり、本作の媒体はあくまでもゲームである。
 ノベルゲームの高い汎用性の1つには、同一世界において多種多様なシナリオの流れや結末を同時に提供出来るということがある。つまり、作品世界内での「世界的な設定」を共有した上で、 各対象キャラクターに個別の展開・結末を用意出来るということだ。
 勿論これらは基本的にどの恋愛ゲームでも同様であるが、ノベルゲームではその分岐における展開を、非常に明確に指し示すことが可能になる。
 「選択肢」という唯一ユーザーが介入出来る行動によって分岐するため、進行するシナリオそのものをシステムに依存していない分、ノベルゲームはそれだけ異なる展開を構築できる。ということである。
 つまりそれだけ汎用性が高い分、各キャラクターのシナリオを個別に用意するだけで、一応のところゲームとしての体裁が整えられてしまう。その方式自体を批難するわけではないが、やはり 安定したシステムに依存するだけではなく、ノベルゲームという枠内でもう一ひねり欲しいところだ。

 そこで本作に話を戻す。本作はシステムこそ従来のノベルゲームであるが、その「個別に存在する独立したシナリオ」単体で一つの完結性を帯び、なおかつ作品世界全てにおいての「謎」は少しずつ 紐解かれていくという構造になっている。
 つまるところ、対象となるキャラクターの個別シナリオ単体で十分なストーリーを構築した上で、それ一つ一つが複雑に作品全体の「謎」を導いているという…そういった特殊な演出をとっているのである。
 勿論、複数存在するシナリオごとで様々なことが語られ、最終的に全ての設定がユーザーに提供される。という演出は多用され、それほど特化したものではない。
 ただし、本作は徐々に語られていく謎と、その解決、理論展開が極めて秀逸。
 どのあたりが秀逸かというと、少々ネタバレになってしまうので避けるが…「ノベルゲーム」であることを上手く活用し、ユーザーに提供する「真実」のタイミングや、作品に引き込ませるための「謎」のちらつかせ方など、 ストーリーメイキングと演出が神がかり的である。
 持ち上げすぎかもしれないが、個人的久々に衝撃を受けた作品。「名作」と呼ばれるわけだ。

■周辺環境なども、基本的にノベルゲームのKIDフォーマットを使っているため、ほとんど問題はない。
 既読・強制スキップ、バックログ、単純に読み進めていくのには問題ないレベル。他オマケ要素もグラフィック、音楽等基本的なものは抑えてある。
 ただ、ちょっとセーブやロードなどの読み込みが遅いのが気になると言えば気になるくらいか。

■内容をば。
 上述したように、本作を構成するのは「謎」と「ミステリ」、それから当然のように恋愛要素である。
 ミステリ作品的に言えば、それこそミステリマニアには物足りないものになるかもしれませんが…普段そういったものに触れないような方であれば、十分満足出来る くらいの出来はあると思います。実際、私は楽しめましたし。
 ですが、恋愛要素を中心にして見てみると…ちょっと平均よりも下かな、くらいになってしまうかもしれません。
 いまいち、対象となるキャラクターの主人公に対する想いがどのように形成されていっているかの表現が希薄で、少々主人公と対象キャラクターの関係の進展に無理があるシナリオが多いです。
 ただし、本作は恋愛話うんぬんよりも、ミステリ小説としての出来の方が明らかに高いので、はっきり言って「恋愛モノ」の要素は取っ払って楽しむのが良いかと思います。
 恋愛要素はあくまでオマケ、それと個別シナリオで提示される真実のピースのために存在する、くらい割り切った方がいいかも。
 ええと、話的には悪くはないのですが…キャラシナリオよりも設定や演出の方が魅力ある作品なので…

■そんなワケで。
 単純に「ノベルアドベンチャー」というジャンルの中では、かなり性能の高い良作。
 ユーザーを飽きさせることもなく、単純に各キャラクターのシナリオを並び立てただけではない構成には感嘆する。
 欠点という欠点と言えば、KIDのちょっとタチの悪いサービス(Memories Offとの繋がりとか。オフィシャルでは肯定も否定もしていませんが)が多いことや、ちょっと恋愛話としては パンチ力が弱いところくらいだろうか。
 あと、これは主観にも寄りますが、純粋に登場する「キャラクター」そのものが、あまり印象に残りませんでした。これは、それくらい他の要因が強烈だった、ということなのでしょうが。
 結論として、上述したように本作はかなり広くオススメ出来る一品。機会があれば是非ともプレイしていただきたい。
 発売されて随分時間は経ってしまいましたが、今もなお十分に通用する作品だと思います。

■最後に。
 自分が本作をプレイしたのは「PS2廉価版」なので、ことシステム面などにおいてはこれに即します。
 特に「DC版・DC廉価版」とは環境が若干異なっている部分があるかもしれませんが、了承を。内容的には変わらないと思いますので。
 「PS2廉価版」の他ハード等との明確な違いは、おまけのアルバムモード内でオリジナルには未収録の「宣伝・促進用イラスト」等が追加収録されているということがあります。 ここでの「オリジナル」は「DC版・DC廉価版・PS2版」の3種類を指し、つまりは前記した3本に未収録だったイラストが収録されているということになります。
 値段も安価で作品的にもかなりの性能なので、現段階ではこの「PS2廉価版」を購入することをオススメします。



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