ぬくもりの中で

ハード/PS
発売日/2001年8月30日
メーカー/プリンセスソフト
値段/6800円
備考/Ather製作のPCゲーム「好きだよっ!」の移植作


 一応PC版の方から知っていたのだが、当時移植すると聞いて驚いたものだ。
 それほど人気があるわけでもないし、一体移植するにあたってのメリットはあるのだろうかというのがその根拠。
 思えば、この時期からPC移植作が量産され始めたのだろうな。

 主人公・神田淳は、新学期早々電車の中で痴漢と間違えられてしまう。
 彼を痴漢と間違えた少女・新橋美奈・・・彼女と彼は幼い頃に出会っているはずなのだが、そのことをすっかり忘れていた。
 かくして、二人は史上最悪の再会を果たしたのだった。

 ・・・パッケージより抜粋、レイアウトや煽りなどもそれに即した仕上がり。
 いわゆる「幼馴染み再会型」作品の一つですが、「女の子の方が覚えてない」等の設定は差別化を図ろうとしていて好感触。
 そのあたりは背景設定やシナリオなどの伏線にもなっており、最初の段階でプレイに引き込むのにも十分な効果かと。
 痴漢に間違えられる行のプロローグも、ヒロイン・美奈が主人公から見て心底悪く描かれているのも個人的には○。
 最初の展開では結構期待は・・・出来たんですけどねぇ・・・
 システムはテキストタイプのアドベンチャー。選択肢による分岐・好感度変化と、場所移動による対象好感度変化で本編は進む。
 基本的には選択肢型のテキストノベル系で進み、休日など特定の日には町内をうろつき対象キャラに会うアドベンチャー。
 場所移動選択時には、どこの場所に誰がいるか分かる仕様になっているので、その対象を間違えることはない。
 そして好感度・イベント進行度によって、対象キャラルートに突入という基本的なスタイルだ。
 こう見るとゲームそのものを進行する上でのシステムは問題ないように思えるが、実際のところプレイ環境のレベルはかなり低いものになっている。
 まずスキップ機能、ついてはいますが全ての文章が強制スキップ。既存スキップなどという便利なものはありません。
 それからスキップはボタンを押している間のみ有効という仕様。本編はかなり長いので、これではちょっと辛い。
 続いてバックログ、一応ありますが対応しているのは画面1サイズ分の文章のみ。ちなみにテキストウィンドウに表示された文章全てが該当するので、選択肢なども表示されます。それはまだしも、文章一つ一つが連続して表示されているので、非常に見辛い・プログラムを疑う。
 セーブ箇所は4つ、かなり少ない上にメモリーカードアクセスも比較的長め。
 音声はOFF不可、強制的に流れます。文章送りが一括表示→次の文章とボタン2回押すのと、強制スキップしかないのが×
 それからBGMの音量がかなり小さいです、そのくせオプションでの設定がステレオ・モノラル切り替えと、メッセージスピード変更のみ、酷過ぎる。
 平均的に見ても他作品を下回るプレイ環境ですが、個人的にはこれぐらい別に何でもないです。
 ただ・・・上記したように、本作のプレイ時間はかなり長いのです。
 システム的には98年代ものと大差ないので、これでプレイ時間が2時間から3時間程度なら余裕なのですけど・・・
 本作は普通にノベルゲームと同じくらいの時間を使用します、平均的に見ても5時間・6時間強はかかるものと思ってください。
 勿論時間がかかることに嫌悪感を示しているわけではなく、それ相応のシステムが積まれていないことが問題なのですね。
 ノベル寄りにしたいならスムーズ且つシンプルなシステムにするべきであって、本作はそれがまるでなってなかったというだけである。
 選択場所移動時のADVパートもかなり多く発生するのに関わらず、対応しているイベントが使いまわしで同じものが何度も繰り返されるとか。
 基本的に短期決戦型に特化しているはずのテキストノベル系なのに、プレイ期間は約1年とか(上記のように延々と同じようなイベント有)。
 肝心の個別ルートに突入するまでの部分が妙に長く、作品全体的にメリハリがないのがどうにも目立つ。
 継接ぎだらけの作品、ですかね・・・シナリオが流れに乗れていない部分もありますし。

 上記したように、プレイ環境はかなり低いということを頭に置いておいてください。
 周辺設定はいわずもがな、ノベルタイプとして見た場合に欠点がかなり目立ちます。ADVとして割り切ればまだ良かったのでしょうが。
 やっぱりテキスト・シナリオにこだわりたいなら、それ相応のシステムが必要ですよね。
 内容に関しては、基本的な「ドタバタ学園ものからシリアスへ」なのですが、ドタバタ学園ものからシリアスへの転換がちょっと急過ぎますね。
 どうもプロローグからエンディングにかけての展開が滑らかじゃない、別々に作ったイベントやシーンをつなぎ合わせたみたいな。
 それでも、ドタバタ学園もののシーンは独立した展開としては結構面白いんですけどね。
 シリアス話になると、いわゆる泣きゲー的な設定・展開が続きますが、個人的にはちょっと設定がくどいというか・・・あざといというか。
 泣けるような設定・シナリオを作ろうとして、それらが飽和しちゃって支離滅裂なものになっているように感じました。
 何だか・・・プレイしていて痛いです、何だかキャラクターや設定などをパーツ感覚で扱ってるエロゲー的発想がひしひしと伝わってくるので。
 でも発売が2001年か・・・確かに泣きゲーが迷走していた時期なのでしょうがないのかもしれませんが。
 そういうわけで総評としてはあまりオススメは出来ません。エロゲー的なものを容認出来る方と、根気のある方なら何とかなるかもしれませんけど。
 ・・・本当に、何で移植なんてしたんだろう・・・実は人気あったのかな。

 それにしても、「っていうか」が多過ぎだ。



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