お嬢様特急

ハード/PS・SS
発売日/PS&SS・1998年7月30日同時発売
メーカー/メディアワークス
値段/5800円
備考/Disc2枚組み


 「お嬢様特急」と書いて「お嬢様エクスプレス」と読む。
 今思うと珍妙なタイトルである。よりにもよってお嬢様、よりにもよって特急。きっと製作者はタイトルから考えたのだろう。
 製作に「あかほりさとる事務所」が関わっている時点で、あながち間違いではないような気もするが。

 季節は夏。北海道稚内を出発し15日間をかけて日本を横断する特別特急ヴェガ
 主人公は稚内から乗車し、その最終地点である夢が崎へアテの無い旅を始める。
 そして、旅を終えた時、主人公を待つ人は……

 恐らくタイトルから決めて「女の子と列車で旅をしながら触れ合うゲーム」になり、最終的にこんな変な設定になったのだと思います。
 たった一度だけ日本を横断するために作られた特別急行に利益はあるのか?、ヴェガの存在によるダイヤへの影響は?
 あまり電車とかに詳しくない自分ですが、そんなことを差し引いてもまだまだ色々とおかしい部分を指摘することが可能です。
 そういうわけで、設定主義者な方にはオススメ出来ません。
 とはいえ、確かに無茶苦茶な設定ではありますが、それを差し引けば実はかなりの良作。
 システムは基本的なアドベンチャータイプ、この場合は列車内の歩き回りながら対象キャラクターを詮索することになります。
 ゲーム開始地点である稚内から始まり、列車内を移動→停車駅→列車内を移動→停車駅(大)→一日が終わる→繰り返しが大まかなローテーション。
 停車駅から停車駅までの区間が、対象キャラクターとの好感度を上げるメインパートになっています。
 各場所のキャラクター登場パターンですが、ある程度は絞ることが出来ますが基本的にランダム。
 根気良く狙いのキャラクターを追いかけていきましょう、ある程度好感度が上がるとイベントが発生し、シナリオが進む形式です。
 基本的には車内で好感度上げ→イベント発生とシナリオを進め、下車可能になる停車駅での自由時間にデートに誘う→特殊イベント発生という流れ。
 本作には機嫌取りが必要なわけではないので、1キャラクターに狙いを絞っていればクリアそのものは簡単です。
 ちなみに本作、全国を横断する特別急行ですから、クリア対象となる女性キャラクターにも搭乗駅と下車駅があります。
 例えば狙いのキャラクターのシナリオを全て発生させ、告白条件を満たした場合で下車したとしても、主人公はかまわず日本横断を続けます。
 最終的なエンディング(告白含む)は、最終地点である九州最南端までお預けになるのである。何ともはや。
 他に特殊システムとしてMDS(マルチブルデュアルシステム)というのがあるのだが、あまり特色を放つものではない。
 これはの子の感情やら気分やらで、主人公への名称や接し方が変化するといった画期的システム・・・ということだそうだ。
 つまりゲームのシステム的には何の影響はないのである。
 ただし、本作は珍しくアドベンチャーパート時における対象キャラクターとの会話パターンが豊富で、1度表示された会話は2度と起きない仕様になっている。
 これらやイベントそのものの特定会話などを利用すると、非常に対象キャラクターの対応が愉快なものになるのが利点だ。
 キャラクターそのものの魅力やシナリオの出来も良く、そこそこテンポも良く話も進む。
 キャラクターデザインを担当した柳沢まさひで氏自ら作画監督を務めたグラフィックも、ジーベックが製作とこちらも申し分ない。
 中々に目を見張る箇所も多々あるが、指摘すべき点もいくつか。
 まずはCGモードがないこと(PS版のみ)。SS版にはあるらしいのですが(SS版持って無いので未確認)、何故搭載していないのか不思議でしょうがない。
 それから各キャラクター共に搭乗・下車駅が違うため、相互関係や掛け合いなどに無理が出てきてしまう(海水浴で無理矢理関係を誇示していますが)など。
 他に上記したように対象キャラクターの告白条件を終えて下車したとしても、主人公の旅が続くというのがどうにも解せない。
 システムや設定、エンディング演出上必要なことだとは思うのですが、さすがに複数クリアが難しい作品なので意味無くプレイしている期間が長いと堪えます。
 何にせよ、悪い意味で作品設定やシステムが足枷になっているのは間違いないようです。

 割り切るところは割り切るとして、本作の最大の武器はやはりキャラクター表現でしょうか。
 良い意味で癖のあるキャラクターが活き活きと描かれていることには好感を得ます、まぁ一部活き活きし過ぎているのもいますが。
 個人的には好みではありますが、そのキャラクターも一歩間違えば「鼻につく」タイプかもしれません。
 主人公上位系のキャラクターが好きな方にはまず駄目でしょうね、基本的に主人公と同等か主人公が押されるタイプが多いですから。
 それとシステム的にも難があるので、オススメとは言い難くはあります。
 ですが癖はあれども味のある作品ですので、良く言えば玄人向け作品・悪いく言えばゲテモノ作品とも言えるかもしれません。
 個人的には好きなんですけどね、万人受けはしないのは分かっているつもりですが。



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