私におまカフェ

ハード/PS2
発売日/2002年12月19日
メーカー/D3パブリッシャー ヴァンテアンシステムズ
値段/2000円
備考/SIMPLE2000シリーズ


 PS2シンプル2000シリーズ・THE恋愛シミュレーションとしては、初のD3オリジナル作品。
 何と言うか、聞く度に脱力し、製作者の名称センスを疑わずにいられない作品タイトルは、もはや芸術の域。
 結構タイトルで失敗していると思います・・・そこそこ面白いのに。

 主人公は高校3年の春、家族旅行へ出かけた際に交通事故に遭い・・・両親を失ってしまう。
 喫茶店を経営していた家は、経営者不在のまま・・・この状態では、地主に店ごと買収されかねない。
 それを防ぐ条件は、年末決算までに赤字にならないこと・・・主人公は高校生マスターとして、店の経営に乗り出したのだった。

 お話の発端は、タイトルとは打って変わって中々シリアス。
 両親死亡・・・というと、自分の殻の中に閉じこもってしまうような主人公(そして幼馴染みに心を開いてもらう)が恋愛ゲームには多いですが、この作品の主人公は衝撃と哀しみに暮れはするものの・・・自分の心を強く持つところに好感が持てます。
 残念なのは、デフォルトネームが無いところでしょうかね。
 主人公の名前をプレイヤーが付けるタイプなのですが、この際に新しくなった喫茶店の店名も決めなければなりません。
 「海原雄山−美食倶楽部」とするもよし、恋愛ゲーム好きならちょっとマニアックに「南柳太郎−紅玉館」なんて付けるのもグッジョブ。
 まぁ、結局自己満足にしか過ぎませんが。
 主人公一人だけでは店の復興・営業は難しいので、幼馴染みや、後輩など最終的には4人のバイト(ウェイトレス)を雇うことになります。
 この娘たちとのシナリオと、運営をこなすというのがゲームの大まかな流れです。
 本作は一応経営シュミレーションなので、システムは主流のノベルタイプではありません。
 ですがそれほど作りこんだ仕様にはなっていないので、滅多なことでは赤字=ゲームオーバーになることはないでしょう。
 平日・休日はオーソドックスな「1日1育成」タイプ、コーヒーの研究・メニューの研究・経営の研究の3つから選び、主人公を育成していきます。
 それぞれ育成するごとにレベルが上がり、各8レベルまで育成可能。コーヒーやメニューの種類が増えたり、全体的な収入に影響を与えたりします。
 土日は自己育成も可能ですが、ここでは店舗改築・制服変更・メニュー入れ替え・コーヒーをブレンドする、などの特殊なコマンドを選択することが出来る。
 店舗改築は、稼いだお金で店内の内装を好みによって改装する。
 制服の変更は、制服の種類やカラーリングなどの変更が可能。全部で6パターンあるようだ。
 メニュー入れ替えは店のメニューを任意で変更できる。他にもバイトのシフト変更や、店の営業時間変更なども可能。
 そして、一応このゲーム(というより主人公自身のかな?)の最大目的である、美味いオリジナルブレンドコーヒーの開発・・・
 コーヒーレベルに応じて、豆の種類や煎れ方の種類が変化。色々と影響のあるパラメータなので、出来るだけ上げておいて損はない。
 ブレンドしたコーヒーはバイトの娘たちに試飲してもらうことが出来るのだが、基本的に狙いの娘に気に入れられればOK。
 まぁこうして書いておいて何なのですが、この作品は経営・育成部分が本当に雑に出来ています。
 「何もしない」というコマンドがないので、平日は必ず主人公を育成しなければならないのですが・・・黙っていても、平均以上のレベルまで上げられます。
 よっぽどのことがない限り、経営破綻を起こすことはないでしょう(1つだけレベル8にして、延々とそのコマンドを・・・ならいけるかもしれませんが)。
 そういうことで、育成・経営パートについては全くの心配無用で、基本的にメインになるのは定期的に発生するイベントです。
 特に悩むような選択肢はないので、ひたすら狙った娘を追いかけていれば問題ないです。
 クリア自体にかかる時間も2時間程度ですし、難易度も極端に低いので、大作と大作の間など時間を置きたい時には合うかもしれません。
 値段も2000円ですし、気軽に購入できるところが嬉しいですな。

 そのインパクトのあり過ぎるタイトルで敬遠されがちな本作ですが、2000円という値段相応の面白さです。
 上記したようにシステムは・・・まぁ仕方ないとしても、キャラクターやテキストのセンスはタイトル以上にギラギラと輝いています。
 ただ単に「馬鹿ゲー」と言ってしまえばそこでお終いなのですが、そんな幼稚な言葉では計り知れない力が本作にはあります。
 これは・・・ただの馬鹿じゃない。
 製作者、特にシナリオを担当された方は、どういう思いでこのシナリオを書いたのかとても気になります。
 真面目に書いてああなったのか、それとも計算されたものなのか。個人的には前者だと思いますけど。
 少々一人だけで盛り上がり過ぎましたが、とにかくこのゲームにおいて最大の魅力は・・・そのテキスト表現です。
 イベントが発生する度に笑わずにはいられない、独特のセンスが嫌というほどつまっていますので。
 それが、「狙った笑い」ではないところがまた良い。『お前ら、ここで笑えよ』といった露骨なものではなく、感覚的にくる笑いです。
 最近は安易な感動や、無意味な思想が散りばめられた作品が重宝されているようですが(別に嫌悪するわけではないが)、その中で本作は珍しい位置にいます。
 一言で言うなれば「馬鹿ゲー」です、恋愛要素やゲーム要素そのものは全く期待しないで下さい。
 この雰囲気やテキストだけで2000円の価値はあるかと思います、個人的には是非ともプレイして頂きたい一品。オススメ。
 ・・・まぁ、過剰な期待はしない方がいいかもしれませんけどね。



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