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ハード/PS2 発売日/2006年2月23日 メーカー/KID 値段/通常版7140(税抜6800)円 限定版9240(税抜8800)円 備考/CERO15歳以上推奨 限定版封入/セパレイトハーツ+(デクストップアクセサリー).オリジナルドラマCD |
■シリーズ物ではない、単一のKIDオリジナル作品である。 個人的には、やはりKIDはシリーズ物よりも単品で発表されるオリジナルの方が好きだ。そういう点では、期待出来る作品。 購入する機会を長らく逃していたが、さて早速プレイしてみることにする。 |
主人公「星川純一」は、事故に遭い断片的な記憶障害に陥ってしまうが、幸い軽症で済んだ為学校生活を再開する。 曖昧な記憶の中、彼には恋人「日向ひかり」の存在がいたと知るが、彼はそれを全く覚えてなく…さらに、彼女は失踪してしまったという。 酷く不安定な生活が始まるが、周囲の少女達とふれあう度に、純一は知らないはずのひかりの面影を感じていた… |
■ストーリーを読んだ時点で、思ったことは「スレッドカラーズっぽい」。 とは言え、事故って記憶障害になったところから始まる、という部分しか相似点はないんですけどね。 そうした記憶障害を負った主人公視点によって、描かれていくのは「違和感を湛えた世界」。 単純に対象キャラクタとねんごろになること、よりも、この違和感そのものが作品を構成するミソになります。 …けど、こういう構成って、面白いけど上手く作るの難しいんだよな。 何故なら? それはスレカラの失敗と同じ、「違和感の謎」を中心にし過ぎて、対象キャラクタを魅力的に描くことを失念してしまいがちだからだ。 ■さてレッツプレイ。 オープニング。いつもの静止画ムービー、相変わらずうるさいテロップ演出に萎える。 ただ、歌自体は結構気に入ったので、画面を見なければ気にすることもない。 ゲームシステムは、いつものように選択肢によって多様な展開をみせるノベルゲーム。 システム/インターフェイス/ゲームデザインは、いつものKIDスタンダード。 ボタンレスポンス良好、スキップ、バックログ、オートセーブ、クイックロード、各種周辺設定全て問題なし。 読み進めることが前提のノベルゲームでは、文句のつけようのないプレイ環境。 …完成しているとも言えるし、代わり映えしないとも言えるけど。 と、いうわけで、普段ノベルゲームに親しみ、別にゲーム性を求めている方でないのならば、プレイに全く支障なし。 このKIDフォーマット好きだったんだけどなぁ… さて、システムはさておき内容に。 主人公が記憶障害、という前提で始まっているので、主人公と同じ視点(作品世界に対して知識0)で物語を始めることが出来る。 主人公と同じ立場で物語を開始出来る、というのは、結構強みになる。 世界を理解していく過程を、ユーザーがダイレクトに感じ取ることが出来るからだ。 勿論、主人公にとって完成された世界を、少しづつユーザーに与えていく作品も良いことには変わりはないが。 そして、このセパレイトハーツ。 中心になるキーワードは、「記憶障害」と、「恋人だったらしい少女・ひかり」、「ひかりの面影を思わせる少女達」、この3つ。 これらが様々な形をもって、主人公の行く手を悩ませる… のだが。 本作の主人公、純一君はKID作品の中でも、一位二位を争えるくらいとんでもない腰抜けでして。 個人的には、「想い出にかわる君」の正午といい勝負。 いや、それでも思考が幼稚で、尚且つ感情的な正午よりは純一の方がまだマシか。 そんな純一君、彼の行動があまりにもちまちまし過ぎているので、正直物語の流れが非常にダレてしまっているのは否めない。 それはどうしてそうなってしまったのか。 勿論、純一自体が、あまりにも大人しく、あまりにも主体性がなく、あまりにも受身過ぎた、というのもあるけれど。 一番の問題は、物語の中心になっている3つ要素を、詰め込み過ぎたせいだろう。 「詰め込み過ぎ」て、「ダレる」というのも変な話だが。 分かりやすく説明すると、あらゆるシーンにおいて、この3つの要素を付け加えようとしてしまっているのが大きい。 つまり。 物語を構成する大方の部分に対し、この3つの要素がでしゃばってしまっている。 すると、物語がただ単純にその「違和感」や「謎」を伝達するためだけの装置になってしまう。 登場するキャラクタの魅力、そしてシナリオ自体の魅力をオミットして、設定を伝えるだけのものに形骸化しちゃってるのね。 その癖、無理にキャラクタを引っ張り出しては、主人公との絡みを表現しようとする。 だけど、そこにいキャラクタは「設定を伝えるための道具」で、シナリオは「ラストへの布石」でしかない。 うん、ハッキリ言っておく。 本作品に登場する全てのキャラクタには、何の魅力も感じられない。 キャラクタは極力オブジェクトとしての美しさを捉えようとしているが、セパレイトハーツのキャラクタは、オブジェクトですらない。 ツールだよ。 設定を伝えるための道具だ、こんなもん。 だから、延々と無機質なキャラクタが、設定を伝達しようとしている茶番劇にしか見えなくなってくる。 これが、「詰め込み過ぎ」で、かつ「ダレる」原因。 いや、もう、普通に読んでて苦痛だったよ。 いつ面白くなるんだろーなー、って思いながらプレイしてたら、面白くなる前に全部終わっちゃったし。 ■さて。 そういうことで、正直「キャラクタの魅力」と、「シナリオの魅力」という側面から見た場合、あまりいい評価を下すことは出来ません。 キャラクタが全員蝋人形みたいだ… シナリオも、比喩表現や、ラスト演出への下準備感が前面に出すぎてて、キャラクタを描ききれてなかったし。 強いて良いところ上げるならば。 このセパレイトハーツという作品が、その「謎」をただ伝達するためだけの、説明書みたいなもんだと捉える。 そうすると、結構構成、展開、流れは良かったと言えます。 実際、本作のエンディングを見れば分かると思いますが、キャラクタの存在とか意味ないので。 ある意味、セパレイトハーツに対して「キャラクタ/シナリオに魅力がない」という評価は、当てはまらないのかもしれません。 何故なら、元からそういう風に作っていないから。 だから、こうして批判している要素は、実際にはセパレイトハーツをプレイする分には、大したマイナス要因じゃなかったりします。 ただ、やはり恋愛物語として捉えると、どうしても粗が目立つ。 そもそも、設定を垂れ流してるだけの作品なので、正直人間的な表現自体、あまり優秀じゃないんですよ。恋愛感情に限らず。 プレイしてて苦痛だった理由の一つはコレだな。 プレイヤーとして、1人間として、共感や感情移入出来る対象が何一つ存在しなかったってのは大きい。 では、他に駄目なところ。 グラフィック…原画の好き好きはさておき、枚数が圧倒的に少ないのが気になった。 キャラクタのパターンもそうだけど、何より背景かな。 とりあえず、あらゆるシーンで空の背景を使って、何となく情景を誤魔化していたのが非常に気になった。 あと、主人公が移動する範囲が少ないってのもあるんだけど、同じような背景だけで飽きる。 これは、キャラクタのグラフィックパターンも含めて、視覚的に同じものが続くから、結構苦痛に感じるんだよね。 絵的なハッタリや、パターン数ってのは武器になるもんだ。 …一番如実に感じたのは、この作品の予算の少なさというか、やっつけ仕事っぷりというか。 スタッフが真面目に作ってないんじゃないか、って思える安っぽさ。 これが本当に嫌だった。 全シナリオを終えた段階で、わずか10数時間というシナリオの短さ。 上述したように、グラフィックの総枚数、及び各種グラフィックの手抜き感。 実は謎もミステリもあったもんじゃないくらい、深みのない浅い設定。 恋愛アドベンチャー?とよく銘打つことが出来たな、と溜息つきたくなる内容。 どうなんだろう。 多分、これを作っていた頃にはもう、KIDは一杯一杯…いや、これより以前からかもしれないが。 どんなに出来は悪くてもいいから、とにかく作品を作っていかなきゃならない、自転車操業状態だったんだろう。 けど、だからってクオリティの低い、しかもオリジナルを世に出してしまうってのは、やっぱり失敗だ。 そうし続けたことによって、信者ですら離れていってしまったっていうのに。 ゲームは、真面目に作ったものを、年に1.2本出してくれるだけでよかったのにな。 そうもいかないのが、現状なんだろうけど。 ■まとめとして。 少なくとも、個人的にはオススメはしません。 褒めるべきところは、物語性を完全に拝した設定を連ねただけの書物、みたいな感じに捉えると結構面白い、ということ。 あとは、音楽でしょうね。 阿保さんはいつもいい仕事をしてくれる、サントラ欲しーなー 悪いところ。 キャラクタの魅力…をどういう側面で捉えるか、というのも個人差があるので一概には言えませんが、個人的には皆無でした。 セパレイトハーツのキャラは、魅力云々以前で、操り人形みたいな空虚感が凄く不愉快だったな。 シナリオ…謎を表現することに精一杯で、盛り上がりもカタルシスも、ユーザーを引き付ける意外性も何もなかった。 他は上述した通り。 …なので、自分でプレイして、もしかしたらこれKIDの最低作品なんじゃないか?と思ったりもしました。 クリアしてすぐの評価は、「エルデ以上イリス未満」だったのですが… いや、エルデの出来も相当悪いんですけど、エルデはエナのエンディングだけは鳥肌立ちましたし… そう考えると、得るものが何もなかったセパレイトハーツは、もしかしたらエルデよりも下なのかもしれませんね。 なので、プレイをオススメしないどころか、むしろ止めておけ、と記すことにします。 いや、もう、本当につまらないので。 せいぜい、出演声優のファンくらいかなぁ…作品価値を別のところに依存出来るからね。 管理人は、もう斉藤桃子がいなかったら本気で苦痛だったかもしれません。それでも苦痛だったけどさ! |