Sonata

ハード/PS
発売日/1999年3月4日
メーカー/T&Eソフト
値段/6800円
備考/Disc2枚組


 色んな意味で有名なT&Eソフトが製作した作品。
 内容もT&Eらしいというか・・・そのジャンルがまず「RPG」というところで、妙な期待をせずにはいられない。
 いやぁ、もう笑ってしまうほど期待通りな作品でした。

 「今日こそ告白するんだ」と、密かな想いを胸に抱いて彼女をデートに誘った主人公。
 だが大切な一言を告げる瞬間・・・彼女はまばゆい光に包まれて消えてしまった。
 考える暇もなくその光の中に飛び込み・・・主人公は記憶を失い、パラダイムと呼ばれる異世界に迷い込んでいた。

 「恋愛要素」と「RPG」というジャンルは切っても切れない関係で、ことRPGと言えば基本的に恋愛劇が含まれている。
 それはRPGがヒロイックファンタジー的な要素を含んでいるということもあるし、物語の軸としても絡め易いからとも言える。
 だが、それは決して「RPG」と「恋愛ゲーム」に互換性があるという決定打にはならない。
 あくまでもRPGは(基本的に)一本の物語の上を成長と共に物語を読み進んでいく形態であり、その中で恋愛要素が発生するのは物語としてのRPGの副産物に過ぎない。つまりメインはあくまでも「ゲームとしてのRPG」なワケである。
 だが恋愛ゲームというのは、特定したシステム上のジャンル分けは無いにしろ、「恋愛」要素が主軸として構成されているものだ。
 ゲーム性を重視したRPGと、要素を考慮した上でシステムが存在する恋愛ゲームというのは、個人的に相性が良いとは思えないのである。
 前置きが長くなりましたが、本作の紹介をば。
 上述したように、本作は主人公が記憶を失い、異世界に飛ばされたところから始まる。
 その異世界はパラダイムと呼ばれ、西洋ファンタジー然とした「ブルームーン」、比較的現代世界に近い広大な敷地を持つ「徳川学園」、近未来的な世界を構築する「ナノ・セック」の三世界で構成されている。
 主人公は、この三つの世界を記憶の奪還と現実世界の帰還を目的に、RPGよろしく進んでいくのである。
 しかしそこは仮にも恋愛ゲーム、従来のRPGとはシステムが多少異なっている。
 本編は二つのパートで構成され、日常生活を送るAVGタイプの「ライブエリア」、そしてメインであるRPGタイプの「マグナホール」がある。
 ライブエリアは場所移動型ADVと同じ形式で展開され、ここでは登場する女性キャラクターとの会話や、イベントなどが発生する。
 マグナホール時ではパーティー編成も行うことが出来(マグナホールに連れて行けるのは3人まで)、一度場所を移動すると半日時間が経過する。
 ちなみに各パラダイム滞在期間は8ヶ月に限定され、短期間でクリアしても次のパラダイムは8ヵ月後からのスタートになる。
 (それから、8ヵ月かかってもそのパラダイムをクリア出来なかった場合はどうなるか未確認。もしかしたらゲームオーバーかも。)
 図で説明すると・・・

・・・ 2月〜 10月〜 6月〜
プレイ1 徳川学園 ブルームーン ナノ・セック
プレイ2 ナノ・セック 徳川学園 ブルームーン

 となり、プレイ毎にその各パラダイムを循環する順序は異なっている。
 これはライブエリアでの各種キャラクターとのイベントにも影響し、例えば徳川学園の8月に発生するイベントは、プレイ2では見れないことになる。
 全イベントを制覇したいのならば、それ相応のプレイ回数が必要になるのである。
 登場する女性キャラクターは8人で、各パラダイムに対応した姿・設定で登場し、同じキャラクターだけど微妙に違うという感じ。
 恐らくはパラレルワールド的な要素として、各キャラクターの「if」を演出したのだろう。これは肯定的。
 で、ライブエリアに関しては通常のAVGとそう変わらず、メインであるRPGパートも、そう従来のRPGと変わることはない。
 4人パーティでダンジョンに向かい、戦闘→シナリオ進行という王道パターン。
 戦闘も特異システムを積んでいるわけでもなく、攻撃・防御・特殊攻撃といったベーシックなもの。
 ただし主人公に限って防御・逃走することによってパーティキャラクターの恋愛度減少、それからフェイタルポイント(FP)という特殊パラメータがある。
 FPは基本的に敵モンスターと戦闘することによって上がり、貯めたFPは主人公が戦闘不能に陥った場合に自動復帰や、フェイタル技を使用する際に使われる。
 フェイタル技は必殺技みたいのもので、主人公に一つと、各キャラクターに一つづつと計9種類存在する。
 これらは強力なので、通常戦闘ではなくボス戦に使うと効果的。ついでにFPは各パラダイム移行時に持ち越し可能。
 ・・・と、簡単に言ってしまえばAVG+RPGといった本作。
 その融合は非常に頑張っているとは思いますが、本作においてもっとも重要なマイナスポイントは「テンポが壊滅的に悪い」こと。
 RPG部分だけ追いかけていても(イベント完全無視)、クリア時間は役10時間程度かかります。
 その上で、各種イベントを回収するためのパラダイム滞在時間や、AVGパート時の高感度上げを考えると、どうも歯切れが悪くなります。
 結局、AVGとRPGを別々にやっているだけの作品、なんですよね。
 RPGパートもRPGが好きな方から見てみれば「何じゃこりゃ」レベルですし、AVGパートも単発イベントを起こすためにだけにあるような感じなので(本来のシナリオがRPGパート寄りなため、従来のAVGタイプのゲームのような軽快なテンポがなく)イマイチ盛り上がらない。
 やっぱり、上述したように恋愛ゲームを製作する上で、RPGというジャンルは非常に難しいようです。
 (ブルーブレイカーが成功した一例もあるけれど、あれは時代とか色々な要素があった上の成功だと思ってるし・・・いや、ブルブレは好きですが。)
 キャラクターはちょっと癖がありながらも、基本を抑えたステレオタイプを改良したもの。個人的には結構好みです(ブルームーン編除く)。
 出来れば割り切って各パラダイム毎のAVGを単独で製作して欲しかった、その上でエンディングに到達するというような。
 いや、だって恋愛ゲームとして評価した場合、RPGパートは完全に蛇足ですから。
 (とは言え、あのラストバトルの演出を考えた場合はRPGじゃないと駄目というのも分かるんですけどねぇ・・・それでも、色んな意味で薄いとは思いますが)

 そんなワケで、別にやってもやらなくてもどうでもいいような作品の一つです。
 上述したようにテンポは恐ろしく悪いです、RPGも同じようなものを3回強要されるし、AVGも無駄にダルイ。
 ただ、イベントを完全に無視してRPGパートだけ一回ブッチギリでクリアするのは悪くないかもしれません。
 あの意味深なプロローグを経て、面倒臭いゲーム本編を乗り越えて、やっとこさ辿り着いたエンディングとプロローグの真意とは・・・
 参考までに書いておくと、自分は思わずコントローラーを破壊したくなる衝動に駆られましたが。
 いや・・・何となくプロローグからして大体のエンディングは予想出来たんですが、よもや本当にこんなベタベタな落ちだとは・・・
 自分だったら、恥ずかしくてこんな落ちは今更つけられないなぁ。という感じ。
 とりあえず、時間に余裕のある方なら挑戦するのも良いかも、今ならそこそこ安い値段で売っていますので。
 何だかんだ書きましたが、つまらないとは思いますが嫌いな作品ではないです。

PS・その面倒なイベントCG回収を全て埋めることが出来た場合、おまけ要素としてT&Eソフトの名作「ハイドライドスペシャル」がプレイ可能に。
   ・・・裏技を使うと無条件で出現させることが出来ますが。



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