ゆめりあ

ハード/PS2
発売日/2003年4月24日
メーカー/ナムコ
値段/6800円
備考/-


 一体あの硬派なナムコはドコへいってしまったのだろうか?と思わせるには十分なインパクトと共に発表された本作。
 とは言え古くはワルキューレの冒険、新しくはゼノサーガ等でソレっぽい臭いは漂わせてはいたものの・・・
 ギャルゲー問わずコンシューマゲームでは最王手の一つとして掲げられるナムコが作る恋愛ゲームとは・・・はてさて。

 主人公・三栗智和は、十六歳の誕生日に奇妙な夢を見た。それは、現実とは異なる世界で、一人の少女が戦っている夢・・・
 戦いに傷ついた少女に智和が手を触れると、少女の体は光を放ち始め、まるで智和から力を得たかのように敵を撃退した。
 そして目を覚ますと・・・夢の中の少女が、智和の目の前にいたのだった。

 出だしだけ見てみると、本当にナムコはどうなってしまったのかと心配になってしまいます。
 だがそれはそれ、本作のシナリオは鬼才(色んな意味で)・黒田洋介氏が担当しているので、どう展開していくのか期待が高まる。
 しかし、本作において最も重要になるのは、シナリオでもなくシステムでもなく、グラフィックにある。
 本作のグラフィックは従来の恋愛(ギャル)ゲームが基本的に2D依存なのに対し、その全てが3Dという素敵っぷり。
 確かに今までも3D表現されたキャラクターが売りだった作品も皆無ではありません。某有名作品の三作目も3Dでしたし、それ以外にも「まじかるでーと」とか「デヴュー21」とか・・・ ポリゴンで描かれた少女を前面に押し出した作品は何だかんだ言って結構ありました。
 が、その多く(というか全部かも)は無残にも散っていく。
 それらは当時のスペックでは3Dで2D的な可愛らしさを表現することが難しかったことや、元々この手のゲームユーザーのほとんどが2Dで描かれたキャラクターに依存していて、 3Dにある生々しさや機械的な動きに着いていけなかったことなどが挙げられます。
 そういう過程を経て結果的に2D特化していったワケなのですが、その中で本作は完全3Dを武器に立ち上がったのである。
 ハードもPS2になりスペックも強化され、ナムコの3D技術と言えば「鉄拳」や「リッジレーサー」など業界内外でも評価の高いものばかり。ちなみに本作の3Dスタッフは「ゼノサーガ」スタッフで 構成されているらしく、こちらも2D的なキャラクターをそれほど違和感なく3Dで表現したことでも有名。
 動きはモーションピクチャーで取り込まれ、従来の恋愛ゲームにはない「動き」を魅せることの表現も加わり、期待は高まる。
 で、そういったことを踏まえた上で書くと。
 従来のイメージで構成された「ギャルゲー的3D少女」という概念が吹っ飛ぶくらいの出来栄え。
 自分の中にあった(「ムービー」ではなく「ゲーム内でリアルタイム表示される」)「3D少女」のイメージは、それこそ「FIST」とかそういうものだったのだが、本作のソレは自分の固定概念を 打ち砕くには十分過ぎるほど滑らかで美しいものだった。
 いや、ちょっと褒め過ぎかもしれないが、それくらい2D的3D少女を可愛らしく、かつ自然にリアルタイムで表現されていたのは確かである。
 勿論これが本作の売りなのだが、コレだけで買う価値があったかな・・・と思わせるくらいである。
 だが、同時にそれだけしか売りがないと評価される恐れもあるワケだが・・・
 で、上述したように本作は完全リアルタイム3Dで描かれているということを踏まえた上で、システムをば。
 本編は全12話で構成され、基本的にはテキストタイプのアドベンチャー。
 選択肢によってルートが変化するタイプではなく、一定の話までに選択肢により上下する対象キャラクターの好感度によって、最終的にルートが確定するタイプである。
 そんなワケで大して特徴的なシステムを搭載しているわけではないのだが、本作には戦闘パートというものが存在する。
 本作、プロローグにも書いたようにキーワードとなるのは「夢」。そしてその中に現れる「敵」・・・簡単に内容を言ってしまうと、夢の世界(作中では「モエラ」と呼称)に現れる 敵(作中では「フェイドゥム」と呼称)を、智和以下女性キャラ軍団が倒していく、というもの。もちろん非常に大雑把だが。
 そしてモエラ内でのフェイドゥムとの戦闘になると、戦闘用のパートへ移行するという形になっている。
 戦闘パートそのものはそれほど難しいこともなく、コマンド選択・敵味方のターン性で、攻撃・防御・回復のいずれかを選択。
 戦闘には智和と二人の女性キャラクターのみ参戦可能で、この三人のキャラを上手く行動させて、フェイドゥム(戦闘は基本的に1対3である)を破壊するのである。
 他には女性キャラクターのみ自動行動が選択可能であり、対象キャラの好感度が高いとチャージ攻撃も可能になる。
 チャージ攻撃は智和が対象キャラに触れることによって発動し、これらは好感度が上がるたびに強力になっていく。
 戦闘そのものはいたって簡単で、攻撃や回復のタイミングを間違えなければまず負けることはない。というか、むしろ話が戦闘で中断されてしまうため蛇足に感じるほどである。
 このように、本編はアドベンチャーパート→戦闘パート・・・→次の話へというローテーションで進む。
 ではその他周辺設定など。
 3D表現に関しては個人的には大満足な出来なのだが、残念ながら動き等の表現がハード的重すぎたのか、若干グラフィックとして表示される動きとテキストの表示に対してタイムラグが 発生するのが少々辛いか。まぁ、それほどテンポが悪くなるワケではないのだが。
 スキップも強制・既読対応、ただそれでも3D表示のため従来のものよりは遅いかもしれない。バックログも問題なし。
 その他の機能も及第点以上。ただCGモードに関してはちょっと特殊で、リアルタイム3Dで描かれている本作にはいわゆる一枚絵というものがない。だから本作のCGモードは一定のイベント で表示される特殊グラフィックで構成されるのだが、何と言うか・・・どうもそのギャラリーに登録されるシーンの選択が、個人的にはあまり合わなかったようである。
 そんなワケで特にプレイ環境としては問題なし、本作の好き好きを分けるのは他の要因にあるだろう。

 とりあえず完全3Dで表現されるので、「2Dでなくちゃ駄目なんだ!」な方は門前払いです。
 確かに従来の3D少女よりもはるかに洗練された動きとグラフィックですが、それでも距離を置く人は少なくないでしょう。
 それから本作は上述したように黒田洋介氏がシナリオを担当していますので、氏が持つ独特なテンポや雰囲気が苦手な方も手を引いた方がいいかもしれません。 全12話で構成されているということで、基本的に1クールのアニメのような展開になっていますので。
 ついでに戦闘パートが完全に蛇足なので、全体にサクサク進めたい人も止めておいた方がいいです。
 3Dでも抵抗なく、黒田氏のシナリオが好きで、特にテンポが悪くても問題ない。というような方にはオススメ。個人的には好きな作品です。
 ギャグっぽい内容から徐々にシリアスになっていくのも○、こういうの大好きだ。
 まぁ色んな意味で有名であり、色んな意味で斬新な作品なので、機会があったらやってみるのもいいかもしれません。

追記・どうでもいい話ですが、「ゆめりあ」の語源は「夢・リアル」ではなく「夢・プラスエリア」の略です。7へぇ。



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