聖建築研究所



建築再生100年住むために

透ける甍屋根屋根に求められる機能、それは「雨を漏らさないこと」である。
屋根は最も自然にさらされ対峙する部位だから、葺材に求められる性能(対候性、耐水性、耐火性、断熱性、施工性)も必然的に厳しくなる。そのためには防水面から見て無理なデザインをしない!しかし、デザインの誘惑に負けないのは至難の技なのである。

……「雨、露をしのぐ」本来の機能を優先するなら、矩形の平面を覆う単純な切妻式の屋根がいちばん。
しかし単純は良いが単調ではデザイン的につまらない。
木造建築において、瓦屋根はその重量が「木組」全体を頂部から押え込むという役割を果たしてきたし、重量感のある「甍」がつくる景観は日本美の象徴でもあった。しかし現代では「木組」は基礎に緊結するように規定されたため、瓦の重さは意味を失った。いや、むしろ地震時の荷重と考えればマイナス要因ともなる。現代は軽量化と同時に軽快な屋根の景観が求められている。

「葺き材を何にするか」で屋根のデザインは概ね決まる。葺き材の性能と、屋根の勾配の表情は密接な関係だけにその選定にセンスが伺える。葺き材の選定にあたっては「どの葺き材を選ぶか」より「何を表現したいか」を問い、求める葺き材がなければ、組み合わせたり、加工開発することも考えられる。

東山邸では“透ける甍屋根”がテーマであった。甍屋根の形を崩さず、光を取り入れるディテールを求め、瓦の開発から取り組むことになった。デザインのヒントは本瓦葺の工法に求めた。トップライトとして、ペアガラスを平瓦と同様に納め「甍」の景観を損なうこと無く透けた屋根面を得ている。


濱口邸では2種類の葺き材を組み合わせた。葺き材を決定したのは“現代性”であった。「伝統と対峙する/軽い」をデザイン面から表現するのに適する葺き材として特殊鋼板(カラーステンレス)が選び出された。屋根勾配1寸、タテハゼ工法を採用……甍の景観が続く周辺との雰囲気を無視できずタテハゼ部分に素丸瓦を載せた。






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